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夢者  作者: 高島 良
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盗賊狩り18

 彼女が地図にマークした場所はすこしズレがあったが、目標物は正確で、すこし窪地になったその場所には、見慣れたテントの残骸が見える。囲んで全滅させるには、持って来いの地形だが、盗賊がそんなに集まるだろうか、今までは狙えなかった大きなアジトを潰した事で、奴隷商や裏でつながる貴族を怒らせたのだろうか。降りていくと、すでに腐敗の始まった多数の遺体が見える、近づくとみな胸に傷がある、とどめを刺して回ったんだろう。団では使わない鎧も見える、盗賊のものだろうが、団員にくらべると数がすくない、やはりなにかしら毒でもつかったんだろう。しばらく歩くと、見慣れた鎧が目につく、意外と覚えている、持ち主だった先輩達の顔が浮かんでくる。

 やはり来なければよかった、見慣れたヒナの鎧は見間違えるはずもない。その持ち主はもう見る影もない、脇に座るとまたゆったりとした口調で話しかけてくれる気がする、そんな事は無いとわかっているのに、かなり長い時間立ち上がる事ができなかった。

 団長やメイルの遺体もあったが、みな武器は無い、戦利品としてもっていったのだろう。どれくらい時間が経っただろう、テントや荷物を片付けて、みんなを地面に埋めた。この巨大な墓を訪れる人はいないだろう、世界を良いものにと願い行動した人々に、こんな仕打ちはおかしいだろう。なぜ彼女達が死んで、俺が生きてる、どう考えても逆だろう! 叫んでも誰も答えない、降り始めた雨が余計にいらつかせる。天や神が、お前の気持ちなど知ったことか、馬鹿にしているように思えた。まぁいいさ、俺にはもう仲間も上司もいない、どう生きようが、どう死のうが誰にも文句を言われない、好きな事をするだけだ。


 その後は、地図の印をたどり、アジトを落とす。遠距離の利点を活かして、時間をかけて少しづつ人数を減らしていく、逃げ出す者の足を撃ち、存在しない解毒剤をちらつかさせ、捕まっている女を逃がしたり、別のアジトを聞き出す。それでも、盗賊が消える事はない、逆に盗賊達も独自に懸賞金を設定して、俺の事を探す。この鬼ごっこは俺が捕まれば終わりだ、追い詰められる事も多くなり、そろそろ時間切れが近くなったと気づく。噂では一番困難とされる山城へ向かう。国境沿いに建てられ何十年も盗賊のアジトとして使われており、赤いサソリと呼ばれる一団のボスがいるらしい、最後に相打ちでくたばるには、もってこいだ。


 町と呼ぶには小さく、衛兵もいないその村は、傭兵村と呼ばれている。村から伸びるその道は、国境の関所を通れない賞金首や、こっそりと国を出入りしたい貴族や商人などが利用する。片方は盗賊のいる山城、片方は魔物のいる森、その間を通り抜けるには、腕利きの護衛が必要となるため、傭兵達が集まり、その金につられて女や高価な武器も集まる、噂ではかなりガラが悪いと聞いていたが、そこまで無法地帯ってわけでも無さそうだった。

 酒場でカウンターに座り、店主に山城の事を聞く。国境にある城の為、どちらの国も軍を動かせば、戦争になりかねない、それに、軍隊相手でも戦えるほどの盗賊が常時いる為、賞金稼ぎ達も手をだせない、護衛で稼ぐ方が無難ってことだ、あんたもあそこを攻めようなんて考えないほうがいいと教えてくれた。席を立とうとすると、店主に呼び止められる。


「おい、忘れもんだぞ。」


 そう言ってカウンターに置かれたのは、鉄の矢だった。


「……何の事でしょう?」

「あんたが来る少し前にな、狼を仕留めたから買い取れって、三流の傭兵が持って来たんだが。どう考えたってそいつらに仕留められるサイズじゃねぇ。すこし締め上げたら、こいつが飛んできたって言うじゃねぇか。なんでも一人で盗賊どもを狩りまくる弓の魔王がいるとか噂で聞いてな。それにな、この酒場に堂々と入ってくる新顔は珍しくてな、山城の話をしてくりゃ、もう決まりだろう。名前を聞いてもいいか?」

「……いやだと言ったら?」


 キザな台詞に酔っている場合ではない、突然酒場が静かになり、見渡すとみな剣や槍など武器を握って俺を見ている、店主がボスなのか? 店主が手を上げ大きくふると、みな何も無かったかのように、飲み始める。店主が椅子を指さすので、仕方なく再度腰かける。


「聞かなくても、みんなあんたの名前は知ってる。」

「有名だからな、俺の逃亡生活もここで終わりか。」

「終わらせたいのか?」

「正直言えば、疲れた。」

「そうか、だったら、この店の食料調達担当として、雇われてくれないか?」

「賞金首なんか雇って、巻き添えになったりするんでは?」

「その心配はないさ、ここの従業員に手を出すやつはここいらにはいない、なんせ次の酒場まで数日かかるからな。盗賊に恨まれてるのは、みんな一緒だ、護衛してれば当然やりあう。それにここは国境の上だ、どっちにもつかないから、税金も無いし、軍隊もこない。あんたにとっては、楽園だろう。」

「……確かに。」

「肉がきれたら、森に狼でも猪でも狩りにいってくれ、あんたには楽勝だろう。部屋も用意するぞ。」

「……まぁ、しばらくなら……。」

「よし、決まりだ。」


 そういうと、店主はでかい声で、みんな明日からは、こいつのおかげで毎日肉が食えるぞ! と言うと、酒場の客はヤッターと大騒ぎに、頼んだぞーと叫ぶもの、酒瓶片手に注ぎに来るもの、そんなに肉が食べたいのかと思うほど盛り上がる。山城を攻略しない事には、国外へ逃げるわけにもいかないし、逃げたからといって、する事があるわけでもない。復讐や引き継いだ事を一人で続けていくのも、そろそろ限界だったのかもしれない。もう指の入れ墨も、俺にはっぱをかけてはくれない。俺はあっさりと立ち止まってしまった、元々ちゃんとした目標なんて無かったのだから。

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