尋問へ
小屋に戻って、椅子に座る。正確には無言の圧力でそうさせられている、普段とは違ったアンの顔が見れてうれしいなどと余裕を感じる状況ではない、目力が半端ない。恐怖のあまり目をそらしてしまいそうだが、そらしたらそれはそれで、やましいことが有りますと語るようなもの、言葉が通じないので挙動には注意をはらわなければいけない。ギャング映画なら、言い訳やギャグがすべって手にナイフとか刺される場面、気まずいし怖い、すぐにでも逃げ出したい。
アンはしばらくテーブルを挟んだ正面の椅子に座り、恐怖のにらめっこが数分続く、その後席を立ち翻訳メモを持ってもどってくる。そうくるか、そうだよね尋問だよね、でもそのメモでは正確な情報は伝えられない気がする。そんな時間稼ぎの言い訳もジェスチャーでは伝わらないし、ちょっと肩をすくめただけで、目力が数倍に上がる、そういった補助系の魔法だろうか、もう微動だにできない。
彼女の尋問は適格だ、俺を指さし、狼、殺す、そしてYESとNOの間を指でなぞる。聞かなくてもわかってるよね? YESを指さしたら、その後は?あれかな、ナイフとかでスパッと首を切られるやつかな、魔力が尽きるまでそれが続くのだろか、怖いが助ける為だった、覗きではない! などと都合のいい言葉はメモには無いし、それを探す動作に入っただけで刃が飛んできそうだ。
無い選択肢を探してもしょうがない、そっとYESの単語をさす、目力に変化はない、そりゃそうだよね、ほぼ確定だったわけだし。予想では、ここで刃が向かってくるタイミングだが、どうやら第2の質問に移るようだ、数分生き永らえた。
彼女は自分を指さし、メモから見るという単語を指し、YESとNOをなぞる。ちょっとだけしか見ていない、本当だって本当、伝わらないと分かっていても、喉は言葉を発する。最後の言葉がこれとは、特にかっこいい辞世の句が思いつくわけでもなく、指をYESに落とす。こんな可愛い人に殺されるならと目を閉じ、胸か首に来るであろう痛みの信号を待つが、何もこない、やるならひと思いにすぱっとお願いします。
ゆっくりと目を開けると、すこし目力の落ちたアンが立っている、睨んではいるが、なぜかその目線はいたずらっぽい照れ隠しのようにも取れる、腕を組んだり眉をさわったり、なぜか可愛らしく感じる動作を連発する。先ほどまでの恐怖の反動だろうか、狼にきずかれ終わったと感じ、彼女にはもう会え無いとあきらめた、あの時、もう一度会えたらそう思っていた。
体が不思議な動きをする、立ち上がり彼女に口付けする。それは、とても自然な動きだった、気持ちに迷いもなく、拒まれる恐怖もなく、それが当然の事のように思えた。アンは少し驚き、唇を重ねたまま俺のシャツを破いた、結局ケンのアドバイスを守ることは出来なかった。




