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夢者  作者: 高島 良
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よそ者へ

 逃走者の生活がどんなものなのか、お手本もないし正解もわからないまま、目立たないように町から町に流れていく。書いてみるとちょっとかっこいいが実際は言い訳に困る、まずよそ者を警戒して世間話をするように調査してくる、とりあえず賞金稼ぎだと答え獲物の情報は明かせないと言えば、追及はそこで終わる。それっぽく、最近よそ者を見たかと聞いて回るが、3日もあればその町に目立つよそ者などいないことがわかる、そうなるとその町にいる理由も無くなり次の町をめざす。数か月生活して、なんとか考えついた作戦だがさすがに疲れてきた、旅の生活とはこんなにも疲れるものなのかと痛感する、逃走中の刑期が考慮されるのも少し納得できるとそんなことを考えていた日に、まず弓使いであることがばれる。

 その日は、隣町への移動の為に荷馬車の列に便乗させてもらい、荷物の隙間でウトウトしていたのだが、起きてみると剣と矢筒がない、そして外の様子はわからないが荷馬車は止まっている。これは、やばそうだ、いきなり賞金首がばれたとは思えないが、弓使いであることはばれただろう、荷馬車は10台30人以上、雇われた用心棒も数人いる、剣があっても勝算はほぼゼロ。どんな流れになるのだろうか想像もできない。

 何もできず変な汗を流していると、すこし年上の男性が荷馬車に乗ってくる、口の前に指を立て、静かにと合図している。


「とりあえず小声で頼む、近くの村で村長をしているものだが、君を魔物退治で雇い村に一緒に帰るところだと説明した、話を合わせてくれるとお互い助かると思うがいいか?」


 とりあえず頷く以外に方法がない、村長と荷馬車を降りて、荷馬車の全員だろうか人の輪に向かう。村長が王都で手配した歴戦の魔獣ハンターだと紹介し軽く会釈する。明らかに怪しい、とみな顔に書いてあるがだれも口にはださない、しばらく沈黙が流れたあと、小学生の低学年ぐらいだろうか少女が重そうに矢筒と剣を抱きかかえて近づいてくる、ありがとうと声をかけると満面の笑みを浮かべて村長の方へと走っていく、彼の子供だろうか。先ほどまであからさまに怪しいと疑りの目を向けていた大人達の目線がすこし緩んでいる、少女の笑顔はとんでもなく強力なようだ。

 俺を乗せた村長の荷馬車は最後尾へ移り、車列が動きだす、村長なかなかの交渉上手なようだ。


「村長たすかりました、変な嘘までつかせてしまって申し訳ない。」

「いや、勝手に荷物を開けて、これは? と持って来てしまった、そこの娘の責任です。」


 荷馬車の奥を見ると、その娘は土下座の姿勢でこれ以上の追撃をゆるさない、さすがにやり手の村長の娘だけあって、交渉上手なのだろうか、しばらくすと先ほどの笑顔を見せる、これはもう何も言えない、俺も笑顔トレーニングするべきだろうか。


「それに、全部嘘ってわけじゃない。」

「全部? ではない? どういうこでしょうか?」

「うちの村は、こっからこの車列と一日、さらに別れて一日いったところにある小さな村なんだが。最近魔物の目撃情報があってな、退治してもらえるとありがたい。」

「領主の衛兵とかに頼んだ方が早いんじゃ?」

「実際被害が出たわけじゃないし、出たとしても軍が来てくれるのはかなり先だよ。そんな重要な場所でもないからね。討伐隊を出してもらったりしたら、税金上がるって噂もあるし。それで、その報酬の話なんだが……。」


 そう言って村長は、頭をかき困り顔を見せる。そうか傭兵を雇うとなれば、かなり金がかかるのはお約束か、要らないとか言うとかえって怪しまれるか。


「空き家があるので、住むところと食事は用意する、報酬は出来れば後払いにしてほしい。もちろん、無茶をいってるのは、分かってる。何か訳ありなんだろうが、何も聞かない、約束する。」

「その村には、外部から人はどれくらいの頻度で来ます?」

「誰もこないよ、商人もこないから、私か村の者が往復6日かけて町までいってる。」

「わかりました、村から出る者には俺のことは口止めを、それと歴戦のではありませんので、数日もどってこなかったら、別の人を雇ってください。」

「矢には血の跡がありましたし、期待してますよ。それから、うちの村には若い娘はいませんので、あれで勘弁してください。」

「あれって。」

「お嫁さんにしてくれるん?」


 突然距離をつめてきた娘が腕に抱き着いてくる。


「いやいやいや、なにを10年早いでしょ」

「3年ぐらいじゃない?」

「そんなわけないでしょ」

「じゃそれまでは、添い寝してあげるね。」

「いりませんから!」


 村は人不足なので、住人が増えるのは歓迎ですよ。などと村長は呑気なことを言って笑っている、どこまで冗談なのか分からない、しかし、久々に弓の練習もできるし、しばらくでも移動しなくて済むならありがたい、逃がしてくれた兵士以降、人とまともな会話する事も無かった、すこし強引なこの二人とのやり取りもなにか楽しい、村人みんなこのノリだったらどうしよう?

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