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夢者  作者: 高島 良
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魔獣ハンターとして15

 小さな唇がほほに振れ目を覚ます。かわいい満面の笑みが、自分を見ているつられて、俺も笑っている、鏡は無いが笑っているんだろう、朝日が差し込み晴天を告げている。


「さくら。」

「なーに、旦那様。」

「お願い、ロープほどいて!」


 全裸で縛られたままの朝はそんなに清々しいものではない、誰かに助けてほしいがこの格好を見られるのは避けたい。


「ずっとこのままでも、いいかなって思うの、だってずっと私の好きにできるし。」

「朝にはほどいてくれるって。」

「今日の朝とは言ってない。」


 また声が低く、棒読みになる。そして手にはフォーク、さくらが持つと大きく見えるが普通の大きさだ、突然しゃがみ視界の外へと消える。しばらく静寂が訪れ、足元、正確には足の間に何かいる、そしてフォークで刺してはいけない物をつつく。


「さくら、フォークでそんなことするのは、良くないと思うんだな、うん。」

「今朝も元気だね~、このサイズなら、立派なホットドックできるよね~、二人分できるよね~。あの姉妹の分の……。」


 怖いよ怖いよ、俺はホラー苦手なんだよー、バイオクリアするのに2か月かかるやつなんだよ。映画なら、即停止して二度と続きを見ないシーンだが、現実はそのまま再生中、フォークが撫でてはいけない物を撫でている。


「さくら~、お腹すいたなぁ~、一緒に朝ご飯たべようよ~。」

「そうだね。」


 機嫌よさそうな声と共にベッドを降りて、皿を持ってもどってくると、皿を俺の胸の上に置き、さくらは腹の上にそっと座る。今日の朝ご飯は、パンとスクランブルエッグとソーセージ、すでに作ってあったようだ。


「私がたべさせてあげる、なにから食べる?」

「まってまって、さくら、それってさっきのフォークだよね?」

「そうだけど?」

「さすがに……、それは……。」


 さくらは、フォークを壁に勢いよくなげつけ、金属が転がる音が部屋に響く。しばらく睨み付けると立ち上がり、ベッドからおりる。戻ってきた手には、包丁が握られている。当たり前のように、また腹の上に座る。


「何から食べますか、旦那様。」

「……それじゃ、パンか……。」


 言い切る前に、木の皿を貫きそうな勢いでソーセージに包丁が突き立てられる。


「はい、あーん。」


 包丁に突き刺さったソーセージが近づいてくる、こんな、微塵も好意を感じない”あーん”は初めてだ、やる気のないキャバ嬢ですら、かなりましだ! などと言えるはずもなく、何とか口を切らずに受け取る、その後も恐怖の朝食は続き、すこし唇を切る程度で朝食は終了。さくらは木の皿を派手に床になげつけると、胸の上へとゆっくりと移動してきて、不敵な笑みで見下ろしている、シェフが献立を考えるように包丁を手に持って。


「さくら、そろそろロープを……。」

「ひげそってあげようか?」

「ひ、ひげ、いやいいよ、いいよ、そんな、かっこつける相手いないし。」

「わたしは?」

「わたしって、お前……」

「お前っていうな!!」

「わかった、わかった言わない、ひげはいきなり剃ると痛いんだよ、お湯であっためたりしてから……。」


 包丁が首筋に押し込まれ、ゆっくりとあごを上がってくる。うまく剃れず、ご機嫌ななめな様子。


「さくら、カミソリのほうがいいんじゃないかな。」


 その提案は、あきらかに失敗、目に怒りの炎がみえる。わかってるけど、どうすればいいんだよー。こんなの無理ゲーじゃねぇか、浮気がばれたら何が正解なんだ、土下座か、いや無理だ今姿勢の変更は禁じられている。姿勢、そうだよね、謝罪する相手が大の字で寝てるって、怒りが増すよな。あぁもうやだー、家帰りてー、いや、今の俺に帰る家は無い、近い意味で探せばここが家だ。


「さくら、トイレ行かせて、お願い、終わったらまた縛ってもいいから?」


 すばらしい、これだろ、これで最終戦闘態勢である土下座へと移行できる。しかし、さくは尿瓶を持ってもどってくる。


「さくら、いや、それは動けない時であって、今はさすがに。」

「ずっと看病してる間、わたしがやってたんですけど。」

「あ、ありがとうございます。」


 だめだ、親戚のおばちゃんに、こんなに大きくなって~、おむつ変えてあげたの覚えてる~。などと、結婚式で羞恥プレイ食らわされるあれだ。名案だと思ったが、すばらしいカウンターで返されてしまった、ちょっとこの状況を楽しんでいる自分がいるような気がする、俺はアホなんだろうか。


「まって、まって、さくら、男の子は、その朝の状態では、下を向くとわぎゃぁぁぁぁ。」


 人間の腕に可動域というものがあるように、男子のある部分には、状況によって可動域がせまくなるものがあるのだ、無理やり曲げたりしては絶対いけない。


「さくら、ほんと、もう許して。」


 泣きが効いたのか、さくらがロープをほどいていく、やっと終わりかと思ったが、首にロープが巻かれる、この縛り方は。


「引っ張ると、締まる、教えたよね。」


 鬼教官かお前、あ、お前とか言ってはいけない、さくらがロープを引けば、更に首が締まる、そんなに素早く首の後ろにある結び目はほどけない。とりあえず今はトイレへ、扉を閉めようとすると、さくらが足で止める、仕方なくさくらの目線を背中に受けながら済ませる。

 振り返ると、ロープの端が床に転がっている、いきなりの解放に驚くが、とりあえず首のロープをはずして、部屋に戻り服を着る。

 外にでると、さくらが剣を振っている、自分の剣かと思ったが、よく見ると細い曲刀だ。その動きは演舞と言うのが正しいだろう、素早い流れるような動き、あっさりと宙を一回転したりする。芸術にうとい人間だが、その舞は学芸会レベルの物ではない、完成された物なのだろう、見ているだけで胸が熱くなる。

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