魔獣ハンターとして18
式をあげるには、魔力が定着していないと許可がおりないので、俺達は婚約者となるのだそうだ。だからって、他の人としていいってわけじゃないと釘をさされた、信用度はゼロに近い。
「さくら、昨日の晩誰来たの?」
「また別の人が労をねぎらいたいと……。婚約したって連絡したはずなのに……。」
「俺は今、人生初のモテ期なのではないだろうか、あ、ごめん、うそうそ。」
二人で朝食を作って食べる。そんな婚約者との同棲も一週間が経過し、正拳の準備動作を見抜けるようになってきた。そして、その回避方法も発見するに至った、謝るだけだが。正確には、見抜けないとあごの骨が再生不可能な領域まで破壊されそうだからである。
「しかし、もてる人間も大変なんだとわかったよ、これからはイケメンだからってスグに殺すのはやめる事にする。」
「ヒロ、そんな理由で殺しまわってたの?」
「いや一回だけかな? 事故だって、しらなかったんだよ、魔力込めて軽く叩いただけで死ぬなんて。」
「闇の血だからか……、私ね、お父さんと約束したの、戦争以外では殺さないって、ヒロもね、もし誰か殺したら村には置いておけないって。……分かってる、お父さんはあまいよ、いい人ばかりじゃない、だけど、お父さんの願いは聞いてあげたいの、お願いだから、これからはイケメンだからって殺さないで。」
「それって、イケメン以外は殺していいって聞こえるんだけど?」
「お父さんに見つからなければ、私は気にしないよ。」
優しい娘ではあるが、優しい女の子ではない。週一の戦闘訓練では、さくらの本性があますところなく発揮され、村長が娘の心配をしない理由がわかってしまった。
「しかし、なんか極端すぎじゃないかな、村を救ったなんて言うけど、みんなで槍持って戦えば倒せたんじゃないの?」
「半分以上は、確実に死ぬだろうね。あの大きさなら、全滅になる確率のが高い。」
「そ、そんなにか。」
「そうだよ、デカくても動きは速いから、初手で少しでも足に傷を負わせて、動きを抑えるのが手順だけど、早いからそんな簡単にいかない。弓使いが討伐に出てくるなんて事めったにないから、フックのついた鎖とか使うんだけど、力負けするから。」
「それで半分か、そんなのが定期的に挨拶にきたら、たまらんね。」
「めったにこないよ、あの大きさは見たのも初めて。……そういえば、ヒロってば、狼達って言ってなかった、毒が効くとか?」
「そ、そんな事言ったっけ?」
しまった、あせって声がうわずった。そしてさくらは、俺のあやしい動作や言動を見逃したりはしない。テーブルの向かいの席から立ちあがり、横までくるとフォークとりあげ、ゆっくりと皿に置く、向かい合わせに俺の膝に座る、もうこの間合いでは準備動作に気が付いても反応できない。
「別に怒ってない、ぜんぜん怒ってない、すこしぐらいヒロが嘘ついたって、ぜんぜん怒らないから。」
嘘を付いてるのは、どっちかと言えば貴方のほうです、絶対に怒ってる。
「確かに、言いました。」
「なんで嘘つこうとしたの、それって一年前の赤目討伐の時じゃないの?」
「なんでそう、思ったり、するのかなぁ~?」
「狼が群れになるなんて、赤目が出た時ぐらいしか聞かないの! 一年ぐらい前、赤目とその群れが発生して、町がいくつか消え、逃げ遅れた万を超える人達が食われたって。ここいらの村にも討伐軍編成するからって連絡があって、地主の貴族様が頑張ってくれてから、この村は待機だったけど、先発で行った別の村の人達は帰ってこれなかった……。しばらくして赤目を倒したって連絡があって、噂では無名の弓使いが討ち取ったとか、相打ちで亡くなったとか、千本もの矢を撃ちこんだって話も聞いた。」
「それは、それは、大変だったねぇ~。」
「日に千本も矢を撃てる人が、他にもいるんですか?」
「たしかに、千本ぐらいあった……。」
さくらが、勝利の笑みを浮かべている。これは、だめだな、俺は浮気して問い詰められたら、絶対にばれる!
「片腕とばしただけだ、俺が仕留めたわけじゃない……、俺の貢献ってより、損害のが大きいさ……。指示がよくわからなくて、俺が初めてしまったし、数が多くて、矢もかなり外した、もっと当てることが出来てたら、あんなに若い子らが沢山死ななくても良かったんだ……。」
あんな惨劇だったのに、今まで忘れてた。あの真っ赤な地面、会いたい人がいただろうに、生きてやりたいことがあっただろうに、俺なんかが生き残っていい理由なんてなかったのに。
「そんなことない!」
「ごめん、声にでてたか。」
さくらはまた首に抱きついてすすり泣く、もう聞かない、思い出さなくていいと言ってくれた。今は生きていたいと思うはずなのに、必死に生きたいとは思えない。変われないな、自分で終わらせる勇気もないし、生きる努力もしない、ずっとこのままなのだろう。こんな人間は、好きな人の側にはいてほしくない、俺は逃げ出す口実を考えているんだろうか。




