浮気の代償へ
自分がどれだけひどい男かは、いまさら確認しなくてもわかっている、わかっているが、あらためて考えると救いようがない。映画とかだと、セクシーな美女の誘いをかっこよく断ったりするのだろうが、現実では無理じゃないですか? 普通に可愛い子が、いいですよって言うんですよね、ねぇ? 俺は誰に言い訳してるんだろうか、本当に言い訳したい相手に言えないのに。
結局、見られたら言い訳できないぐらいの、格好になってしまったころ。扉が開いてアンが入ってくる。
「ヒロここにいるって……。」
殴られるかと、恐る恐るアンをみると、悲しそうな目をしてうつむいている。
「出て行って。」
その声は、力なく寂しそうな、初めて聞く声だった。アンはすぐに視界から消え、足音も聞こえなくなる。そんなキャラじゃないだろう、いつも勝気な……。それは俺が思ってただけか、傷つかない人間なんていないのに。
「私、先に出るね、ごめんね~。」
そういって、名前もしらない華奢な女性がいつのまにか、服を着て出ていく。そっか、とりあえず服を来て俺も出ないと、もうここにはいられない。
廊下に出ると、メイドさんにあちらへと案内されて、裏口だろうか人気のない出入口を案内される、屋敷の敷地の外まで案内され、お気を付けてと細い剣を渡される。そういえば、建物に入る前に預けたんだった。これでは、自分の身を守ることができない、数か月アンのおかげで生きてこれたのに、悲しそうなアンの姿が目から離れない。謝りたいと思うことすら、申し訳ないと思う。
行く当てなどないが、とりあえず来たであろう方角へ歩く、もう魔物でも盗賊でもいいから、このどうしようもない男を葬ってやってほしい。そんな事を考えながら、随分と歩いて家もまばらになったころ、荷馬車が横に止まり、兵士が降りてきて声をかける。
「ヒロ様ですね、とりあえず乗ってください。」
促されるままに、荷台にのりこみ荷物の間に座る。兵士は年上だろうか、鎧も先ほど宮殿を警備していた兵にくらべてすこし豪勢に見える。
「時間が無いので、移動しながら説明します。」
そういって、兵士は荷馬車を走らせる。
「明日の朝、あなたの首にかなりの額の賞金がかけかれます。」
「賞金かぁ、捕まえたら大金持ちってやつだな。」
「いえ、引き渡しは首だけです。」
賞金首ってよく言うけど、首だけってグロいな。自分の首が麻袋から出されてカウンターに置かれ、金貨が入った袋がドーンと置かれるわけか、グロすぎる。
「それって、やっぱりアンが?」
「直接お聞きしたわけではありませんが、奥様からの指示のようです。」
なんだろう、あの悲しそうに見えたのは、見間違いだったのだろうか。すこし時間が空いたら、怒りがこみ上げてくるやつだろうか、うん、たぶんそうだな。
「いまさらだけど、逃がしてくれるわけ? それとも斧を手配するついで?」
「信じていただけないかもしれませんが、奥様の領地の外までお連れします。」
「ありがたいけど、迷惑がかかる程度では済まないじゃないのかな?」
「私の息子が、赤目討伐戦で貴方を見たと話していました。本物の英雄を見たと、褒めたたえていました。あの戦場から生還したものは少なかった、本当に、本当に感謝しています。」
うーん、おっさんに言われても、さほど感動が無いというか。これはもう慣れてしまったのだろうか、そもそも俺がとどめをさしたわけではないし、正直どれだけ貢献したのか実感がない。
「うん、わかった信じる。」
というか信じるしかない。
「疑ってるわけではないけど、確認として、確認としてね、初めて会ったのになんでわかったのかな?」
「息子が宮殿の警備にでておりまして、ヒロ様が肩を落とされ徒歩でお帰りになられるところを見たと聞いた後、伝令がこれを。」
そう言って、彼が渡してくれたのは、5センチほどのガラスの棒のような物。日記にと渡されたビー玉と同じ物だろうか、すこし強く握ってみると、自分の顔が浮かびあがる、かなり精密な似顔絵といったレベル、なにか下に書いてあるが読めない。字が読めないのを披露するのは恥ずかしいが、たぶん重要なので確認。
「これは、なんて書いてあるのかな?」
「おおよその、身長と体重、弓使い、剣の腕はかなり低く、ベッドでの技はさらに低い。」
アン! こんなものをバラまいたのか! 殺されるよりも、ある意味ひどい。
「大丈夫です、この手の物はなにかしら、対象を卑下した言葉で締めくくるものですから。」
「そうなんですね、ありがとうございます。」
なにに対してありがとうなのか、言った本人も、言われた側もわかないまま、荷馬車は町を離れていく、とりあえず唯一の強みである弓を回収しなくてはならないので山小屋を目指す。とは言っても、ざっくりとしか方向が分からず夜道と来れば、その先もそうだが不安しかない。




