盗賊狩り5
今迄は楽に片手で持っていた酒瓶が、両手で抱えても重たい。この非力っぷりで、押し倒すとか無理がある。声をかけてテントに入る、明らかに警戒しており右手は背中にまわしている、先ほどまでは見える位置にナイフがあったので、少しは改善したと思いいたい。
酒瓶を低いテーブルに置き、酒を注ぐが手を付けないし、会話も無い。毒でも入っていると疑われているのだろうか、とりあえず自分の分も注いて一口飲む。警戒度に変更なし、向こうの世界ならこんな女子高生に見える子にお酒勧めた時点でアウトだが、この世界では普通にみんな飲む。
「腕相撲しない?」
「はぁ?」
うわー、ギャルを無謀にもナンパしたみたいな反応。だかここでくじけてはいられない、失敗すればご褒美がまっている、なんかとてもややこしい。
「お願い、一回でいいから。ランさん見張ってるから、すぐには出れないんだ。」
「いいけど。」
意外と素直、そして手を握った瞬間に負けるとわかる。肩から変な音がして、あっさりと勝敗が決まる。
「大丈夫?」
「うん、なんとか。とりあえず俺もリハビリ中だから、そうでなくても貧弱ですから、そんなに警戒しなくても、大丈夫。」
肩の負傷は予想外だったが、少し安心したのかグラスに口をつける。しかし、右手は背中にまわしたままだ。
「ランさん、なんて?」
「……男性恐怖症治すために、朝まで話してこいと。」
「ふーん、……押し倒してこいって? ……そうなんだ。」
驚いてしまい、あっさりと見抜かれる、日頃のランから想像できるのか、セクハラ上司おそるべし。
「言われたけど、断ったからね、ちゃんと。」
「その流れだと、昔の事、聞いたんでしょ? ……奴隷商や、酒場で女の子買います?」
「……あぁ。」
「男の人って、なんでなんですかね、好きだって言ってくれたら、お金なんていらないのに。」
「簡単には言えないし、自分の気持ちにも自信が持てないから、じゃないかな。」
「……好きな人、いますか?」
「いるよ。」
「即答ですね、ここは下心丸出しでいないって答えるんじゃ?」
「確かに、今まではそうだったかな。」
「話てくださいよ、その人のこと、ランさん見張ってるんでしょ?」
なるべくぼかして話たが、ゆっくりと頷き話を聞いてくれる彼女にほとんど話してしまった。警戒度もだいぶ下がったのか、背中に隠してあった物騒なナイフは、テーブルに置かれている。……威嚇の為に、置かれているのかもしれない。
「ちょっと恐怖症治ったかも。」
そう言うと、素早く腕を伸ばして俺の胸ぐらをつかむと、強引に引き寄せる。唇が少し触れるが、なんとか渾身の力を振り絞り少しだけ離れる。毒の影響がないか表情を確認するが変化はない、とても冷静というか、怒りにみちた目つき、キスされたあと、こんな顔されたことはいままでない。
「ちょっと、まってまって、お互いリハビリ中なわけだし、心が弱ってる時は、間違いを起こしがちだし、後で後悔したりするわけだし、今はやめよう、やめよう、ね。」
手を放してくれるのを期待したのだが、眉間にしわがより、さらに怒らせた事は間違いな。両腕で胸ぐらを掴むと、地面に数回打ち付けられ、重たい拳が顔面に打ち込まれる。
「私だって……、ちゃんと嫌だって……、何回も何回も……、言ったのに……。」
最初の一撃で飛びそうな意識の中、男達の無視した訴えが聞こえてくる。彼女から見れば、俺も男達でくくられる一人なのだから、これぐらいしかたないのだろう、これで少しは治療になったなら良かったのだろう。
頭に冷たいタオルが置かれ、目を覚ます。まだ少しふらふらするが、ランさんが見える、なんとか生きているようだ。
「ご苦労さん。いい働きだったぞ。」
「聞いてたなら、助けに来てほしかった。」
「うん、そうしたかったんだけど、寝てる間もヒナってば、ずっと抱きついててね。」
「そんな名前なんだ、もう少し力強い名前がいいとおもいますよ。」
「確かに! それでね、なんとさっき私のとこにきて、貴方の手当しといてってさ、あと謝っといてって。男に対してそんな事言ったの初めてだよ、今までならちょとでも触った男は切りかかってたから。」
「それは、少しは改善したってことですかね。」
「かなりよくなったよ、やりますなぁー、この女たらしー。」
「俺、もう少しで、死んでたよね?」
「せっかく蘇生したのに、死んでたら困るわ。」
「俺って、死んでたの?」
「そりゃ、2か月も栄養無しで生きてるわけないでしょ!」
「そんな、怒られるとこ?」
「そうだね。普通なら死んでたけど、魔力が少し残ってたからね、なんとか蘇生できたのかも。魔力が多いほう?」
「……そうですね、たまに言われます。」
「そっか面白い素材、町もどったら、教会で属性とかも見せてね、救護担当だから常に蘇生やら回復の研究はかかさない、手伝えよ!」
そう言って、胸を叩くと、テキパキと団員に指示を出していく。属性っていうと、あの水晶玉みたいなのだろう、闇の魔力から弓使い、さらに賞金首とバレる、しかも顔を隠す帽子やフード付きのコートはない、、素顔をさらして町を歩かなければならず、見つからずに仮面を手に入れられる可能性はひくい。それに、まだ木箱を背負って立ち上がる事ができない、筋トレしなくてはいけないが、今は歩くのもやっとだ。




