魔獣ハンターとして16
さくらが、呼吸を整え近づいてくる。
「どうだった?」
「すごい、綺麗だった。」
「そっか、良かった。……ヒロ手のひらみせて。」
「こうか?」
突き出した手の左下に見えていたはずの曲刀がわずかな風を切る音の後、左上に見えている。違和感を覚えて、右手をみると細い赤ペンで書いたようなバツ印が大きく書かれている、指で触ると血がにじむ、カミソリで切った時のように、傷と認識して痛みが伝わる。
「子供に、魔力は無いんじゃなかったっけ?」
「何歳だと思ったたのかなぁー、……女の子に歳聞くのはダメだよ。子供に魔力が無いわけじゃないんだよ、母親からもらった魔力がちゃんとあるの、剣に込めたりとか外には出せないけど、体に流れる道は、子供の時から鍛えられるんだよー。」
「道?」
「血の流れと一緒かな、全身をめぐらせて筋肉の限界まで引き出すの、魔力の属性もあるから私はスピード重視、見た目はか弱い女の子のままなのです。」
「か弱い……、さっきの剣はほとんど見えなかったけど、何者?」
「かわいい妻に向かって、何者とか言わないの。」
そういって、足をひっかけ押し倒す、これは柔道の内掛けか。さくらも、横にねころがり俺のひげを撫でる。
「いまさら、強い子って気が付いても、婚約解消はできません。」
「いつ婚約したのか記憶が曖昧なんですけど……、剣はどこで教わったの。」
「町の兵学校だよ、5歳の時に村に来た先生が、この子は強くなる! とか言ってかなり強引に連れていくの。最初はずっと泣いてたけど、もうその頃にはお母さんもいなかったし、先生が新しいお母さんみたいでね、褒めるの、すっごく、さくらは強い、当たりだよーってね。お父さんもたまに会いに来てくれたし、5年頑張った、それで帰ってきた。」
「かえって来た、の?兵学校って、そのまま兵士とかになるんじゃないの?」
「色々かな、村の地主である貴族様が決めるのよ。私が村に戻って、みんなを鍛えれば、村を守る為に衛兵をださなくていいし、戦争になったら強い兵隊をだせるからってね。」
「俺も、そこにいったら剣が上達するのか?」
「無いね、才能が全くない。」
「ひどいな、なんでわかるのよー。」
「先生が私が強くなるって、分かったみたいに、自分が得意な物って、なんとなく判断ついちゃうのよね。でも外れもあるって先生言ってたから、逆もあるかも。でもヒロは無いね、努力もしないでしょ?」
「ひど、……いや確かに、好きではないものを頑張るのは苦手だけれども。」
「ヒロには弓があるでしょ、あんな重たい弓を軽く引いて外さないなんて、ちゃんと魔力の道が出来てるんじゃない、無理に苦手な物やらなくてもいいよ。村のみんなも得意なものを担当してもらってる、剣と槍、あと剣盾かな、まぁ強制だけどね。」
「そ、そうなのね。しかし、剣もすこしは練習したのに、さっきはさっぱり見えなかったよ。」
「フッフッフ、あれは手品みたいなもんだよ、手を顔の前に出したら相手の手元はほとんど見えないでしょ、見えないところで刃を動かせば、あ、勝てる気しない、やめよってなるでしょ。」
「すごいな、兵学校っていうか、暗殺者養成所だな。」
「そんなことないって、私だけ、体が小さかったから、相手を油断させる事ばかり考えてたの、先生も勝てばいいのよ! って褒めてくれたしね。」
「その先生いいね。」
「そうでしょ、そうでしょ。ね、ヒロ立ってみて。」
草をはらって立ち上がる、正面にさくらが立つと、さくらの背が伸びている! いや、まだまだ俺よりはかなり小さいが、昨日より頭一つぐらいのびたような。
「どういうこと、なんか背とか年齢を変化させる魔法?」
「そんなのないって、いや、魔法は無いっていっちゃダメなんだった、今は見つかってない。これも手品よ、ひろ真正面見て立ってて、顔をは動かしてもいいよ。」
そう言って、さくらはゆっくりを俺の周りを歩く、一周してもどってくると、背がちっこくなっている!
「いい反応。でも魔法じゃないよ、ちょと膝まげて、首をかしげるだけでイメージ変わるのよ。あとは、なるべく会うときは、背の高い人の横に立つとかね。お父さん背高いし、あとは幼いしぐさをまぜてあげれば完成。」
「自分の目が信じられん、種明かしされても自分がアホとしか思えない。」
「確かにそうかも、でもね素直が一番。」
そう言って俺の胸に顔をうずめる。なんだろう、魔法としか思えない、大きい方のさくらは、小学生高学年から中学生ぐらいに見えなくもない。
「なぁ、剣の達人からみて、俺が弓使いってすぐわかったの?」
「見てすぐには分からなかったけど、違和感があったかな。剣は飾りっぽい、でもなんかいいかも~って匂いがした。」
「匂いね、それって本当だったのか、ふざけてるだけだと思ってたよ。」
「ふざけてないよ、ヒロに会うまでは、すごい剣士と恋に落ちるとかいいなぁーって思ってたんだよねー。私より強い人なんて、かなりいるから、でも、なんか荷物の間で寝てるの見たら、子犬みたいで、かわいいなぁって。」
「30近いおっさんつかまえて、かわいいって、泣ける。」
「よしよし、匂い以外も好きだよ。本物の弓使いって分かっても、本当に戦ってくれるなんて思って無かったんだ。弓使えるのに、ぜんぜん威張ったりしないし、いたずらしても全然怒らないし、あっさりこんな村なんて制圧できるのに、村のみんながヒロを殺そうとしても、ヒロは武器を置いてくれた、勘違いだったけどね。」
「残り2本しか無かったし、敵とは思えなかったんだよねー。しかし、一人で制圧って、弓だけじゃ無理でしょ。」
「一日に一本しか撃てない普通の弓使いなら無理だけど、252本撃っても準備運動みたいな顔してたら、もう喉元に刃物押し付けられるぐらい怖い。」
「数えてたのね、喉に刃物って極々最近に体験した気がするよね。」
「いつあったのかな? 気のせいじゃない? もしくは、なんか悪い事したからじゃないかな。」
「そうだね、気のせい、気のせい。」
「ヒロは支配したーい、みたいのないの?」
「無いかなぁ、一回リーダーというか隊長ぐらいかな、やった事あるけど、かなり必死だったしな。慕ってもらえるのは良かったけど、それに答えられるほどの人間じゃないから。てか、そんなに野望があるのが普通なのか?」
「力がある人なら野望の塊みたいのがおおいかな。兵学校とかだと、領主目指すとか夢見てる子ばっかりだし。村の子でも、戦争で活躍して貴族の私兵になるんだとか平気で言うしね、私にも勝てないのに、びっくりするよ。」
「領主って、なったらいい事あるの?」
「全部自分で決めれるし、王様以外に頭さげなくていい、嫌いな奴はすぐに処刑!」
「すごい暴君だな、それって普通の領主なのか。」
「普通なんじゃないかな、優しい君主ってすぐ死んじゃうって聞くし。」
恐ろしい世界、いや時代なんだろうか。よく考えると、俺ってば今まさに領主様から処刑されそうになっている、ここの領主ではないけど。
「領主って簡単になれるの、お金で何とかなったりする?」
「お金はよくわからないけど、かなりの戦果を連発させていけば、自分の兵隊も増えていって、引退前にはなれるかも。」
「戦争で活躍ねぇ、そこまでして、なりたいものなのかねー。」
「贅沢出来るし、ハーレムとか作れるからね。」
ハーレムに反応すると、さくらの目が暗殺モードに素早く切り替わる、聞き間違えたと、無理な言い訳で誤魔化す。向こうにいた時も、少年兵のニュースは聞いたことがある、しかしそれは別世界の話だった。翌日には忘れてしまった事のつけを、目の前の少女が払っているような気がして、少し心が痛む。




