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夢者  作者: 高島 良
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傭兵村2

 急ぎだと言う割には、教会を先に選び、ララは少年の手を引いて走っていく。少し眠れると思ったのだが、すぐにララが走って戻ってくる。


「ヒロ、お願い、ちょっと来て。」


 勢いに押されて、後をついていく。


「神父を脅そうってなら、金で解決するほうをお勧めするぞ。」

「そんなわけないでしょう。あの子の持ち主になってほしいの。」


 流石に驚いて足を止める。


「なに言ってる、教会で首輪を外して、孤児院に預けるって話だったはずだよな?」

「外せないのよ、あれは7カンに改造した首輪をかぶせてあるのよ、7カンはここでは変更できないから、改造したほうの持ち主の変更だけしてもらう。」

「待て待て、7カンってなんだ?」

「……かなり身分の高い子供を捕虜にしたときに、付けられる特別な物ですぐには外れないのよ。」

「なるほど、この二日偉い人をこき使ってたってことだな。逃げたほうがいい感じか?」

「冗談いってる場合じゃないの、ちゃんと調べないと分からないけど、そんな奴隷の持ち主が一時でも私だと困るのよ。そもそもうちの家系は奴隷制に反対なんだから。」

「俺も反対なんだけどな、捕まった奴隷にされる女達を救う為に何人殺したか。」

「……私の名前は。~~~~・ララなの。」

「ごめん長すぎて、最後のララしか覚えられなかった。」

「……私は、国境を越えて戻れば領主の娘なの!」

「まじか、先に言えよ! 分かってたら前金なんて……、だからだまってたのか。」

「あなたなら別に困らないでしょ、気が利くいい子じゃない。」

「たしかにそうだけど、ちょと旅するのとはだいぶ違うぞ、神父に頼むとか?」

「7カン付けた子を引き受ける人なんて、普通いないわよ。」

「賞金首の男に押し付ける奴も、普通いないと思うんだがな!」

「とりあえず今だけでもいいから、あと数時間もしたら、あの子は呼吸できなくなるの。今更見殺しにできないでしょう?」

「お前なぁ! 今だけだ、最後は責任とれよな!」

「それでいい。」


 その後、教会に入り、やたら派手な虫眼鏡のような器具に俺の血を数滴のせて、首輪を撫でると持ち主は変更となったらしい。神父に新たな名はなんとする? と聞かれる、名前? この子の名前を俺が決めるのか? シスター達も当たり前だと目で語っている。悩んでいると、ララが早くしろと急かす。睨み付けてやると、印象に残った事、この子の事で感じた事でも、それを名にしろと言われる。感じた事、軽い命だなと。じゃカルだね、そう言うと儀式は進んでいき、急いで教会を後にする。

 しばらく走ると森の奥に贅沢な屋敷が現れる、手前で馬車を止めると、ララは待っていてと言って、屋敷へと入っていく。カルと二人で残されたが、話す事がない、この二日ララがたまにたわいもない質問をして、それに答えるだけ。それ以外は、何か頼んだ時にはいと返事をする、貴族様は慣れているのかもしれないが、俺には落ち着かない。傷が無ければ美男子だから、まさに漫画の王子様だ、そうなれば俺は引き立て役の悪役賞金首、美少年がさらに引き立つ。元配下とかが助けに来て、見事賞金首を討ち取りめでたしめでたし。俺にとってはバッドエンドだが、物語は綺麗に終わる。くそー羨ましい、俺もイケメンに生まれたかった! 異世界移動するなら顔ぐらい変えてほしかった。

 そんな一人自爆ループに浸っていると、ララが戻ってくる。役目を終えて気が緩んだのだろう、馬車に乗ると寝てしまう。その後は、本来なら俺の通れないない街道の町をたどり、関所のある国境へと戻る。もちろん俺は通った事はないし、魔物の森よりもかなり危険度は高い。


「ヒロ、緊張してるね。」


 ララは嬉しそうに手綱を叩いて、馬車を進ませる。


「ここで冗談はやめてくれよ、まだ首なしの死体になるのはごめんだぞ。」

「大丈夫、私あなたの事けっこう好きだよ。」

「……俺は、お嬢様に好かれる事した覚えがないのだが?」

「会う前から、噂で聞いてたから。会うことは無いと思ってたけど。」

「実際に会って幻滅しただろう。」

「最初はね、怖かったけど。あなたなら絶対に助けてくれるって思ったから、あんな事出来たんだと思う。」

「いつもはしないのね。」

「……そんな事言うと、衛兵に渡しちゃうからね。」

「いや、それはやめて。それで、国境越えたら、俺はどうすれば?」

「とりあえずカルちゃんの首輪の件もあるから、二日ぐらいは屋敷にいてもらうかな。」

「賞金首を領主の屋敷に連れて行って大丈夫なのか?」

「数日ぐらいなら、知らなかったで誤魔化せるかな。たぶんお父様もあなたに会いたいと思うし。」

「親子そろって怖い物知らずか?」

「そうじゃないよ、平和主義だから、色々と知っておきたい、そんな人だから。」

「自分で言うのもおかしいけど、俺は平和的に解決する人の真逆にいる気がするんだけど。」

「そう? 確かにかなりの人に恨まれるけど、感謝してる人のほうがおおいと思うよ。」

「それは、そうだといいな。」


 国境の関所は、ララが軽く手をあげただけであっさりと通過、荷馬車は領主様の屋敷へと向かう。その大きさは、前金を受け取った事を後悔するには十分すぎるほどで、生きて出れるのか不安になるほど、ぼろの荷馬車が似合わない場所だった。



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