盗賊狩り4
朝にテントを片付けて、馬車に乗せるのだが。まだ自分の木箱すら持ち上がらないので、せっせと働く女性達を見ているしかない。気まずいので、移動後テントを張ってからは、ランを手伝って、負傷者の傷の消毒や、食事を運んだりとすこし動く。大抵の女性達は、尻を叩いたり、あとでテントに来いなどと冗談とも本気とも取れない発言をして、世の女性たちの苦しみを身をもってご教授してくれたりするのだが、一人だけ足を切られ歩けない10代後半の女の子だけは、やたらと警戒して包帯を変えている間も、ごついナイフを握りしめ、今にも首筋に突き立てそうな目つきで睨んでくる。
にもかかわらずアンは、
「ねぇ、あの子に、飲み物持ってって。」
「なんでですか? めちゃくちゃ俺の事、警戒してたじゃないですか、さっき切られそうでしたよ。」
「だからだ。」
「助けたのに、死んで来いと?」
「男性恐怖症ってやつなんだ、ちょっと押し倒して治療してやれ。」
「もっと優しい治療あるでしょう、……男性恐怖症ってなにかあったって事ですよね。」
「それは、もちろんあれだよ。」
「すいません、俺は察してよって言われるほうの人間なので、あれではちょっと……。」
「親に奴隷商に売られて、毎晩おもちゃにされたんだよ。治療には、優しい男に一晩隅々まで可愛がってもらうしかないだろうが、それぐらい分かるだろう。」
「さっぱり分かりませんって。そんなひどい事があったなら、俺は近寄らないほうがいいんじゃないですかね?」
「ひどい事かぁ、まだましなほうじゃないかな。客の顔も見えない暗い地下で、くさりに繋がれて一晩に何人も相手させられて、食い物もほんの少し。そんな状態が数年続けば、助け出しても、死んだ奴隷商の傍らで泣き崩れたり、細い腕で剣振って突っ込んできたりするんだぞ。」
「洗脳ってことですか?」
「そうだな、長時間ひどい目にあえば、ほんの少し優しくされたり、ちょっと褒められただけで、自分を鎖で繋いだ相手を神や天使だと思い込んじまう。そうなると地上に出しても、ろくに飯も食わない、治るやつは滅多にいないんだよ。」
「ひどいですね。」
「だろー、ここまで説明したらわかるだろ、さっさと押し倒してこいよ。」
「どうなったら、そこに戻るんですか。」
「分かれよー、今まで男に抱かれるしか無かった奴が、やっと男を狩れるようなった。なのにだ、足怪我してしばらく教会暮らしだ。男は相手するもんじゃなく、女が抱くものだと教えてやれ。」
「なんか、かっこいいですけど、それって俺の役目じゃない気がするんですが。」
「細かいなぁ、副長より若いしいいだろう。」
「そういう問題じゃないでしょ、無理ですって。」
「だったら、軽く指で、ささっと……。」
「そんな技は習得しておりません。」
「教えてやろうか?」
「……いえ、けっこうです。」
「いま、ちょっと迷った?」
「いえ、そんな事はないです。」
「とりあえず、そばで話聞くぐらいできるだろ。」
「それぐらいなら。」
「朝までな。」
「それは、長くないですかね?」
「じゃ、酒瓶もってけ、もし出てきたら、またご褒美ね。」
「またあの液体……、客人の対応雑じゃないですか?」
「団の女の子のが大事、はい、がんばってー。」
もうこれ以上の抗議は無駄と目が語っている。朝まで男嫌いの若い女の子の部屋におっさんが一緒にいる方法、そんなのあるわけないだろー、ほぼ確実に切られる、そしたらまた治療してくれるのだろうか?




