魔獣ハンターとして14
何も言わず、俺の火葬の準備が進められていく、何故この世界の女性はここまで極端なのだろうか、本気で好かれていれば、これぐらい普通なのだろうか、日本の大勢の行方不明者の原因はこれなのではとか、現実逃避している場合ではない。
「さくら……。」
「いいわけ……、聞かない……。」
声が低いし、ほとんど棒読み。すげー怖い、生きてきた中で一番の恐怖を今まさに味わっているかもしれない、味わうって、おかしいよね。実際味なんてしないし、いやーだから、現実逃避している場合じゃないだってば。
「考えてみれば、賞金稼ぎに首を切り落とされるよりか、だいぶ幸せかもしれないな。村長や、村の人や、さくらに出会って、色々とイベントもあって、楽しかった土地で、ベッドの上で最期を迎えられるなんて、ここに来る前なら、思いもしなかったしな。」
「……しなさいよ、命乞いぐらいしなさいよ! なに笑ってるのよ。」
「いや、嬉しくてさ。こんなに想われてるって実感すること、今まで無かったなって。本気で俺、変われるかもしれないなって、さくらの気持ちに答えられるように、生きられるかもしれないなってね。」
「ちょっと、ドキドキした、ムラムラしたかも。」
「いや、それは色々はやいだろう。」
「わかった。」
そういうと、さくらは俺の胸の上で丸くなる。
「ゆるしてくれるなら、ロープをほどいて……。」
「ゆるしてない。」
「そか、ちょっと寒いし、なにかかけてもらえると……。」
「私がいれば、大丈夫。」
「そうだな、あったかいよ。」
「……ヒロ、もうしない?」
「しないよ、さくらが側にいてくれるなら。」
「わかった、朝になったらほどいてあげる……。いま、チョロいなって思ったでしょ?」
「思ってないよ、うんうん、全然思ってないよ。」
「次は、切り取って、ホットドックにして、相手の女に食べさせてるからね。それと、明日からここで寝ます。」
「わ、わかりました。」
鬼嫁か、これがリアル鬼嫁なのか、どの家も嫁はこんなに怖いのだろうか。結婚したら人生はそこで終わりだと、真顔で言っていた先輩を思い出す。結婚なんて実感がわかない、アンとの生活、いや半分監禁のような生活以外、女性と三ヵ月以上続いたことがない、さくらに飽きられるのが先か、ホットドックが先か、真面目に生きるってどうすりゃいいんだ、誘惑に勝つにはどうすればいいのだろうか。
そんな俺の考えを見抜いたのか、さくらがこちらを睨んでいる。しかし、その目は今にも泣きだしそうだ。
「それと……それと……簡単に、命をあきらめないで、お願い……お願いだから。」
そういって、声を押し殺してしばらく泣くと、小さな寝息を立てて、天使の寝顔を見せる、浮気じゃなくて怒ってた理由はこれだったのかもしれない。反則だろ、小学生のくせにこっちの気が付いてないとこまで指摘するとか。不安の元は、酒も女も素直に楽しめない事なのかもしれない、魔物がいなくなったと心底喜ぶ人達から、俺は一回り外に立ってその輪の中に入れないでいる。人を愛し必死に生きる、大切な仲間とすごす、そんな人にとって当たり前な事が、俺にはとんでもなく疲れる。それでも、逃げ出したら、もうこんな機会は訪れないのではないのかと、とりあえずしがみついている。俺はさくらのように自然に笑っているのだろうか、幸せなはずなのに不安だ。今にも思いもしない方向へ自分が壊れてしまいそうだ、ここにいたいのに、さくらや村民に嫌われる前に、離れたいとも思う。矛盾した考えがめぐり眠りに落ちていく。




