魔獣ハンターとして17
草原で少女とごろ寝して、空を眺める。向こうなら、即逮捕だな。しかし、さくらが思ったよりも歳が上だとすると、大きくなったらお父さんのお嫁さんになる~的な感覚ではないのかもしれない。
「さくら、それで帰ってきてから、何年?」
「ヒロ、もしかして今ので、歳さぐってるのがバレないと思った?」
「そ、そんなわけ。ごめんなさい。」
「あんまり得意ではないけど、逆もできるんだよ。」
「逆とは?」
言葉での回答はなく、少し上目遣いで見上げる。身長差のせいでいつも見上げる形にはなるのだが、一瞬大人っぽさを感じてドキッとする。それを感じ取ったさくらは、すこしいたずらっぽい笑顔をみせる。
「襲いたくなる気持ちも分かるけど、あと3年は待ってね~ダーリン。」
「……もう何がとか聞かないけど、3年では足り無さそう。胸がか?」
素早く馬乗りなり、さくらの拳がほほに突き刺さる。横になった状態から、どうやってこんな事できるんだろうか、一瞬意識が途切れそうになり、その後に強烈が痛みがやってくる、と言ってもこれぐらいなら明日の朝には治ってしまうのだろうが。
「ごめん、胸の話はダメ。ちょっと手がでちゃう。」
「ちょっとでこれか……、いつか首取れる、次は先に言っといて、せめて女の子ならビンタぐらいにしてほいいかな。」
「ビンタ好きなの?」
「ご褒美みたいに言わないで……。それで、その3年はどんな意味があるん?」
「うーん、説明が難しいんだけど。お母さんからもらった魔力が消えて、人も殺せる普通の魔力に変わるんだけど、切り替わるのに時間が結構かかるのです、人によってはすぐ変わる人もいるんだけど、私はちょっと長いほうなのです。」
「人殺せるって……それで3年?」
「それは……、ヒロの闇の魔力に、いまの私じゃ耐えられない……から。」
「俺は、悪魔かなにかそっち系の生き物ってことなのか?」
「そうじゃないんだけど、いや、たぶん違うと思うんだけど、ヒロの血はかなりの毒みたいなのね。実はね、こないだボロボロになったとき、傷縫ったりしたの私も手伝ったんだけど、ちょっと舐めちゃったみたいで、倒れたの、大丈夫、数時間でちゃんと起きたし、なにも問題ないから。」
「まてまて、俺ってそんな危険物なのか?」
「まぁ、そうかな、気を付けてはいたんだよ、手を洗ってるときに、ちょっと顔に水がついたから、こう手で顔を触った時に、口にあたったんだと思う。」
「それだけで、意識飛ぶほどなのか。小型の狼達は、急所に当たらなくても動きが鈍くなるのがほとんどだし何かあるとは思ってたけど、やっぱり毒なのか。俺のそばにいるのって、あぶないんじゃないのか?」
「大丈夫、大丈夫、そんなに出血しないでしょ。」
「包丁で起こされたりしなければ……。」
「誰のせいですかね?」
「すいません、もう言いません……。しかし、闇方向の魔力持ってる人間はみんなこうなのか?」
「どうだろう、他にもヒロの血を舐めた人がいたんだけど、舌がすこししびれたり、強いお酒みたいに喉が焼けるみたいとか、色々だったらしい。」
「無茶するな……。」
「普通に魔力ある大人なら、大抵の毒では死なないし、舐めたっていっても、水でかなり薄めてだから。私が倒れなければ、みんなもそんな事しなかったと思う。」
「確かに、原因が分からなければ対処できないか。」
「闇の魔力って、めったに持ってる人いないから、どんな力があるのか分からないのよ。噂はいっぱいあるけど、どれもこれも怪しいのばっかり、でも血が毒なんて噂は聞いたことない。」
「吸血鬼でもなければ、血なんか飲まないだろうしね。もしかして、いるのか? この世界には?」
「物語ではでてくるけど、いないんじゃないかな。」
「とことん中途半端だなぁ、いてもこまるけど。」
「人じゃないけど、魔物は血を吸うらしいよ。」
「魔物って、狼とか熊とか?」
「他にもいるけど、あいつら実際に食べるのは少しだけで、血から魔力を取るのよ。だから魔力が多めの人間を狙うんだって。」
「そうなのか、だから血に反応するのね。俺もこんど仕留めたら、あいつらの血を飲んでみるかな。」
「だめだよ、魔物の血も死んですぐは毒なんだよ、お肉だって少しお水につけて清めてから食べるんだから……。ヒロなら大丈夫なのかな?」
「とりあえず、食べるときはよく焼いてから食べるよ。」
「そうして……ください。……ヒロ、本当に本当に今更なんだけど、ずっと”おままごと”でゴリ押ししてきたけど、これからも、その……村に残ってくれる?」
「ゴリ押しの自覚はあったのね……。」
「そりゃありますよ、いつまでも幼い女の子を演じるのも無理だし、いつかは言わなきゃって。」
「いや、今でも十分に幼い女の子ですけどね……、さくらに追い出されるまでは、いるつもりですけど。いいかな?」
「もちろん、いいですよ。……それで、私のことは?」
「ことは?って、なに? ずっとご主人様として忠犬の立ち位置でってとこ?」
「ペットじゃないって! ほんとにたまにかわいいけど、そうじゃなくて。お嫁さんとして、妻として見てくれるのかなって、今朝はちょっと本性でちゃったけど、なるべく控えるから。」
「本性なのかよ、しかも控えるって……。」
なんだか突然恥ずかしそうに目をそらす、胸の上に座ってる状態では体ををひねっても横顔までは隠せない。なんで女の子の照れた顔は、こんなにも可愛いのだろう。
「ヒロの中では、夢の世界では歳の差は重要みたいだし、私はそんな無理強いできるほど偉い人じゃないから、ヒロが嫌だっていうなら……。」
そう言うと、ボロボロと涙を流して泣き出してしまった。偉かったら強制するつもりだったのかとか、色々と考えなければ行けないことが沢山あるのだが、今はいいか。上半身を起こし、細い体を抱きしめる。
「次はどうする? 二人で指輪でも買いにいくか?」
泣き顔のまま、首に手を回し抱きついてくる、その腕は剣なんて持ち上がりそうにもない、それでも精一杯抱きしめてくれる。そしてしばらく、耳元に心地よい泣き声が続いていた。
「ヒロ、これはエッチな体勢だよね、固くならないの?」
「やっと泣き止んだと思ったら、さっきの言葉取り消したたい。」
「アハハハハ、照れ隠し、ありがとうございます、よろしくおねがいしますね。」
そう言って、また目をそらしたり、髪をいじったりと、まったく隠せてない照れ隠しを続ける、どうしよう本当に襲ってしまうかもしれない。
「ヒロまって!」
固くなってはいないが、さすがに身の危険を察知したのか、さくらが手を出して俺を止める。
「式まで待ってとか言いたくないんだけど、エッチはだめ、キスもね、たぶん私死んじゃう。」
「大丈夫、俺もそこまで見境無く襲ったりしないから。……しかし、こんなに歳離れてるの大丈夫なのか、そもそも正確に何歳差かわからないんだけど……。」
「……12です……」
「小学生か! いやごめん、わからんよね、俺は28だったけど、もう一年ぐらい経ったのか、いやほとんど年取らないならずっと28って言えばいいのか?」
「そこは29でいんじゃない、見た目はどんどん近くなっていくんだね、楽しみ!」
そう言ったさくらの笑顔は、色々な問題を吹き飛ばすのに十分な威力をもっていた。一から村人として人生やり直す、普段なら出来ない大きな決断も、とても簡単にできる。そして、そんな心の状態を幸せと言うのだと実感していた。




