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夢者  作者: 高島 良
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英雄願望へ

 馬を走らせながら、赤目を見ると反応していない、やはり見えていないようだ。熊の全力疾走がどれくらいか分からないが、可能なかぎり打ち込んでダメージを与えておきたい。来るか分からないが、それがケンがいる別動隊の助けになるだろう。なんとか見つからずに最初の一撃ぐらいは当てたい、林までいって木の陰から狙い、可能ならすぐに隠れたい。もう少しで林に届くところで、体制をくずして落馬してしまう、元々馬を走らせた事などなかったし、ここまで片手操作で落ちなかっただけでも運がよかった。落ちる前に、なんとか矢を投げ捨てたが、一本は折れてしまった、振り落とした馬は、軽くなったからか颯爽と去っていく、なんか主を心配する的な行動はないのだろうか、よく考えたらエサもやってないか。

 すこし距離があるが、予定していた林まで走る、横目で赤目を見るとどうやら伏せている子に気が付いたか、彼女がいる方向にむかって鼻を上下させ、探しているようだ。やがて確信が持てたのか、ゆっくりと移動する、あまり時間がない。

 矢を地面に置き確認する、どうやら曲がりもなく、矢じりも問題ない。あの大工達はどれくらいの時間であんな大量の矢を作ったのだろうか、いまさら確認するまでもなく、さっきまで問題のある矢なんてなかった、職人仕事に関心する。残り4本、作ってくれた大工の為にも、外せない。

 左手の感覚は怪しいため、持ってきたロープで弓を固定する、かなり固く縛った為に自分で解ける自信はなが、そんな心配は必要いらないな、覚悟なんて言える物は俺にはないらしい、あと数分もてばいい。川からシャケをすくい上げるように、巨大な熊に叩き殺されるんだろうが落ち着いている、これなら当てられるだろう。

 呼吸を整え、軽く息を吐きながら矢をしぼる、息を止め、ゆっくりと右手を後方へ。勢いよく放たれた矢は、真っ赤な草原をかけ、巨体をゆらす赤目の腹に刺さる。盛大に吠えている、どうやらかなり痛そうだが、しっかりと二本足で立ち上がっている所を見ると、たいしたダメージではなさそうだ。頭をふり確認している、どうやら飛んできた方向は分かっていないようだ。考えている時間はない、二発目を狙いをつけて放つ。当たる直前、こちらを振り返り、赤目は腕を振り上げる。よく見えなかったが、弾き飛ばされたようにも見えた。飛んでる矢が見えるのか、音で気づかれたのか、どちらにしてもこちらを発見され、さほどのダメージも入っていない。

 赤目はこちらに向けて真っすぐに走ってくる、もう止まっている的と変わらない、肉片にされるのは覚悟して、3本目を放つ。走ったまま、熊は首をすこし横に向け、矢は肩にあたる。どうやら飛んでくる矢がわかるようだ、しかも肩にあたるぐらいは気にならないか、怒りでそれぐらいは無視できるのか。残り一本、もう少し考えてから飛び出してきてもよかったと、すこし後悔する。

 今更どうしようもないことを考える時間は残っていない、みるみると大きくなる的に矢で狙いをつける。このままでは、ケン達にもつながりそうもない、あのスピードでは生き残りの兵たちも助からない。魔力を矢に。思い出せ、矢に火を、先端に火を集める。呪文のようにつぶやき目を閉じる、少しだけ矢の先端に向けて、風が吹き込むイメージがして目を開ける。つかみかけたそのイメージへ集中する、矢に向けて何かが吸い込まれる、前よりかははっきりと感じる。全てくれやる、先ほど矢を受けたであろう左肩めがけて矢を撃ちこむ。

 前回のように意識は切れなかったが、強烈な胸の痛みと息が苦しい、体中に力が入らず、左目がほとんど見えず、右目もすこしぼやける。全身に感じる重低音の雄たけびが、赤目に傷を負わせた事をつげている。顔を傾け、なんとか目線を赤目に向けると、当たったであろう左肩を押さえ仁王立ちしている、この後どうなるか予想はつくが、不思議と恐怖は無かった。

 よろよろと、その巨体を揺らしながら、赤目が近づいてくる。だらりと下げた腕は片方しかない、どうやら最後の一撃は、肩ごと左腕を吹き飛ばしたようだ。自然と笑い声がこぼれる、叫びたい気分だが、もうそんな体力は残っていない。

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