例外へ
席につくと、早いなとケンにからかわれ、相手が満足すれば時間は関係ない、と彼の連れが反論し、女性に聞いてみたいが、聞かれたくないぜ世話な話をケンの翻訳をはさみつつしばらく盛り上る。すると乱暴にドアを開けて、二人の男が入ってくる。
なんとなく、先ほどのチンピラと服装が似ている気がしたが、気のせいということにしておこう。バーテンに話かけ、バーテンがこちらを指さすこれは勘違いではなさそう。
テーブルまで歩いてくると、なにか言っているがやはり耳鳴りしか聞こえない。しかし、ケンと連れの目線が俺に向いたことで、探している物がなんなのかチンピラ二人組と俺にもよくわかる。
胸ぐらをつかまれて、つばがかかるほ怒鳴られるが、耳鳴りが少し大きくなっただけで、何いってるのかはわからない。
「あの、なんて言ってる?」
「仲間を殺したって? 趣味はもっと控えめにやってほしんだけど」
「いや、今みたいに胸ぐら掴まれたから、金的しただけだ、ちゃんと……」
「ちゃんと、なに?」
もしかして、彼女が止めを? 自分で殺したかったから? あんな清楚系の美少女が? そんなわけないとは思う、というか思いたい。
「倒れたあと、誰かが、とどめをさしたのかな?」
「蹴り殺されたって言ってるぞ」
「金的で死んだりしないよな? 魔力で守られてるんだろ?」
「魔力抜け切るほど、弱ってれば死ぬけど。倒れてる相手に、いきなり金的?」
「いや、向こうから絡んできたんだよ、何言ってるかわからんかったけど、最初は元気そうだった」
ケンは、すこし考えて。連れになにか、耳打ちした。
連れが素早く、胸ぐら掴んでいる男の腕を後ろにねじあげる、ケンはもう一人の男の首筋に刀を当て、なにか言って、立膝をつかせる。一瞬での制圧に言葉もでない、
「ヒロ、そいつの顔殴ってみて?」
「すでに勝負はついて、そうだけど?」
「質問なし!こぶしの当たるとこに、魔力込めて」
「ごめん、何言ってるかわかんない」
「こぶし握って、こっち向けて」
ケンの声は強く、断れるものではない。こぶしを向けると、ケンの刀が素早く向かって来て、こぶしを横切る、指の付け根あたりに、激痛がはしる。殴れ! とケンの声がして、力任せにチンピラを殴る。
殴られたチンピラは、首の骨でも無くったかのように、頭が下がる。連れが手を離すと、床に崩れた。連れが首に手を当て、ケンになにか言う。先ほどの制圧でビクともしなかった酒場の客が総立ちとなり、何人かは足早に店をでていく。
「死んでるって」
「魔力に守られてるんじゃなかったのか? こんなごつい男が、ジャブみたいなパンチで死ぬか?」
「うーん、かなり稀に例外もあるらしいんだけど、一発で気を失うほど魔力使うって聞いてたんだけど、大丈夫そうだね」
「よくわからんけど、こいつが死ぬってわかってて殴らせたのか、こわいやつだな」
「簡単に確認する方法もなかったしな、ちゃんとした確認しに行くか。それと、こっちどうする」
そういって、立膝ついて祈っているチンピラのほほを刀でぺちぺちと叩く。
「すでに降参してますけど」
「ここで逃がしたら、さっき素早く相手してくれた子の家が、燃えるかもよ?」
それは避けたい、こぶしに力を込めると、先ほど切られた感覚がよみがえる。たぶんこれが魔力を込めるということなのだろう。しかし、祈っている相手を殴るか、映画だと許した瞬間襲ってきたりするパターン。それをかわして、なんて実力は俺にはないだろうし。
すこし考えていたが、祈っている男が結構イケメンだなと思った瞬間、その顔にこぶしを打ち込んでいた。床に崩れ、目から少し出血していて動かない。いつもの事だが、殺しの欲求が収まるだけで、なにかしらの充足感が得られるわけではない。
ケンに行くぞと、声をかけられて後をついていく、なにかバーテンに声をかけると、軽くうなずきの返事がかえってくる。最初に感じたガラの悪い酒場のイメージはさほど間違ってはいなかったようだ。いや、これは自分の責任だな、バーテンさんすいませんと、心の中でだけ謝っておく。
店をでると、連れの人が何かケンに行って歩いていく。ケンは別方向に歩きだし、ついていく。
「彼は何て?」
「楽しかったって、こんどはちゃんとした女をおごってくれるって」
「ちゃんとしたって、最初に言ってほしかった」
「さっき殺すの一度ためらったよね?なんで?」
語尾は気にいらないのか、すこし怒りがこもっている。
「なんていうか、自分の殺したいって欲求と、死んだ方が誰かの為になるってのがないと、殺さない……のだと思う」
「俺よか、善人だな……」
そういって、ケンはすこしうつむいた。一人目の事でも思い出したのだろうか、楽しい話ではなさそうだ、無理に踏み込むのはやめておこう。




