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夢者  作者: 高島 良
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大工へ

 次についたのは、木材屋さんか? 倉庫のような建物の中に入ると、様々な木の板が立てかけてあり、奥には作業台が見える、大工だろうか。しばらくして、奥から小柄な男がすり手でケンに話かける、常連かそれとも金持ってそうな上客に見えたのか? どちらにせよ、支払いまでは穏便に行きそうだ。

 ケンに呼ばれて、簡単な説明をする、どの木にするかと聞かれたが、丈夫ならなんでもいいと答える。照準器はうまく伝わらなかったので、後から付けられるように穴だけ用意してもらう。滑車を付けて、コンパウンドにしてほしいところだが、細かい調整が出来そうも無いのであきらめる。何より大事なのは、骨董品を壊して作るしなる部分、リムと呼ばれる部分だが。向こうでも給料一か月分が飛ぶ高級品、昔は各国の軍事機密として研究に金をかけた精密な部品なのだ、それを素人が作ろうなどとは、片腹痛いわ!とベテランの職人が鼻で笑うところだが、今は素人に期待するしかない。

 大工仲間を呼び集めたのか、いつのまにやら10人ほどの男どもが、なにやら言い合っている。ちょっと楽しそう、やったことない仕事にテンション上がる感じ?大抵は面倒だと思うのだが、ここの棟梁はのせるのが上手いらしい。自分も一時はそんな職場にいたのに、壊してしまった、立て直すこともできず、逃げようともしなかった、地獄はあっちだったのか?

 一つ目をすこしブレると言ったことで、大工魂に火がついたのか、さらに熱い議論が続いている。まるでケンと俺は、邪魔者扱い、あきらめて壁際の椅子に腰かける。


「ヒロ、仕事するおっさん達が羨ましいって顔だな」

「そうだな、確かにあんなに議論する仕事仲間がいるのは、あこがれるな」

「普通の社会人じゃなかったのか?」

「普通ではないかな、チームの人数減らされていって、最後は一人で、休みなしの24時間営業!」

「それどれくらい?」

「3年ぐらいかな」

「よく死ななかったな」

「だから、死んだんじゃなないのかな?」

「あ、地獄って言ったのは、たとえ話ね、たぶん死んでない」

「それは、仮想現実のゲームマシンで遊んでるかもしれんってあれか?」

「いやそれはないかな、なんかSF系の病気か?うちら夢者って呼ばれてるのは、向こうの世界の夢を見るからって説があってね」

「こっちが夢じゃないのか?」

「夢見てるときに、これは夢だって気が付くか?」

「まぁ、気が付かんな、すくなくとも俺は一回もないな」

「こっちに来てから、一年に一回ぐらい、向こうで普通に生活してる夢を見る、こっちに落ちた事なんて、まるで無かったかのようにな。それでこっちで殺したやつが、取り調べ中に死んだってニュースが流れてたのを、きっちりと覚えた上で、目が覚める」

「それは、こっちで死んだら、向こうでも死ぬってことなのか。夢者同士でも殺すのか」

「俺だってなんでもってわけじゃない。シングルマザーを子供たてにして、犯して殺すようなやつだぞ。刃が届けば殺すだろう?」

「それはまあ、殺すだろうね。しかし、死んでないってなると、なんでこっちに?」

「会ったやつらも、俺も、絶望してかろうじて死なないで生きてる、そんな状態で向こうで寝ると、こっちに落ちる。偉い神父様が曰く、魂を磨くのをやめた為に、試練をかされた。らしい、そういった説もあるってこと、証明なんて出来ないしな」

「そっか、自殺したんでは無いのか、それは救いだな」

「3年もきつい仕事してて、なにに絶望したか、覚えてる?」

「あぁ、昔聞いてたバンドの新曲を偶然聞いて、夢は遠くない、とかって歌詞があって。夢なんて無いのに、距離ってなんだ? そう思ったら、体も気持ちもしんどくなって、簡単なメールも書けなくて、もうダメかなって、だから自殺したんだと思ってた」

「こっちに落ちてくるやつは、みんなそんなもんだよ、そして最低でも一回は殺意を持って人を殺してる。殺人が原因で絶望してるってやつは少ないけどな。それと、この世界の人間は自殺しない。信心深くないやつでも、輪廻に帰れないって信じてるんだって。そして、向こうで自殺したやつは、こっちに魔物としてふってくる、見た目が獣だから、これもそういう説があるってだけだけど」

「仕事から解放されただけでも、天国かもって思えるけどな」

「だったら自殺はするなよ、夢者が自殺すると魔物になるらしいからな」

「気を付けます」


 その後、大工の奥さんらしき人が持って来てくれた酒を飲み寝てしまう。ケンに起こされると、大工の棟梁らしき人が、誇らしげに弓を渡してくれた。恐る恐る引いてみたが、ブレもなく安定している、グリップもしっくりくるいい形だ。目一杯引いてみると、すこし重いがこれぐらいなら慣れれば大丈夫。

 棟梁が矢をわたし、入口のドアに打ち付けたのか、丸いお盆を指さす。これは撃っていいんだな、引き絞り、呼吸を整え、指を離す。矢は上にそれる、わかってはいたのだが矢を離した指が痛い、そのうち手袋でも用意しよう。数発撃つが、上に外れる。照準が無いので、矢先で合わせているのもあるが、この重さの弓と、かなりごつい太さと矢じりの付いた矢にもかかわらず、矢がほぼ真っすぐに飛んでいる気がする。試しに手で投げてみたが、数歩先に落ちる。


「ヒロ、弓つかえよ」

「いや、もしかして重力無視で飛んでいくのかと」

「そんなわけないだろ、ちゃんと真っすぐ飛んで上に外れてるだろ」

「いや、矢は真っすぐは飛ばないぞ、弓なりっていうだろ、銃じゃないだから」

「そうだな、でも、横から見てると、ほぼ真っすぐだぞ」


 やはりそうなのか、もう一度矢を放つ。今度は、お盆のほぼ真ん中に刺さる。やはり、ほぼ直進する、と言っても俺の腕では、ただのブレの可能性もある。ケンに、もう少し魔力を込めて撃てと言われて、構えてみるが、矢に魔力? こぶしみたいに矢が痛みを感じるイメージか? 悩んでいると、ケンに矢先に火をつけるイメージと言われて、やってみる。矢先を睨んでみるが、俺は目からビームだせる系の人ではない。目をつぶって、もう一回と言われ、目をつぶる。これで出来ても、意味あるのかと思いながら、何度かやってみると、確かに気分的には、目をつぶっている間だけは、魔力を込めている気がする、いや、するかもぐらい。

 しかし、実際に魔力が込められているのか、さっぱりわからない。魔力はあくまでも、相手の魔力にダメージを与えるだけなので、人を撃ってみないとわからない。通りに出てみても、そんな都合よくチンピラはいない。通りかかったほろ酔いのおっさんを撃ちそうになったが、見逃してやることにする。

 ケンが、倉庫の奥にお盆を置き、油でも付けたのか、先に火が付いた矢をもってくる。店の外から、先ほどよりかすこし距離があるが、まっすぐ飛ぶなら、距離は気にしなくてもいい。目を閉じ、矢先に力をためるイメージ、そっと目を開け、指を離す。突然前方向に吸い込まれるような感覚がして、気を失った。

 

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