魔獣ハンターとして34
朝まで見張ったが、野犬は戻ってこず、馬車の荷物をいったん教会に置かせてもらい、けが人と水を乗せる。徹夜の見張りで眠気も限界の為、弓を抱いて馬車の隅で眠る、護衛としては失格だが、歩いたままでも寝てしまいそうなので、これで勘弁してもらう。
「ヒロさん、そろそろ町見えてきますよ。」
そう言って、先に起きていたマシュマロが俺を起こす。
「そんなに寝てたのか、魔力使い過ぎたのかな。」
「あんなに矢撃って、徹夜で見張りするだけでも人とは思えないんですけど。」
「今更人を、化け物みたいに言うな。」
眠気を誤魔化す為に、朝まで色々と話したおかげで、すっかり俺への恐怖は無くなったようだが、起きたら名前が思い出せない、ちゃんと聞いたのかも怪しい。
「ヒロさん、あのですね。先輩を誤魔化すのは、無理だと思います。」
「言い切るのね。何か考えてくれるんじゃなかったっけ?」
「考えましたよ、考えましたけれども。まず先輩に私の嘘はほぼ通じません。」
「仕事の事を言うのは良くないと思うけど、すこしは、演技の練習したほうがいいんじゃ?」
「私って、心も体も素直だから大丈夫です。」
「自身があるって、……すごいな。」
「ありがとうございます。そして、弓使いが村に向かっていて、引き返してこなかった事は、町の人は知ってます。」
「そうだよね、なんか解決策ないの?」
「街灯まではまだ距離がありますし、こちらはこの荷馬車にしか街灯がありません。ヒロさん以外にこの人数を守れる人はいません。」
「……、今降りて隠れる事も出来ないと。それって、もしかしてだけど、サオリに謝る準備しとけって言ってる?」
「……、そうなりますね。」
「もしかして、もしかしてなんだけど、村出る前からそれ気が付いてた?」
「……、言ったら来てくれないかなぁと。もしもですけど、馬車に隠れて先輩に見つからなかったら、今日は酒場に泊まって、明日の早朝出発ということで。」
「なんで見つからないほうが、もしもなんだよ。」
「いやだって、これヒロさんの馬車だし、普通に考えて居ない方がおかしいかなと。」
完全にマシュマロにはめられた、とりあえず土下座したら許してくれるのだろうか、そんな問題ではない気がする。よく考えてみれば、ぞろぞろと町に到着すれば、何があった? 弓でさくっと、弓使いはどこだーって話になる。そこにサオリがいれば、当然馬車を探すだろうし、見つかるかぁ。まだ怒ってて探しに来ないって事もあるか、それはそれで寂しい。
小高い丘を越えると、町が見えてくる。西側の橋には木のバリケードが置かれ、野犬の警戒中であることがわかる。朝から歩いた人々は、町の壁をみて泣き出したり、帰ってきたと雄たけびを上げたりと賑やかになる。
町側もバリケードをどかして、人が一斉に走ってきて、みな無事を喜び強く抱きしめあう。
「これを見ても、まだ、通り道だった、なんて言いますか?」
「誰かあの手配書を無かった事にしてくれるならな。」
「これだけの人を助けたんだから、もしかしたら、あるかもしれませんよ。」
「もしかしたらか、期待しないでおくよ。」
「先輩がこっちに来ます、隠れて。」
隠れてと言われても、小さな木箱しかない。みなの昼食が無くなった為、中身は空だが、足を曲げてなんとか入る。早くと言われ、頭を丸めて入ると、素早く蓋が閉められる。
マシュマロの名前を呼びサオリが近づいてくる、無事を喜びあいながらも、酒場の女の子が二人亡くなったと聞いて、サオリが泣き出す。しばらくして、馬車が動き出しても、サオリの声が聞こえる、どうやら馬車に乗っているけが人を励ましているようだ。予定では、病院を兼ねる町の教会でけが人を下ろして、酒場に向かうはずだが、サオリが馬車から離れない。教会でけが人を下ろした後も、マシュマロを励ましながら、その横に座っているようだ。予想よりも長引く体育座りに足がしびれる、しかし今外にでるわけにはいかない、首もしんどくなってくるが何とかこらえる。
馬車はすすみ、二人の会話も止まる、挨拶も聞こえないことから、まだ二人とも馬車にのっていると思われるが、あまり音がしない。嫌な予感がする、町の中で静かな道、記憶にあるのはサオリの宿へと続く道だけ、これは送っていっているだけなのかもしれないが、もう一つマシュマロが裏切った可能性もある。よく考えれば、彼女はサオリ大好きっ子である、元々俺の味方ではない。頭を上げて蓋を押してみるが、動かない。釘を打った音は聞こえなかったが、閉じ込めるなら何か重いものを置くかこの上に座ればいいだけだ。




