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夢者  作者: 高島 良
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言い訳へ

 矢は真っすぐに飛んでブレもなく直進する、その様子はいまだにしっくりこない、いっそ誘導弾のように必ず当たってくれればいいのだがそんな都合のいいスキルはない、狼の移動距離を計算に入れてはいたが、思ったよりも距離が近かったのか、矢は狼の鼻を少しかすめた、歯を出し威嚇し、鋭い目付きでウロウロと動き敵を探す、次の矢を構えるが不規則な動きで狙いが定まらない、走り出したらまず当たらない、焦りから鼓動が早くなる。

 動きを止めた瞬間を逃さず矢を放つ、焦ったか矢は狼の足元にささる、飛び跳ねて距離を少しとり、こちらを睨んでいる、見えてはいないのだろうが、飛んできた方向は分かったようだ。ここに来るまでに何発撃てるだろうか、林の中を走ってくる狼に運よく当たる確率は低い、逃げても追いつかれる。首に噛みつかれてあっさりと終わるのか、群れとの戦いで散々見た光景、あの日よりも恐怖を感じる、アンの笑顔がちらつく、死ぬなら、押し倒しておけば良かった、言葉は通じないが、本気で抵抗されれば彼女のほうが強いわけだし、答えはすぐにわかったはず、死にそうなのにやけに余裕のある自分にすこし腹が立つ。

 狼はこちらへは走り出さず、地面にささった矢の匂いを少し嗅いでまたウロウロと周りを警戒している、すこしほっとする、しかし状況はさほど変わっていない、次に動きを止めた時に仕留める為に矢を構える。

 しばらくはゆっくりと動いていたが、川の方を向いて動きを止める、アン達のことを思い出したのだろうか、少し息を吐いて矢を放つ、着弾までの数秒を待つ、矢は後ろ脚の付け根付近に当たり、狼はよろめく、すると木の陰から全裸の女性たちが現れ剣を狼に突き立てる、返り血を浴びながら狼の首を切り落とし、剣を掲げ勝どきを上げている、はっきりとわからないがどうやらアンのようだ、それは古代の彫像のよう、ボディービルダーのコンテストと表現するべきか、輝かしい筋肉美というやつだろうか。別の女性は矢を抜きこちらを指さしている。これは、次に飛ぶのは自分の首かもしれないと、今はこの場所から逃げなければ、小屋に帰るまでに、なにか言い訳をおもいつけばいいのだが。

 小屋にもどると、すでにアンの馬が繋いである、今日は小屋から出ていませんで押し通す案は却下しなければならない、素直に覗くつもりでは無かったと言うしかないのだが、あの数ページのメモに書いてある単語で通じるだろうか、通じた所で信じてもらえるだろうか、がっつり見て慣れてしまえばなんて考えていたことを、なにやら不思議な魔法とかで心を読まれる的なことは、などと考えていると、かなりずっしと肩に手を置かれる、振り返ると笑顔のアンが立っている、すこし怒っているようにも見える、いやたぶん怒っている、シャツ1枚で手には、先ほど狼から抜かれたであろう矢が握られている。

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