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夢者  作者: 高島 良
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討伐終了へ

 巨大な熊がゆっくりと接近してくる、ちょっと間の長い映画みたいだ、海外と若い奴らには受けそうもない。色々考えてしまうだろうが、早くやってくれ、そんな事を考えながらも、どこかで助けが来るかもしれないと情けない期待をしている。命乞いが通じる相手じゃなくて良かった、もし相手が人間ならみじめな最期の言葉をはいて殺されるんだろう。しかし長いな、さっさと頼む。

 お疲れ様と声をかけたくなるほど、よろよろと時間をかけて熊が目前までやってくる。お互い体力は回復していないようだ、視力は怪しいが、耳は聞こえる、熊の唸り声がたまに聞こえるだけ。救援の騎馬隊はこないようだ、生き残る為には自分でなんとかしなければならない。

 先ほど勇敢な青年のおかげで、この熊は腕の振り下ろしがメインであると思われる、彼のように素早くは動けないし、視力もあやしい。しかし、片腕しかない為、振り上げた瞬間によければ、一撃はかわせる。正確にはその方向に倒れるだけなので、次は無い。

 しかしこの熊、ほんとうにタメが長い、目の前に立ってからどれくらい睨み付ければ気がすむのか。でかいから見上げるだけでも、疲れるんだよ! 睨み返したのが効果があったのか、吠えた後、右腕を振り上げる。タイミングを見て左へ倒れる、よし間に合った、はずだった。

 地面に体が付く前に、右方向から強烈な衝撃が全身に走る。熊のくせに、右フックの後に裏拳はないだろう。熊だからありなのか? 裏拳の体力を温存する為のタメだったのか? そんな疑問をいだきながら滞空時間を感じる、着地の痛みに耐えようと体中に力が入る。盛大に地面を転がり止まる、まだ生きてるのが不思議だが、これも魔力の力なんだろうか。もう指一本動かない、全身の痛みと、血の味、絶望の味がした。死んでいく事への恐怖よりも、あの熊がまたここまでくる間、待っていなければいけないことのほうがつらい。滞空時間を感じるほど飛ばされたって事は、かなりの距離飛ばされたはずだ、あの速度ではどれだけかかることか。

 耳をすませると、熊の重い足音と、馬の走る音、かなりの数。打ちどころが悪く、幻聴でも聞こえているのかと思ったが、少しすると熊の悲鳴とも思える叫び声、断末魔というやつだろうか。どうやら熊は討ち取られたらしい、最後が見れないのは残念だが、これ以上は犠牲者は増えないだろう。少しは貢献出来ただろうか、しかし声も出せず、瞬きすら出来ない状態では、良くて火葬場か、野鳥のエサだな。意識が切れるまで、あとどれぐらいだろう、走馬灯はどれぐらいから始まるんだろうか。

 金のかかった映画みたいに走馬灯が始まるのを期待していたが、馬の足音が近づいてくる。馬に踏まれて突然途切れるのかと思ったが、誰か馬から降りて歩いてくる。金属鎧の音がする、ケンでは無さそう、何故なんだろう、周りには死体が転がっているだろうし、生きているサインは何も出ていない。

 誰だか分からない相手に、かなり乱暴に起こされる。いや、これは胸ぐらを掴まれている、そして力なく後ろに落ちる頭、目が開かず相手も確認できない、もうすこしだけそっと起こしてくれてもよさそうなものだが、なにか怒らせるようなことをしたんだろうか。その後、ほぼ人形の様な俺のほほに、容赦なく拳が打ち込まれる。しばらくして、誰かが駆けてくる。拳は止まり手は離されて地面に落ちる、ケンの大丈夫か? と声がこだまする、大丈夫ではないが、どうやら生き延びたようだ。

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