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夢者  作者: 高島 良
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盗賊狩り8

 翌日、弓の腕前を披露するはずが、一人で弦を張ることも出来ず、矢は数歩先の地面にささる。ランとメイルが必死に団長を説得し、なんとか現状維持となった。力を貸しますなどと、かっこつけて言った自分が恥ずかしい。その後、ランの強制ご褒美が実施されたが、すこし右腕がしびれただけで効果はなかった。


 夕方前に町に着くと、ランと一緒に数人の重傷者を教会へと運ぶ。こっちが本題と言わんばかりに目をかかがやかせて、水晶に俺の手を置かせてなにやら必死にメモしてぶつぶつと呟いている、研究モードに入ったようだが、怪しすぎる。

 酒場へ向かったメンバーと合流すべく店へと向かったのだが、前方からふらつきながら若い男性が走ってくる。その後ろから、声がする。


「新入り! そいつを掴まえろ!!」


 酔ったその声は、団でも大柄な部類に入る先輩だ、状況は理解したし、逃げる青年には申し訳ないと思ったが、すれ違いざまに足を引っかけて転ばせる。よくやったと、先輩は歯をみせて笑い、青年は泣きながら引っ張られていく。義賊だが、子供と女性以外には容赦ない、俺は逃げ込む場所を間違えたのかもしれない。早々にヒナちゃんと和解しないと、今までに体験したことない方向の地獄を味わうことになるのかもしれない。

 

 酒場は、男にとってはこの世の地獄となっている、泥酔した先輩達は魔物以上の混乱を町にもたらしている、しかし見知らぬ男達を助ける義理もない。隣の宿に入ると、聞いてますよー好きな部屋をつかってくださいねーと、受付の女性に声をかけられる。こんな雑なかつらで素通りとは、俺は今まで変装と言うものを間違っていたのだろうか、いやたぶん、団のメンバーと一緒だからだ、本当に女に見えるとは思いたくない。

 なるべく危険の無いように、奥の部屋にしたが、入ってみると酒場の騒ぎが良く聞こえる。さっさとぬげー、ちっさいなぁー、などなど、どんな光景か想像したくない先輩達の声が聞こえる、もうセクハラなんてかわいいレベルの話ではないが、男女が入れ替わっているだけで、向こうの世界でもよくある光景だ。

 酒場の騒ぎは続いているが、部屋で飲むくらいならと、部屋をでてフロントへ向かう。もう少し静かになってから動くべきだった、階段を上ってくる先輩達が俺を見つけると、顔が笑顔に変わる。急いで部屋に引き返したが、手練れの先輩達から逃げれるはずもなく、4人の先輩に部屋の隅へと追い詰められる。女の子が怖くて断れなかった、なんて話を聞いた時は理解できなかったが、今なら分かる、もう素直に従う他ない。


「こらぁ! なに新入りに手ーだしとんねん!」


 助けに来てくれたのは、メイル副長だった。だいぶ酔っているようで、ゆっくりと左右に揺れながら部屋に入ってくる、軽く顔を振ると先輩達は走って出ていく。


「助かりました、副長。」

「助かったぁ? 邪魔だっただけだよ。」


 酒瓶を力強くテーブルに置くと、ゆっくりと近寄ってくると、俺の腕をひねり逃げれないよう固定すると、もう一方の手で俺のかつらを取る。


「ヒロー、私の隊に入ったんだから、命令は絶対、わかるよねー。」


 目がやばい人になっている、聞かれなくても、この状況では逆らうなんて選択はない。ナイフを取り出すと、俺のシャツを切っていく、女の人に迫られるなんて夢にまで見た光景だが、実際にされると恐怖しかない、なんて鼻息の荒さ、食われるかもしれない。

 ゆっくりとシャツが切り刻まれ、ズボンもすでにホットパンツ並みにカットされている、そろそろ体が刻まれるのかと、思った頃、ドアが乱暴に開き、ヒナちゃんが入ってくる。


「副長!」

「なぁに、ヒナ。この男も殺したいって言うなら、あげないよ。」

「殺したいわけじゃないです。」

「すべての男を殺すまで、剣は置かないって言ってたのに?」


 ヒナちゃんは、下を向いて次の言葉をえらんでいる。副長は手に持ったナイフを床になげ、腰の剣を握る。団での上下関係は絶対だ、普段和やかに話していても命令には反論もなしだ、このままでは彼女が切られる。止めようと声を出そうとすると、さらに腕をねじられ、副長はこちらを向くと軽くウインクする。その目は、いつもと変わらない、酔ったふり? とりあえず何もするなって事なのだろう。


「まだ、よく分からないけど、……ヒロは殺さなない。」

「分からないってなに? この男を抱きたいの? 自分のものにしたいの?」

「……守りたいです!」


 副長は俺の腕を離すと、ヒナちゃんに近寄っていく。いよいよ、歯向かった彼女が切られると思ったが、力強くだきしめる。


「よしよし、よく言った。それでいい。」


 なんだこれ? よく分からないが血が流れる事態は回避されたよう。


「かわいいヒナに、好きな男が出来るなんて、ほんとによかった。」

「それは、まだよくわからない。」

「うーん、そっか、じゃ試してみたら?」

「そうします。」

「よし、私は飲みなおしてくるよ、じゃ。」


 そう言って、副長は部屋をでていく。俺の意見は? などと聞ける状況ではないが、助かった。呆然と立っていると、ヒナちゃんに抱きしめられる、骨がきしみ息が止まるほどのその力は、命にかかわるほど、なのに今は落ち着く。キスをして、頭をなでると、また力強く抱きしめる、さっきよりかはだいぶ優しい、もしヒナちゃんが男でも惚れてしまうかもしれない。

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