水浴びへ
2週間が過ぎ、ジェスチャーゲームにも慣れてきたころ、数ページの紙束を渡される。中身は『はい』、『いいえ』など基本的な日本語と、その右横になにやら暗号のような見た事のない記号が書かれている。これで会話するということらしいが、発音がさっぱり分からない。その暗号を指さすと、アンは口を動かしてくれるのだが、何も聞こえずいつもの軽い頭痛がするだけだ。伝わらないのに、必死に口を動かす彼女を見てつい笑ってしまい、彼女もつられて笑うとその可愛い笑い声は耳に届く、やはり話をしてみたい、しかしこのメモだけでは事務的な連絡が精一杯だ。
帰り際、彼女はメモを指でトントンとたたく『明日・いいえ』と、これは明日は来れないと言うことだろう。今までも何度か、彼女の来ない日があったが、前日はよくわからないジェスチャーをしていて、とりあえず頷き、翌日になって意味がわかる。彼女が来る道をひたすら眺めて半日すごす、寂しいとはいうこうことかと、少しだけ自分にも人間らしい感情があると知って、少し動揺し彼女と同じ人だと思えて嬉しく思う。
翌日、アンが来ないことが分かったので、弓を持ってとくに計画無く山を登る、何か獲物がいれば仕留めたいが、そんなに運よく見つかることはないので期待せずゆっくりと登っていく、昼過ぎに見晴らしのいい高台を見つけ昼食にする、しばらく景色を楽しんでいたが、目を望遠モードに切り替え獲物を探す。小屋からは見えない位置に川があり、水を飲みに来る動物達が見える、ここからでも当たりそうだが小山まで持って帰ることを考えると、馬がほしいところだ、何かを抱えて乗馬できるほどのスキルは無い。 アンは貸してくれるだろうか? そんなことを考えながらさらに川の上流を確認していく、馬が数頭止めてあり、その中に見慣れたアンの馬がいる。
すぐに彼女を探している自分に気が付く、いやそういう意味ではないと心の中でよくわからない言い訳をしつつも、彼女を探し続ける。数人川に入っている人影が見えたので、目に力をいれてさらに倍率を上げる、すこし目に痛みが走る、ピントがあってくると全裸で水浴びしているアンと数人の若い女性達が見える、急いで目を背けしゃがむ、いや向こうからは見えてない、見えてないだろうが、目に焼き付いてしまった、やっとアンの笑顔にも慣れてきたのに、明日会った時、挙動がおかしくならないだろうか、自信がない。
とりあえず、慣れてしまえばいい、そうだ、アンの裸をたっぷりと見てしまえば、緊張しないはず。そんな最低な言い訳をしながら、もう一度アン達を探す、思ったよりも探すのに時間がかかる、やっと馬達を発見するが、なにか様子がおかしい、繋がれた馬達が暴れている。近くを探すと、狼がゆっくりとアン達に近づいているどうやら一匹しかいないないもよう、群れで見たときで言えば小型の方だが、アンは今武器を持っていない、そもそも下着も付けていない。ここから当たるだろうか、それよりものぞきががアンにばれたら、どうするの? 言い訳は後で考えよう、狼が走り出したらまず当たらない、狙いを定め矢を放つ。




