魔獣ハンターとして3
街灯の外へ行くと言うと、さくらは猛反対、いたずらされたと村中に言いまわってやると言い出すしまつ、頭がいいのも考え物だ、仕方なく一緒に行くことに。
「ヒロ、おとりなら可愛い女の子のほうがいいとおもうんですけどー!」
昨日、子供は襲われない事もあるって自分で言っただろうが。とりあえず街灯横から叫んでるさくらは無視して左手でナイフの刃を掴み、素早く引き抜く。強烈な痛みと共に地面に血が流れる、素早く弓を構えるが狼は出てこない。あっさり出てきても困るのだが、街灯から近いのだろうか、30m程は離れたのだが、効果がどれほどでるのか、匂いも消すほどの効果があるのか不明だ。昼間に街灯を見ても俺の目には光を放っているのかどうかよくわからない、夜でもさほど強い明かりではない。もう少し離れてみようと歩きだすと、高い笛の音が響く。さくらが笛をくわえ大きく顔を横に振っている、どうやらこれ以上は看守がゆるしてくれないようだ。いったん街灯まで戻る。
「さくら、パンツ脱げ」
「は、はぁ! な、なに言ってんの!!」
いつもの笑顔が消え、この世でもっとも汚い物を見る目線が突き刺さる。
「ごめん冗談だ、なんか布切れが欲しい。」
「冗談ですまないし、次言ったら、寝てる間に燃やすからね。」
目が本気だ、少女に下ネタは通じない、こんど入れ墨でもいれておこう。怒りながらも、いつも右腕にまいている、赤い布をほどいて目の前に押し出す。
「いいのか、俺の血を染み込ませるんだぞ、なんかもっとぼろい布でも。」
「いい! そのかわり、仕留めたらキバ頂戴ね。」
うなずいて、赤い布を受けとる。思ってたよりも荒い布だ、いつも巻いているぐらいだから大事な物なんだろう、血を染み込ませるだけなので、なんでもいいのだがある意味パンツより重い気がする。かといって、いまさら変えてくれともいえず、先ほどの位置にもどる。ここは村の入口から街道へつながる道、村に入ってからもしばらく平坦な直線となっていて、ここに現れてくれるなら300mは稼げるし、まっすぐ走ってくれる、道の両側で村人達が槍を持って待機すれば、一匹は仕留められるはずだ。出来れば大型を先に仕留めたいが、これは運しだい、姿を現したのが一匹であればそいつから仕留める。
ナイフで手を切り布に血を染み込ませる、赤い布が黒く変わっていく。弓を構えようとした時に、背後で物音がする、咄嗟に弓を構え矢を引き絞る、両手に熱を感じ驚いて右手が緩み矢が道の脇にある木に向けて飛んでいく、一瞬だが息苦しさを感じる、これは赤目の肩を吹き飛ばしたあの時と似ている、低い音が吸い込まれる不思議な轟音の後、木が派手な音を立ててゆっくりと倒れる。
「ヒロ、何したの?」
いつのまにか横まできていたさくらに声をかけらるまで、驚いて固まっていたらしい。
「ここにきて、必殺技を身につけたようだ。」
「自分で言ってて恥ずかしくないの、かな?」
「うん、すごく恥ずかしい。」
小学生に諭されて冷静になる、そういえば俺を逃がしてくれた兵隊さん、名前忘れたけどあの人が、剣の鞘には小さな刃がついており、そこで手を切り血でつなぎ剣に魔力を送り破壊力を上げるとかいってた気がする。正直剣は俺にとっては飾り程度なので、ほとんど聞いてなかった。この弓もグリップの上にほんとに小さな刃がある、しまう時に一度指を切って、作りが雑だなとおもったりしたのだが、よく考えれば職人たちが気が付かないはずはない、わざとそこにあるのだと考えれば納得がいく。
感覚を忘れないうちに、左手で弓を押し、矢をつがえる、矢を引き絞った時に左手の甲で弓を押す、親指は少し浮く、少し上にずらせば刃に当たり血がにじむ、両手に熱を感じ矢を放つ。
先ほどほどではないが、着弾場所の木から低音が響く、歩いて見に行くと、焦げた匂いが漂い5センチほどの穴が開いている、半分ほど入った矢が刺さっている、矢を抜いて中をみると真っ黒に焼け焦げている。自分の魔力があとどれくらい残っているかわからないが、全部の魔力を使わなくても、マグナム弾から対戦車ライフルぐらいまでは撃てるのかもしれない、少し練習すれば使いこなせるだろう。
一発目の木をなぎ倒した矢は、その先の茂みに3m程の穴をあけ、岩に数センチ刺さって止まっていた。なんとか引き抜き、村へともどる頃には、少し薄暗くなっていた、街灯の横を抜け村に入ってしばらく歩くと、さくらがシャツを引っ張る。可愛い奴と、振り返ると青い顔をして、歩いてきた方角をさす。そこには、大型の狼が先ほど血を染み込ませた布を嗅いでいる、どうやら匂いに反応するのは正解だったようだ、だとすると無風状態、匂いを追って村に入ってくる、どうやら必殺技の練習する時間は無さそうだ、二発試し打ちできたので幸運としよう。
「さくら、笛を吹け、3回だ」
朝に村長と打ち合わせして決めたものだ。元々2回鳴ったら魔物発見家に入れの合図だった、3回鳴ったら男は槍を持って、村入口から300mで待機。まだ、半分も来ていない、村全体にちゃんと伝わっているのかも分からない、見える範囲に男いない、かなり遠くに女性が二人いるだけだ。さくらの弱弱しい笛が三度なる、開戦の合図だ。




