孤児院へ
酒場は思っていたよりも、平和で静かに食事やお酒を楽しんでいるように見える、刃物を全員が持っていることを除けば。
運ばれてきたビールの味を喉で確かめていると、大柄な男が近づいてきてケンに話かける。さっぱりわからないが、頭痛はせずにほんの軽い耳鳴りがする程度まで落ち着いた。
ケンがすこし仕事の話をしていいかと、言うので素直に待つことにする。
窓から外を見ると、かごを抱えて道行く人に声をかけている少女が見える。真面目な花売りの少女、誰も足を止めることはない、不幸な話の出だしのよう。少女が働かなければならない世界、募金をつのるネット記事のように、暗い見たくない現実を押し付けてくる。
誰か買うのかと、しばらく見ているとケンと話していた相手が、肩を叩き、目の前に銅貨を数枚置いた。
ケンが言うには、気にいったんならおごってやるから買ってこいって。ケンの翻訳が正しい可能性は低いが、ありがとうと言って酒場をでる。
可愛い女の子と話せとる思って、彼女の前まできたがなにも話せないし理解できない。勝手に美少女は例外と思ってしまった自分にあきれる。
とりあえず、お金を渡してかごに入っている、花の髪飾りらしきものを指さしてみる。お金を返そうとするし、なにか説明してくれてるのだがさっぱりわからない。身振り手振りで、声もでないし、耳も聞こえないと伝えてみるが、これは何とか伝わったよう。しばらく、悩んでいた彼女は俺の手をつかむと歩きだした。
意味もわからず、しばらく手を引かれて歩く。警察に間違いなく声かけられるパターンだが、人通りの無い路地には誰もいない。しばらくして、大きな建物へと入っていく、飾りといわれた剣を思わずにぎりしめる。
中は、大きな木製のテーブルが、ずらりと並び、奥のほうで子供達が、裁縫している。手前のテーブルに座るように、と身振りで示しているように見えるので座る。花売りの少女は、奥に行って子供達と話をし、一緒に2階へと上がっていく。しばらくして、花売りの少女と別の女の子達がもどってくる。机の反対側にならび、みな軽く会釈をする。とりあえず、花売りの少女に手を開いて見せ、わからないとアピールする。
女の子達は、集まってなにか話し出したが、話をしているぐらいしかわからない。しばらくして、なにか思いついたのか、また向かい側にならび、先ほど強引に渡した銅貨を俺の手前に置く。そして、その中の一枚を、花売りの少女は自分の手前において、自分を指さし、その後、俺を指さし、その後、2階を指さす。これを、各少女たちがしていく。
わかった、わかったけども、まずいんじゃないかなぁ。なにがまずいんだろう? 正直そんな目で見れるような歳じゃないし、どうみても小学生ぐらいの子もいるし、なんとかお金だけ置いて帰ると伝える方法を考えよう。
しかし、花売りの少女を見ていると、考えが変化する。今日死ぬかもしれないし、いまさら善人ぶってどうするんだろう、そんなゲスな言い訳を思いつき、銅貨をすべて彼女の前に置いた。彼女は、ほかの子になにか言うと、銅貨を一枚だけとって、残りを俺の前にもどした。
うつむき、足取りの重い彼女に手を引かれて、部屋に入る、ベッド一つと、サイドテーブルだけの質素な部屋。彼女はロウソクの火を消して、暗い部屋の、ベッドの前に立っている。彼女の前に立つと、彼女は胸の前で腕を交差させ、自分の肩をきつく抱き震えている、手を伸ばそうとすると、彼女のすすり泣きが聞こえた。
自分が悪人にも、なりきれないと分かり、彼女に返された残りの銅貨をサイドテーブルに置く、彼女は不思議そうな顔で、見上げる。説明する方法も思いつかないので、ドアへ向かおうとすると、腕をつかまれる。なにか言ってくれているのだろうが、わずかな耳鳴りにしか聞こえない、なにか他にも力になってあげれたいいのだけど。ベルトに挟んだ剣を思い出し、置いていこうとしたのだが、剣を持つと、彼女は床にひざまづいて祈りはじめた。
これは、間違いなく誤解させた、言葉が通じないとここまで大変とは、話せるようになるまで生きてたとしても、謝りに戻ってはこれない。
玄関をでると、なぜか久々にイラついていた、なぜだかわからないが、こんな気持ちになった時のことは、覚えている。初めて人を殺そうと決めた時だ。




