傭兵村11
山城陥落から三ヵ月が経過して、村は祭りの飾りつけも済んで、明日の当日に向けて盛り上がりを見せている。のぼりや旗には、村長解放記念、悪魔の鎖よさらば、などなど、ようやく読めるようになった文字は、素直に喜べるものではない。村長とはカルの事で、悪魔とは俺、くさりとは首輪のことだ、ずいぶんな言われよう。
賞金首が地域最大の盗賊砦を落とした後、偉いさん交えての会合となり、世間にはララが軍を率いて陥落、傭兵村は正式にララの父親の支配下となり、今まで濁してきた国境線が定まる。黒弓メンバーは、衛兵と、元の街道警備とに分か、俺はルグラートと街道警備に残った。
黒弓の事務所も村役場も同じ建物で、村長とは隣部屋の為、
「ヒロー、明日の進行……昼から酒のんでんじゃない!」
「村長きびしいな。」
「ルグに全部押し付けて、最近なんにもやってないじゃない、ちょっとは仕事しろ!」
「ちゃんと狩りには行ってるぞ、倉庫大きくしたから、祭り分いれても半年はもつ!」
「あれは趣味でしょうが! それに狩り過ぎ! 魔物いなくなったら、警備の仕事なくなるでしょ。」
「村長がそんな事いっちゃだめだなー、癒着だよ癒着ー。」
「もう、腹立つ、ドクターに死ぬまで魔力採取してもらうからね。」
「それはやめて、ほんとにあれ痛いから。」
ララの指名で村長となったカルだが、村人からも大人気で、毎日いそがしそうにしている、それでも俺以外には笑顔をかかさない。悲しそうな顔は、地下牢以降見せることもない。
「ヒロ。」
「なんだ忘れ物か?」
「いや、今日でさ、ヒロの奴隷も最終日だし、なにか解放したら出来ない、やりのこした命令とかないかな? なんて?」
「なんだろうな、黒弓への警備依頼を二桁ぐらい間違えて依頼してくれるとか?」
「そんなの、解放した後でも出来るでしょうが!」
「やっちゃだめだろ。なんだろうな、他に……。ツインテールで、お兄ちゃん大好き って言うとか。」
「何言ってるか分からないけど、それがやってほしい事なの?」
「ごめん、想像したら気持ち悪くなったから、やっぱりいいや。」
「ヒロ、久々に剣の練習でもする、もちろん本物で。」
「ごめん、それじゃ、一日優しく、でお願いします。」
「いつも優しいでしょうが、明日思いついて後悔しろ!」
すでに、見慣れた箱にカルが寝て、水を入れて、ドクターと打ち合わせ。
「ヒロや、最後だし、なにかこう儀式的な事をやったりしようかと。」
「適当でいいんじゃないですか、誰も見てませんし。」
「そうじゃの……何もおもいつかんな、なんかないかのー。」
「お二人さん、冷えるんでさっさと初めてほしいんですけど。」
「そうか、ちょっと用意する。」
「ヒロ、約束覚えてる。」
「ドクター、俺何か約束しましたかね?」
「ワシはしらんぞ。」
「だってさ。」
「ヒロ!」
「大丈夫だって、お前が後悔するくらい、準備しといてやるよ、ゆっくり寝ろ。」
大人って素晴らしい、忘れた約束を華麗に誤魔化す先送り、もちろん多用すると痛い目に会う。
「うん、ヒロ、ありがとね。」
「明日な。」
ドクターが魔法薬をすこしたらすと、カルは静かに寝息をたてる。
「ほんとうに、この子に何も言わんのか?」
「今更何も、こいつにもこの村にも、俺はもう必要ないですし。」
「お前さん、すこしぐらい野望とかないのか?」
「どうでしょうね、細かい事気にするたちだから、人の上にたつとかは、合わないと思います。」
「しかし、仕事が無いといっても、ここに居たって迷惑かけるわけじゃあるまい。」
「そうでもないんですよ、村に来てから、殺されかけた事はもう数えきれないし、俺を守って死んだ護衛も片手では足りない、もしもドクターいなかったら、数回死んでましたね。」
「確かにな、朝出て行って、夜に戻って来た事もあったな。」
「このままここに居たら、いつかこの子も巻き込んでしまいそうですし、近くに居ないほうがいいんですよ。俺といたら、思い出したくない事も、よみがえるだろうし。」
「それで、これからどうするんじゃ?」
「とりあえず、昔なじみの墓参りして、あとは過去の清算、ですかね。」
「せっかく何度も助けた命を、無駄にしてほしくはないんじゃがの。」
「賞金首の最後なんて、決まってるでしょ。俺にしては、あがいたと思うんですけどね。」
「残される奴の気持ちも、ちっとはかんがえてやったのか?」
「そうですねぇ、嫁入りの持参金に、この首を使ってほしいですけど、そんな事したら、今までこいつにいった事全部ひっくり返ってしまいますからね。」
「そんな持参金いらんだろう。お前さんに言うのはおかしいかもしれんが、元気にやれよ。」
「確かに。カルの事、よろしくお願いしますね。」
「ワシに出来る事ならな、大事な村長じゃからな。」
「傷が消えた顔が見れないのは、すこし残念かな。」
最初に会った時よりも、だいぶ大人びたカルのほほをなでる、起きてる時にこんな事したら、怒られてしまいそうだが、最後ぐらいはいいだろう。真面目に生きてれば、もうすこし側に居れたのかもしれない。
館の外にでると村の広場では、前夜祭が始まっていた。明日の夜にはさらに楽隊も増え、馴染みの傭兵達もやってくる、一人ぐらい参加者が減っても、誰も気づかないだろう。明日の朝には、悪魔も首輪も村から消える。
それから、一か月ほどして、衛兵に連れていかれ、机に自分の手配書が置かれる。そこには、『山城攻めで暴走、囚われていた女達を全滅に追いやり。降伏して、捕虜となった盗賊数百人も手にかける。』と罪状が追加されていた、渋っていたがララは約束を守ったようだ。もう書くところがないと笑ったが、衛兵が『明日死ぬのだから、これ以上書くことはない』と教えてくれた。この世界では、処刑されたからといって、罪を償ったことにはならない、それでも、これ以上自分の罪が増えないのは、最高の救いだ。




