女子会へ
本当は、日記などつてけている場合ではないが反省の為記載しておこう、ゲームなら昨日のセーブデータからやりなおしたい。寝て起きたら夢落ちでもどってるとか、いやこっち来てから夢みないな。
昼過ぎに、映画でしか見た事のない豪華な馬車が到着し、年配の女性が体中にメジャーを当てて目の前で服のサイズを調整していく。その服は俺の知ってる言葉で表現するなら、真っ白なポケットのないスーツに金の花刺繍が至る所に入っている、成人式のやんちゃな一点ものでもこんな服はないと思うほどのセンス! こんな羞恥プレイかと思うような服に、ハイヒール? いやこれはシークレットシューズと呼ぶべきか、10センチ近く身長が伸びたが立ってるだけでふくらはぎがつりそうになる。向こうの世界でもヒモ生活をされてる殿方は、ご主人様のこんな無茶ぶりに耐えているのだろうか、じっくりと話をしてみたいものだ、そんな機会は無いとはおもうのだが。
理解できない服と靴さらに髪を七色に染められて、なぜか地味な黒ぶちの伊達眼鏡をかけて馬車に乗せられる。文化の違いとして受け入れよう、そんな事よりマナーのほうが大事だ。服を仕立ててくれた女性が言うには、アンの少し右後ろに立って、しゃべらず、誰かと目が合ったら、すこし微笑み、目を軽く閉じて、少し会釈する。書いてみると簡単だが、背筋が曲がってるやら、ほほを上げすぎやら、到着までかなり訓練を要した、この時点でかなり後悔していた。
森を抜け、草原を馬車が走っていく、しばらく人の気配は無かったが、ぽつぽつと民家らしき小さな建物が見えてきたところで、カーテンを閉められてしまう、外の様子はたまに聞こえてくる、すれ違う馬車や、通り過ぎる話し声だけ、かなりゆっくり走っている事しか分からない。そして、これからなにが起こるかわからない緊張感がピークに達して、それが眠気に変わりすこし寝てしまった。
肩を叩かれて目をさます、カーテンが開かれていて、馬車は車寄せの渋滞に並んでいるようだ、縦に長い窓、白い4階建ての広い宮殿という表現がしっくりくる、場違いすぎて逃げ出したい気持ちになるが、こんな恥ずかしい服では逃げられない、うん、あきらめよう。
馬車がゆっくりと動き扉が開く、真っ赤な胸元の強調されたドレスでアンが出迎えてくれた。素直な俺の目線は一点に吸い込まれていく。
「見すぎだって、さんざんみたでしょうが」
「いや、ごめん」
「ん!」
「あ、ごめん、だまって、右後ろ、目が合ったら、微笑んで、会釈」
「よしよし、ふふ、似合ってる、かっこいいぞ!」
そういうと、アンは嬉しそうな笑顔をみせて、ゆっくりと歩いていく、油断すると裾を踏んでしまいそうだが、あまり足元ばかりも見ていられない、一定の距離を保ってついていく。周りを見渡すと、どうやら俺と同じような立場の人がいるようだ、ドレスの女性の後ろにピタリと若いイケメンが立って微笑んでいる、年配の男性の姿がみえず、男で最年長は俺のような気さえする。どうやら、権力を持った女性達の集まりのようだ、広いホールにはテーブル料理、その近くに2~4人ほどのグループで話をしている。アンも挨拶して会話に入っていく、他の女性達の反応から見てアンがかなり偉い人であることがわかる、会話の内容は領地のささいなトラブルや婚姻など世間話のようにかるく話しているが、政治的な報告にも感じられる。これは軽い女子会ではないらしい、笑い声は聞こえないし、お付きのイケメン達は料理に手を伸ばすこともないし、飲み物すら口にしない、女性陣も料理には手を付けず飲み物もまれに口を付ける程度、なんというかピリピリしてる。期待してたわけじゃないけど、ご馳走たべれるんじゃなかったのか! と心の中で叫びながら、顔はニコニコとほほ笑む。
1時間ほどしてそろそろ足と顔の筋肉がつりそうになってくる、ある女性がアンになにか耳打ちする。アンはここにいて、と言って部屋をでていく。すこし焦ったが、どうやら主人に待機を命じられたであろうイケメン君が数人、間隔を開けて壁に立っている、近くの壁まで下がり待機する。しかし、この微動だにしないのはかなりつらい、さっきまではアンがたまに移動するので動けたが今は動けない、なぜならイケメン君達は、スマイル人形と呼べるぐらい景色と同化して動かない。なにかそういう訓練でも受けているのだろうか、立ってるだけの仕事が楽そうだと思ったこともあったが、実際にやってみるとかなりしんどい。




