魔獣ハンターとして11
まだ聞きたい事もあったのだが、眠気に耐えきれず意識が途切れてしまった。さくらに頼んでビー玉を持たせてもらい、必死に思いだしつつメモしたが、かなり忘れているだろう、いつもの事なので気にしないでいよう。
一週間ほどは、日に1時間も目が覚めずひたすら寝る、寝がえりせずに真っすぐに上を向いていると、背中の痛みで目が覚める、しかし眠気に負けて数分でまた寝るのを繰り返した。やがて起き上がれるようになり、歩けるようになるまでにさらに一週間かかった。復活まで時間かかりすぎだな、赤目の時もかなり寝てたみたいだったし、それでも完全に治るのだから、やはり元いた世界ではないのだろう、回復呪文覚えたい、誰かに聞いた気がするが、冷ややかな眼差しがかえってきただけだった。
久々に小屋から出ると、目がしみるほどの青空がどこまでも続いている、いつもは空なんか見ないのに、見えないと何故だか見たくなる、草原に寝転がって視界のすべてを青空で埋める、こんなことするの、何年ぶりだろう、いつやったかは覚えていないが、心が満たされると感じたはずだ。もうすこし幸せだと感じる時間が多ければ、まともな人間に成れたのでは思う。そうそう、浮気したり悪いことするのは、心身喪失的なあれで、減刑を! いきなり頼まれても青空も困るだろう、さくらの目が不審者見つけましたと、物語っている。
村長が荷馬車を引いてきて、それに乗せられて山道しばらくを登ると、川の脇から湯煙が立ち上がっている。温泉なんて冗談だと思っていたが、本物のようだ。まだ節々が痛むが、温泉で復活とはお約束だなと、服を脱ぎ足を付けるが、熱さに驚きすぐに足を引く。手をすこしつけてみると、しびれる、これは川とか湧き水の時と似ているが、更にひどい。
これは我慢できる痛みではない、温泉でほっこりしたいとは思うが、今日はまだ全快したわけじゃないしやめよう。しかし、しゃがんで不安定な体勢に容赦ないさくらの蹴りが入り、温泉に落ちる。
「さくら、やめやめ、傷にしみるから、今日は。」
「悪魔め!それは、大地が清めた水がお前の汚れを清めているのだ!」
「いきなり、中二病か!?」
必死に湯から上がろうとする回復中の病人を容赦なく蹴り落とす。現在の体力ではこの小悪魔に太刀打ちはできない、諦めて湯に入る、体中に痛みが、顔が引きつり変な悲鳴がでる。
「ヒロさん、その痛みは、属性のせいかもしれませんな。」
ひとり、ほっこりとしている村長が、ゆったりと説明を始める。
「弓使いの影の属性は、癒しの力である光や水とは相性が良くない。」
「相性がちょっとぐらいの、痛みではないのだけど。」
「詳しくは知りませんが、影は魔物に近いので、光の力は苦手なのですよ。」
「俺は魔物か、いやちょと慣れてきたけど。」
しばらくすると、すこしピリピリするぐらいまで落ち着き、体が芯からあたたまっていく。
目の前をさくらが泳いでいく、波がくると痛い、風呂で泳ぐな! と思ったりしたが、なんか自分が年よりになったみたいでやめた。そんなことより、全裸をみられても何ともないのか? いやいや、パンツは激怒するのに?
「さくらが、全裸で俺の前にいても、父親として気にならないのか?」
「ムコだしいんじゃないのか?」
「それは、色々策略的なものがあって……、本当に結婚させる気なの?」
「さくらはずっとその気だぞ。」
「親として、歳が違いすぎるとか、まだ若いとかあるでしょ?」
「無いと言えば嘘になるけど、好きな相手と長い時間を共にしてほしいしな。」
「それは、なんか別の話か?」
「まぁそうかな、俺の嫁は、さくらを生んで数年して病気で亡くなった。もっと早く知り合えていたら、もっと一緒にいればと、いまでも思う。だからさくらには、思う存分好きな相手と一緒にいる時間を作ってやりたい。」
「分かる気もするけれども、なんていうか娘を取られたー、みたいな嫉妬心的なものはないわけ?」
「大人を言い負かして、子供達は拳で従え、包丁で父親起こす娘だからな、逃げ出さない男が現れたら、協力するしかないだろう。」
「いま逃げようと思ったかも。」
それを聞き逃さなかったさくらが、悪そうな笑顔で近づいてきて、お湯をかけて、俺があげる悲鳴を楽しんでいる。村長をそれを見て、楽しそうに笑っている、すこしいびつだが、楽しい時間、温泉の温もりがしみるように、体中で感じる、かなりの痛みもだが……。
帰り道は、問題なく歩けた。すごい回復力だ、回復の泉となずけてもいいだろう、あの痛みが無ければ完璧なのだが。村長が言うには、魔力の量がおおければ、温泉の回復効果も高くなる、らしい。夢者は魔力おおいって話だから、治るのが早いのか、いやいや、もうあんなボロボロになるような戦いは勘弁してほしい。




