魔獣ハンターとして31
部屋に入って来た時は大違いに、ニコニコしているサオリをみて、やはり話しておかないと覚悟をきめる。
「なぁ、その、惚れ薬なんだけど……。」
「……話してくれるんだ。」
「……あぁ、正確には、薬ではない、毒なんだ。」
「毒? だってヒロも飲んでるんじゃないの? その口移しで私に、違うの?」
「俺も詳しく知らないんだけど、魔力の属性の問題らしくて、三日ぐらい開ければ問題ないらしくて、たぶんキスすると、その毒である俺の体液が少し……、それで少し胸がドキドキするというか……。」
「……ヒロ、私が近くにいるの嫌?」
「俺が? そんなこと、全くないよ。」
「じゃなんで、そんな話するの! 今更そんな話で済まそうとしてるわけ!」
怒ったサオリは、シャツを掴むと部屋をでていく。呼び止める言葉もでない、何を言えばいいのか分からない。手配書が来ているなら、もうこの町には居られない。それが言い訳だと、よく分かっているのだが、体が動かない。
翌朝の食卓は、サオリが不機嫌な為空気が張り詰めている。ちびに夫婦喧嘩か? と聞かれサオリの目がさらにつりあがる、なにか手伝いをと言うと、サオリが素早く結構です! と机を叩き、今日の予定がなにも無くなる。
行くところも無いので、昨日の谷間に向かい矢の練習をする。矢を放ち、回収する、ひたすら繰り返し頭を空にする、これで上達したりはしないのだが、ほんの少し気がまぎれる。
昼過ぎに、鍛冶屋の親父さんがやってきて、新しい矢を試してみる。鉛筆ほどの細さのその矢は軽く、魔力を大量に込めてもブレが少ない、満足できる仕上がりとなっていた。
「旦那、可愛い嫁と喧嘩でもしたのか?」
「旦那って……、喧嘩って言うか、元から長い事いられないから。親父さん、荷馬車って手配できたりする?」
「なんか運ぶなら、こいつを貸すぞ。」
「いや、町を出て西に行きたいんだけど、荷馬車隊は無いらしいから。」
「別に売ってやってもいいが、一人で行くつもりか? あんたの腕なら問題ないのかもしれんが、街灯ぐらい付けんと、野宿もできんぞい。」
「じゃ、頼みます。」
親父さんは、西の村まで約一日、その先の道も説明してくれた、かなり日数はかかるが町までいけそうだ。不安だった操作も、掛け声で前進、手綱を引いて停止、あとは勝手に道沿いに歩いてくれるらしい。速度は徒歩とかわらないが、操作が簡単で、野宿できればそれで十分だ。明日の朝には仕上げて、宿まで持って来てくれるそうだ。仕事が早いのはうれしいが、あの宿も今日で終わりと思うと、胸がくるしい。
宿に戻ると、もう夕食の準備が整っており、明日の朝西の村に向けて出発すると告げる、ちび達はもっと遊べと抗議し、サオリは相変わらず目も合わせない。精算をと言うと、皆の目線がサオリに集まる、十分いただきました! と言って部屋に引き上げていく。遠慮する義姉さんにお金をを渡して、自分の部屋に引き上げる。このままでは、後悔すると分かっていても、一歩踏み出すことが出来ないまま、眠りについた。
翌朝、街灯と幌の付いた荷馬車が到着し、義姉さんが用意してくれた食料など荷物を積み込む。サオリは姿を見せず、他の世話になった人達に見送られて出発する。ちび達が元気に手をふっているので、しばらく手をふる、いつも乗る荷馬車と速度は変わらないが、見送りの人がいると、この速度ははずかしい。
宿が見えなくなると、涙がこぼれる、最後に一目見れたら、そんな思いと。もし見送ってくれたら、もっと辛かったかもしれない、もう一日なんて言ってしまえば、たぶんここに居ついてしまう。そうなれば、俺の首が飛ぶところをサオリやちび達に見せる事に、死ぬにしても流石にそれは避けたい。すこし逃亡生活にも疲れてきたのだろうか、とくに逃げる技術があるわけでもないのに、賞金稼ぎ達はなにをしているのだろう。




