魔獣ハンターとして
ここ数日は平和だ、ゆっくり眠れるとは極上の幸せだ。まぁそんな生活もすぐ慣れてしまう、ありがたみなど感じなくなるだろうから、書いて残しておこう。
毎朝の日課となった小さな足音が近づいてくる、その音の主が扉を開けテーブルに荷物を置くと、小さな手で寝ている俺の肩をゆらす。
「さくら、さくら、さくら、さくら……」
別に歌っているわけではない、何度も名前を間違えるので、会うたびに自分の名前を連呼するようになったのだ、名前を覚えるのは苦手だ。向こうにいた時も、仕事場やらベッドで間違えて大惨事を引き起こした。
「ごめん、もう覚えたから、ゆるしてさくらちゃん。」
「ちゃんは要らないっていったでしょ! 妻なんだから呼び捨てか、ハニーって呼んで!」
「は、ハニーって、さくら、それは無理。」
「ま、それでよし! それで、ご飯にする、それともワタシ?」
「って脱ぐな!」
いきなり脱ごうとしている手を止める、まだ小さな手と細い腕、押しが強いって娘ってこんななんだろうか、もう10歳ぐらい上だったらどんだけ嬉しいか。
「それで、誰か見たって?」
「ううん、見てないって、みんな怖がって街灯の外には出てないから。」
当たり前と言えばそれまでだ、3メートルもある狼がうろついてるのに、林に入る人間はいないな。村人達の情報をまとめると、最低でも大型1小型2の狼がいるらしい、そのままいなくなる可能性もあるが、発見情報をまとめると村に接近している。
村は麦やジャガイモなどを栽培しているようで、見渡す限りの畑があり、その周りを林が囲み、林との境に小さな水路があり、街灯が立っている。
水があったほうが街灯が長持ちするらしいし、魔物は水を嫌う、らしい。しかし、3メールの狼には小さな水路なんて意味はない、村を守っているのは街灯だが、魔物からしてみれば、かなり眩しいだけなので、中に獲物いれば普通に歩いて入ってくる、小型の狼単体ならば、村人全員で槍で囲めば、なんとかなるらしいが、3メートルもの大物だと1匹でも最悪全滅の可能性もあるとのことだ。
赤目の前に群れで襲ってきた狼には、もっとデカいのもいたが、小型以外は弓一発ぐらいでひるんだりはしない、頭に当たってよろめいた狼もいたが、その後立ち上がってきたのか確かめる余裕はあの時は無かった、赤目の肩を吹き飛ばした全力の一矢も外せばおしまいだし、残り2匹が襲ってきたら俺は食われる、村人達で小型2匹は荷が重い。さらにここらは、木が5メートルほどしかなく、頭を超える茂みが多い、山に入っても狼をみつけるよりも先に、こちらが見つかる可能性のほうが高い。
つまり、軽くつんでいる、昨日それに気が付いてしまってからは、逃げようかとも考えたが、昼はさくらがつきっきりだし、夜は警戒のため村人たちが交代で警戒している、こんな事なら別の傭兵を俺が雇ってくれば良かったのに! とも考えたが、そもそも信頼できる傭兵の知り合いなんていない、なにより本物の賞金稼ぎなら、目の前で弓構えてる相手が金貨が入った袋に見えるだろうし。なんだこれ、もう無理げーじゃねぇか!




