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夢者  作者: 高島 良
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 いまだにベッドで目覚めるのには慣れていない、一定の音を出し続けるファンの音とエラー画面、時間を確認して作業を続ける、何も考えず、ロボットの様に作業していく。気が付かないほうが幸せだった、自分は何をしているんだろう、こんな生活をいつまで続けるんだろう、夢はなんっだったんだろう、今やっていることが無駄だと思った時、人は壊れるんだと思う。


 今日も無駄に天気がいい、まどの外はこれでもかと目にやさしそうな朝の緑、遠くからアンが馬に乗ってやってくるのが見える、手を振ってみるが、まだ普通の人に見える距離ではない。ちゃんと動けるようになるのに3日ほどかかった、アンにマッサージしてもらったが、背中の感覚が無かった。部活に入ってすぐの頃もそうだったが、やり始めの上達する時期は楽しくて無理する、弓を引くのはかなり背筋を使うので、筋肉痛を通り超して感覚がなくなるほど、まるでセメントが入っているみたいになる。うつ伏せに寝てアンが背中を押してくれても、感覚がなくすこし焦った、感覚が戻ってからは激痛で正直言えば止めてほしかったが、伝わらないし、アンは意外と力があり、あっさりと押さえつけられてしまった。

 4日目には痛みも引いて、体を動かせるようになったのだが、アンに手を引かれて外にでると、木刀を渡された、彼女も木刀をもっており、突然剣の稽古が始まる。笑顔の彼女にひたすら叩かれる、最近の午前中の日課は毎日剣の訓練、午後はアンが帰っていくので、一人で弓の練習をする。的にする畳がほしいところだが、無さそうなので、林で拾ってきた太めの枝を立てて的にする、たまにウサギや鹿を仕留めて、翌日アンにさばいてもらう、彼女はいい意味で男らしい。動物は長時間静止してくれるわけではないので命中率はかなり低い、外した矢を探すのに時間がかかる。矢ぐらい自分で作ればいいのだが、まっすぐな枝をけずって矢にしてみたが、重力の影響をきっちりと受けるし、鹿に傷ひとつつけられない、大工に作ってもらった矢を見てみると、鉄の矢じりから羽の付く後ろまで、太い銅線が張ってある、さらに輪になっていて、矢を引けば銅にさわる。魔力は電気的なものなのだろうか、とりあえずここまでの細工は無理なので、大工につくってもらった矢を大事に使う。

 アンが馬の上から手を振っている、パンや野菜やらの入ったバスケットを抱えてやってくる、毎朝の幸せな光景。バスケットを受け取り、手綱をつかむとひらりと馬から降りて、目が合う。本当なら、おはようと声を掛け合うところだが、言葉が通じないので、彼女は笑顔を向ける、その柔らかい笑顔に抱きしめそうになる。そのうち言葉が分かるようになるとは、どういう意味なんだろうか。アンと話をしてみたい気もするが、今のままでもいい気もする、ずっとこのまま変わらない日々が続く、そう思えるほど若くはない、とくに気持ちは時間とともに変わってしまうのだから。

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