魔獣ハンターとして5
4mはあるだろうか、巨大な狼が横たわっている。この狼も油断しなければ、こんな事にはならなかったのだろう、子供達が歓声を上げて倒れた狼へと近寄っていく。そうか体格は半分以下の相手に警戒なんていない、子供が一人でナイフを持って目の前に立っていても、自分が殺されるなんて思わない、俺も油断するんだろう。
残りの問題は、残り2匹の小型といいたいところだが、今は槍を持って集まってきた村人達だ。2m近い槍を空に向け、微妙な距離を取り、手に力を入れ俺の次の動きを監視している。
ここでやるのか……。矢は残り2本、見える範囲で30人はいる、後ろにも同じだけいるのだろう、矢に手を伸ばしたら一斉に60本の槍が迫ってくるのだろう、身軽な主人公とかだったら、ひらりと宙に舞い、重なった刃の上に立ったするのだろうが、今は体が重い、魔力を使ったせいなのだろうか、通常時でも30センチも飛べるかどうか。たった2本の矢で何かできると思っているのだろうか、何発撃っただろうか、夢者だともばれただろう、考えれば怖いな、もし手から黒い光を放って人を殺せる他人がいたら、逃げるか、大切な人を守る為に殺すしかない。守る為に殺す、スケールの違いだけで、戦争と変わらない、人には話し合いで解決できないこともある。結構村に貢献しただろうに、悲しく無いと言えば嘘になる。
もう覚悟が出来ているようだ、囲む村人達の目から不安そうな気配は消えた、合図をまっているのだろうか。一人でも道連れに、なんて思わない、彼らを敵とは思えない、家族や仲間を守るつとめを全うする真面目な人達なのだ、どうせなら子供達のいないところでやってほしい。弓を地面に置いて、ベルトを緩め矢筒を落とす、ゆっくりと小屋へ向かって歩く、村人の輪が開き、その間を歩いていく、どうやら追いかけてはこない。まだ終わりではないようだ、気分が落ち込む、もう全てどうでもいい。
小屋に戻るとベッドに倒れこむ、体が重いこのまま目覚める事はないのだろうか、疲れを感じるのに眠気が訪れない。
しばらくして、さくら入ってきてが無言で酒ビンを置く。昨日は、飲み過ぎだと女房気どりで取り上げていたのに、一日でずいぶんかわるものだ。ベッドに腰かけ、さくらの背中に声をかける
「最後の酒か、討伐の手柄たてた人間にずいぶんひどい村だなぁ。」
出ていこうとした彼女はしばらく立ち尽くすと、戻ってきて目の前に立ち。
「怒らせようとしたって、嫌いになったりしないんだから。」
目を潤ませて、まっすぐに俺の目を見つめる、
「そか……。さくら、弓と矢2本でいい返してくれ、残りの2匹を仕留める。」
さくらは、すこしうなずき、出口に向けて歩きだす。
「さくら、あと二つ。その時がきたら、君は見るな……。それと、俺を探して人がきたら、魔獣にやられたと伝えてほしい、詳細はまかせるよ。」
アンが、自分の手配書で俺が死んだとは、考えてほしくはない、謝りに戻れなかった事を、これ以上悔やむ事もなくなるのだ、いいことじゃないか。
さくらは、うなずきもせずあるきだし、部屋を出ていく。これでいい人生だったと、最後の時に思ったりするのだろうか、そんなことはのぞんでないが、やることは決まった、何も無かった頃よりかはだいぶましだ。
何か物音がして目が覚める、外はまだ暗い、左手を見るとまだ傷が消えていない、体も昨日よりましだが重く感じる、まだ魔力がもどっていないのだろうか。やらない理由をさがしても、どうせ行くのだ思い悩むのはやめよう。
部屋の扉を開けると、矢筒と弓が立て掛けてある、矢は2本。矢筒にちょうどよいサイズのナイフが脇についている、包丁よりも大きいのでナイフと呼ぶにはかなり大きい、しかし矢を構える間も刃物が腰にあるのは安心だ、普通の剣を腰にさしたままでは、矢は撃てない。本当に気がきくやつだ、平和な世の中なら出世するんだろうに。もう会え無いかと思うと、すこし目頭があつくなる、大きくため息をつく、名もないハンターが死ぬだけだ、さくらもすぐに忘れる。




