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夢者  作者: 高島 良
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魔獣ハンターとして30

 前日同様に聞き逃しそうな控えめのノックがしてドアを開ける、サオリは薄いシャツを胸元までボタンを外し、それ以外なにも着ていないのがわかる。ゆっくりと部屋に入り、壁際に立って片腕を下ろし胸を隠すようにもう片方の手で腕をつかんでいる、下を向き何も言わない、ちび達に嫉妬したわけでもないだろうし、この沈黙はいったいなんだろう。


「……無理に部屋にこなくても。」

「そう言う訳にはいかない……、もう家の事に少しお金使ってしまったし……。」

「部屋と風呂だけでいいって。」

「それは、本音じゃないでしょ……。」

「そりゃ、少しは期待したけど。……俺何かしたか?」


 彼女に一歩近づくと、それに反応して彼女も下がりさらに強く自分の腕をつかみ、目を強く閉じる。


「……理由も聞けない感じ?」

「ちゃんと……話す、だから縛って。」

「……なぜ、縛る必要がある?」

「私が、逃げ出さないように。」

「うーん、そこまでしないと話せないって、意味がわからないんだけど。」

「ちゃんと、……話したいけど、逃げ出したいし、ヒロの側にいたいの!」

「さっぱり……。」

「じゃ、手を掴んで。全部話すまで、私を逃がさないで。」

「……分かった、二重人格か?」

「そうじゃない。」


 自分を守るように胸の前に組んだ腕をほどき、細い手を差し出す。意味はわからないが、唇をかんで震える手はそれだけ俺が怖いって事なのだろう、震える細い指は折れてしまいそうで、そっと握る。


「もっと……強く。」

「加減が分かんない。」

「……じゃ、ここに立って。」


 そういって、今自分が立っている横の壁を少したたく。そこに立つと、ゆっくりと背中を預けてよりかかってくる、俺の両腕を自分の腰の前に持って来て繋がせる。髪を洗ってきたのだろう、甘い香りが違う状況であったらと、悲しくなる。後ろから軽く抱いている格好なのだが、サオリが何をしたいのか分からない、冗談や演技で怯えているわけではないように思える。


「怖いなら、俺を椅子に縛る方がいいんじゃないのか?」

「……そういう事じゃないの。」


 細い指で俺の繋いだ手を上から包み、大きく深呼吸して話はじめる。


「手配書……、実はかなり前に酒場に来てたんだ。酒場に住んでた頃、辞める前は女の子達のまとめ役? してたのね、一番の古株になってたから。その頃は、お店の仕事も色々としてて、手配書張るのもその一つだった。お客さんにも聞かれるから、手配書に書いてある言葉も、すこし覚えた。入れ墨とか、持ってる武器とか、夢者とか……。」

「……俺のは張ってなかったよね?」

「うん、私の後のまとめ役の子、今隣村のお祭りいっているんだけど、その子は細かい仕事は適当でね、ちゃんと張ってなかったの。ヒロが町に来た日の朝に、お祭りに行く子達は町を出て行って、私はまとめ役するようにって、酒場に呼ばれたの、隣町から荷馬車来る日だったから一日だけ。束になっておいてある手配書をぱらぱら見たけど、数がおおいから結局はらなかった。お風呂でヒロのひげが濡れてその輪郭が見えるまでは気が付かなかった、覚えてたのは夢者って言葉。」

「それって、最初の日?」

「そう、手配書って言っても、探し人の場合もあるし、みんな極悪人ってわけじゃないから。ヒロはそんな怖い人に見えなかったし。」

「でも、確認しに行ったんだ。」

「……うん、今日鍛冶屋の親父さん来た時ね、後をつけたの。ごめん……、町を出ていく用意が出来たのかなって、なんかこっそり出ていきそうな気がして、ごめん……。」

「……それで、弓を見たのか。」

「うん、弓でどーんってなって、怖くなってその後は見てない。酒場に行って、手配書見直したら今迄見た事ないほど大きな賞金で、夢者以外にも、弓使い、剣とベッドは下手で、100人の傭兵が全滅したって。」

「……一桁違う。」

「一桁って、千?」

「……そんなわけ、下だよ。」

「それでも10人……。」

「自分達も殺されると?」

「うん……、弓使いなんて今迄あった事ないし、離れてても殺されるなら、傭兵が束になってもかなわないなら、逃げてもだめなんだろうなって。でも、ずっと優しいし、義姉さんも何も言わないし、一緒にいるとすごいドキドキするし、ちびっこ達と遊んでるとモヤモヤするし、惚れ薬使ったとかいうし、私の気持ちが、……よく分からない。」

「……そうか、それでどうしたい?」

「したい。」

「いや、なんでそうなる、すぐに出ていけとかって流れだろう。」

「昨日、ヒロに追い返されて、初めて一人でしたの。」

「……追い返したって、それになにとんでもない事告白してるの。」

「ヒロの事怖いけど、今の気持ちが惚れ薬のせいでも、なんでもいい。」

「よくないだろ……。」


 腕の中で振り返ると、首に手を回してキスをする。顔を離すと、そこには恐怖の色はなく満足そうに見つめる。もう一度キスをした後、耳元でもう私だけなら殺されてもいいと甘い声でつぶやく。惚れ薬ではないが、効果はそうなのかもしれない、こんな催眠術みたいな詐欺行為は良くないとは、分かっている、分かってはいるのだが、事前説明できませんでした!

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