盗賊狩り12
片付けをしてテントにもどると、ヒナが元気なさげに少しうつむき座っている。アンの言った通りの状態のようだが、中途半端かつこの男女逆転したような関係では、なにが正解かはわからない。いや、逆じゃなくても俺は女性を無意識に怒らせる事には自信がある。どうせ怒らせるのだから、気楽にいこう、うん、そうしよう。
「ヒナ、なにがあっても、君を一番大事にするよ、なんて。」
しばらく沈黙が流れ、もう死にたいと思うには十分な間があった後、ヒナが立ち上がり片手で顔を正面からつかみ力を込め、指がほほに食い込んでいく。
「ヒロ、嘘つかないで、会いたい人がいるって話してたでしょう。」
「ごめん。」
手を離すと、俺の体を強引に回転させて後ろから抱きしめる。
「ヒロ、もう大丈夫。ちょっと心も剣も乱れたけど、その人に会えるまで私が守る、団が見捨てても私が守る。」
これはすこし泣きそうだな、俺は彼女を盾として使う、気持ちに答えないと分かっている相手を守る盾になると言う、何も矛盾しているわけじゃない。俺には、振り向いてくれないと分かっている相手を、命がけで全てを捨てて守るなど出来ない。守ってくれとも、必要ないとも言えない、おれはずるいやつだ。
目標としている盗賊のアジトが近づき、商人と護衛に偽装する。団の中に緊張した空気が流れ、ヒナとの会話も減る、寝る前に一度キスをして、抱き枕になって寝る。筋力はなんとか一発ぐらいなら撃てるまで戻ったが、狙いを付けられるほどではなく、戦闘への参加は見送りとなった。
「ランさん、荷物おろしましたよー。」
「ご苦労さん、ヒロ、こんな事しててもいいのか?」
「自分でやらせておいて、何言っているんですか?」
「ヒナは明日、護衛には残らない。何人いるか不明な砦に乗り込むんだぞ、別れを惜しんで盛り上がっていっきに!」
「本当にただのエロ親父ですよね。」
「冷たいなぁ、なんでおまえらは二人とものってこないかな。」
「もしかして、ヒナにもなんか言ったんですか?」
「おまえには言うなと言われたけど、教えてやろう。」
「それは聞かないでおきますよ。」
「いや聞け、ぜひ聞いて判断しろ。ヒナはおまえとは釣り合わないと考えているんだよ、自分なんかもったいないんだと。酒場で客を取る女を本気で好きになる、そんな度量の大きな男のことを、命捨ててもいいほど好きなんだって、だけど自分は嫌われ無ければいいって、近くにいれればいいって。もう可愛すぎるだろ、今すぐあーんなことや……。」
「やめやめ! 言うなって言われたのに、だめでしょう。」
「その割には、最後まで止めなかったね。」
「……すいません意思が弱くて、何にしても。両手でも腕相撲で勝てない相手を、押し倒したりできないですし。」
「一言ささやくだけでいいのは、わかってるんだろう、なぁ、教えてやろうかぁ~?」
「……やめときます。」
「いまちょっと、間があったよね。」
「気のせいです。」
テントに戻ると、鎧を着たマネキンが立っている、皮の鎧に胸と肩に金属のパーツが付くようだ。ヒナは、かっこいいでしょうと、すこし嬉しそうだ。まるで服でも選びながらデートしてるみたいだ、まだそんな歳なんだ、戦って殺されたり殺したりするような歳じゃない。
「ヒロ、そんなに心配しないで。」
そのゆったりとした話し方が、よけいに血の匂いとは別世界の物に思える。
「大丈夫、ちゃんと訓練してるから、命を落としたりしない。ケガしたら、またお願いね。」
「そしたら、俺を守れないだろ、無傷でもどって。」
「わかった、わかった、ありがとう。ヒロに心配してもらえるえて嬉しい。」
翌朝まだ暗いうちに、待機する数人を残してヒナ達は出発する、目指す砦はここからは見えない。残された者は待つしか出来ない、とてもとても長く感じる。




