山の向こうへ
どれくらい日々が過ぎただろうか、たぶんそんなには経っていないのだが、さすがに飽きてきた。それと言うのも、剣も弓もサッパリ上達しない、剣に関してはアンが数分しか相手してくれず、弓に関しては百歩先のドングリにも7割当たるようになったのだが、歩いて置きに行き戻ってくるのがめんどくさい。狩りに関しても、動物達も見晴らしのいい川辺で水を飲むのは危険と気が付いたのか、最近は滅多にみない。山を半日登り、反対側を見下ろしてみたが、やたらと木のデカい森があり、先はまた山があり人の気配は無かった。
そして今まで考えても見なかったが、無造作に入れていた木箱から食料を持ち出すと、すぐに腐る。確かに季節は夏っぽい感じだが、腐る速さと、この腐らない箱は? アンに聞くと、飾りだと思っていた水晶に魔力が溜まっている限り腐らないのだそうだ、またしても魔道具! これを引きずればどこでもいけると思ったが、そんな簡単ではなかった、鉄枠に木の飾りがついた移動不可のアイテム、どうやってここにもってきたのやら。ここを出たとして、あの大きな狼に接近されたら、一人ではどうしようもない。
これはもう、冗談半分で帰り際のアンに頼んでみる。
「お願いですから、どっかつれてって!」
小学生のおねだりのように、ひざをつき下半身に抱き着く、殴られるかとおもいきや。
「ヒロあんた、やっぱり心が読めるの?」
「そんな能力のあるやつがいるのか?」
「いや、会ったことないけど、噂ではいるらしい。本当に心が読めるやつが、あっさり認めるともおもえないんだけど。」
そう言って、睨みながら詰め寄ってくる。これは目をそらした負けなやつだろうか。しばらく睨み合っていると、あきらめたようにアンがため息をつく。
「わからない! いいや、明日パーティーに連れてってあげよう、ご馳走が食べれるぞ。」
「お、やった!」
いや、正直ご馳走はどうでもいい、食べ物もお酒も、飲めればいい程度の舌しか持っていないので、豪華な物を与えられても、なんというか罪悪感を感じてしまうのだが、あたりさわりなくサラリーマンスキルで無難な回答してしまう、なぜかすこし悲しい。明日の昼に迎えと服が届くらしいので、礼儀正しく! と言っていつものようにさっそうと馬で去っていく、いや作法とかわからんけど、あれかフォークは外側からとか、そんなのか? やらかして、怒られる姿しか想像できん、子供か俺は。




