領主12
翌日冷静になったキヨに、ファンサービスは少し考慮が必要との事で予定を変更して下町を散策する、護衛についた五郎ちゃんは明らかに不満そうだ。
「ヒロそろそろ説明しろ、貧乏市民っぽい格好してもあんたの顔は結構知れ渡ってるんだぞ、守るほうの身にもなってくれ。」
「そうだな……。最近さぁ、つけられてる気がするんだよ。」
「そりゃいるだろう、暗殺者以外にも隙あれば取り入ろうって奴はおおいからな。」
「それはわかるんだけど、猪戦の時に落馬した後チャラ男の後ろに一騎いた気がするんだよ、それに崖からひっぱり上げた騎兵がだれだかわかってない。ほかにも、屋敷から出てる時に五郎ちゃんのチーム以外のメンバーが視界の隅にいる気がしてな。」
「それは、味方になりそうなら取り込んだらいんじゃねーのか。」
「そんな簡単に信用できないだろ、でてこないんだし話もできやしない。」
「確かにな、捕まえるっていっても俺達は街道護衛専門だったからな街中は色々難しい、片っ端からしばきまわすわけにもいかないしな。それで、また自分を囮にしてあぶりだそうってのか? キヨちゃんにばれたら俺が怒られるんだぞ、勘弁してくれよ。」
「気にするのか?」
「この歳で1時間以上も真面目に怒られるってけっこうきついんだぞ。」
「そかキヨに言っとくよ。」
「それで、貴族街からスラムに来て服装の違いであぶりだそうってか? 他のチームも連れて来たけど、さっぱりひっかからんぞ、そろそろ引き上げだな。」
「だめか、なぁもしもどっかの国の凄腕のスパイとかだったら、ばれずに追跡とか可能なのか?」
「うっすらと見つかってる時点でプロかどうか怪しいだろ。」
「山や街道なら俺達に見つからずに追跡なんて無理だろうけどな。」
「そうだな、それがわかってて街中メインってか、昔遊んで捨てた女なんじゃねーのか。」
「そんなわけないだろう! ……キヨに余計な事言ってないだろうな。」
「嘘つけない相手に隠し事しろとか無理なんだよ、やばい事があるならさっさと話とけ。」
「自分でも覚えてないから、それはむずかしい……。」
そんな話をしていると、前からボロをまとった子供が子供を背負って歩いてくる、歩きすぎたかもしれない下町から完全にスラムと呼ばれる地区に入ってしまっていた。五郎ちゃんは剣に手をかけはしないが、目くばせでメンバーに警戒の合図を送る。
「五郎ちゃん。」
「わかってる後ろにいろ、確認する。」
子供たち二人はかなりやせ細っていて、スラムの住民らしさが伝わってくる。15ぐらいだろか、五郎ちゃんが武器が無いことを確認して、背負われていた子供を道に寝かせる。手首に縛られた跡と、顔はかなり殴られたのだろう腫れ上がっている、ちょっと喧嘩したって感じではない。
手をのばすと、背負っていた子供が触るなと叫び五郎ちゃんに押さえつけられる。
「冷静になれ、敵味方を間違えると生きていけんぞ……なにがあった。」
「お前に話して……。」
五郎ちゃんに腕をさらに締め上げられて悲鳴を上げる、やりすぎな気もするが、まぁしょうがない。
「まとめ役にやれたんだ、ずっと男の振りしてたけどバレたんだ、あいつら……。」
剣を握りしめる前に、五郎ちゃんが止める。
「まかせろ! ……二人つける、教会へ連れてけ、もどってくるまでには準備しとく。」
スラムには似合わない馬車に子供達を乗せて教会へ走る、とりあえず命の危険はなさそうだが久々に殺人の欲求に頭が支配されていく、体が黒く染まっていく、別の物へとなっていく。
「準備できたが……少しだけ聞いてくれ。」
スラムにある酒場兼宿屋は、まとめ役であるごろつきのたまり場でもちろんボスもいる、彼女はここの裏道に捨てられていたらしい。
「奴らはクズだ、止めはしない。だがここが荒れるのをある程度は防いでる、全滅するとくだらない抗争が起きる、数人は残せ、……無理なら数日でいい。」
それだけ言うと、五郎ちゃんは棍棒を渡す。
店に入ると、両サイドに後ろ手に縛られた男達が床に座っている、みな恐怖で顔をゆがめる。
「まずは……だれが最初に手をだした?」
別に誰でもよかったのだが、なんとなく数人の目線が集まった男の前に立つ、口が動いた気がしたが何かを発する前に店の中に肉片が飛び散る。
「まってくれ! あいつが買ってくれって言ってきたんだ!!」
勇気をだして発言した男の前に立って、肉片のついた棍棒を軽く肩に置く。
「俺がだれか、知ってるか?」
「知ってる、黒弓! 貴方に嘘ついたりしません、ほんと尊敬してます、憧れてます、なんでもします。」
「そんなこと聞いてないだろ。なぁ、なにがあればあんな顔になるほど殴られた女が道に捨てられるんだ?」
「それは……。直前になって逃げだして、ここで剣とって暴れまわって何人か怪我して、みんなカッとなって、あんなの軽いゼンギみたいな……。」
頭が吹き飛べば、ごみ虫でもそれ以上はしゃべらない。
「ボスは?」
「俺だ。」
「それで、なんか言い訳は?」
「俺が来た時は、もう止められなかった。あんたに命乞いなんて無理なのはわかってる、こんなんでもここらの事を考えてやってきた。となりのこいつだけは落ち着くまで残してやってくれ、こいつは別の宿のしきりしてて昨日はいなかった。」
なぜだかここで一気に冷めた、全員連行しようとしたがボスに頼まれてその首を刀で切り落とした。スラムでも親分なのだからそれなりの人望があったようだ、きちんと葬式を出してやりたいと市民から申し出があがってきた。
「久々に見たけど、すごい返り血だな!」
「……棍棒なんて渡すからだろ。」
「慣れた武器だろうが、すこしはすっきりしたか?」
「ごみ虫を潰しても別にすっきりはしないな。……それで、見つかった?」
「いきなり冷静になるなよ。だめだな、怪しい奴はいなかった。なんとなくだが、あぶりだそうとしてるのがばれたんじゃないか?」
「そうか……。」
「おいおい、トラブルの度にへこんでたらもたねぇだろうが。面倒事は俺らに振ってもいいんだぞ、それなりの金もらってるんだからな。」
「それって、例えばどんなん?」
「そうだな、邪魔な貴族の暗殺とか?」
「それは自分でやるよ……慣れてるし。」
「領主なんだから他でやらせろよ、バレたらどうすんだ。」
「慎重にやるよ。なぁ、ここって風呂あるかな?」
「あるわけないだろ、もう下町暮らしを忘れたのか?」
「いや、ちょっと王都の職人街行きたいんだけど。」
「ほんとに護衛の事を気にしないやつだな。いいけど、とりあえず湯と服準備する。」
王都への馬車にのってかなりしてから血の匂いに気づく、冷静だと自分で思っていても一度頭に血が上るとなかなか戻らない、誰も止めてはくれないのにこのままでは大きな後悔をする事になりそう。いまさら一つ増えても気にならないのかもしれない。
王都の職人街は、基本は一般市民しか入らないが貴族も足を運ぶ、当然護衛付きでいくような場所なので五郎ちゃんやキヨは行かせたくない、相談してから行こうものなら数日先となる。
ちょっと危険がともなうが新しい武器はなんとなくテンションが上がる、昔やったゲームの影響なんだろうか。
武器といっても俺の場合は弓と矢のみ。今回は矢の方、現在国内には弓を使えるのはたぶん俺とキヨだけで、キヨは一発しか撃てない。しかし、魔石を矢に仕込めば誰でも殺傷能力のある矢を扱えるようになり、かなりの戦力となるはず。もちろん自分に向かって飛んでくる危険もあるが、そんな事を心配している余裕はないので王都の職人に頼んでは見たのだが……。
なんというか、想像よりも太い! コンパウンドの矢でもこんな太くなかった気がする、それに俺が矢に魔力を込めて10分程度しか黒の魔力を維持できない。色々工夫すればもっと伸ばせるかもしれないが、研究には数年とか言われてしまった。ゲームのように隣町までいけば強い武器があっさり手にはいったりはしない、武器開発は時間がかかる。
とりあえず大金使って3本作ってもらったのだが、2本を木箱に入れて持ってもらい、重さと太さに慣れる為にと片手にもったまま店のドアを開けたのがいけなかった。すれ違いざまに入ってきた女性とぶつかりそうになり、とっさによけたが矢先が彼女の手にあたり赤い線が入る。みなりからしてかなり高位の貴族っぽい、手を怪我させただけでも問題だが、俺が握っていた矢は黒の魔力が通っている。彼女は一瞬で床に崩れ落ち、ドア先で見張っていた五郎ちゃんら護衛と、彼女の護衛双方抜刀してかまえる。
「やめろ! そんな事してる場合じゃない、すぐに教会に運ぶぞ! まずいぞ呼吸が……。」
そんな事いっても、向こうの護衛は引く気配がない。五郎ちゃんにしかたないと頷くと、人数差であっさりと抑え込む。
自分の魔力が危険な事はすでに理解していたので、教会に頼んで緊急時の解毒剤を作ってあったのだが、心臓に直接注射するという危ない代物で、しかも魔力の守りを突破できるのは俺だけなので、俺が魔力をこめて打ち込まねばならず、間違えればこの注射が致命傷になる。
五郎ちゃんには説明してあったので、馬車に寝かせて二人して彼女の服を切る。さらに怪しげな注射まで持ち出すので、地面に抑え付けられた彼女の護衛は物騒な単語を叫びだす。事態の収拾にキヨの仕事がどれだけ増えるか、そんな事が頭をよぎるが、いまは心臓にこの薬を直接とどけなければいけない。一気に針を打ち込み薬を押し込む、なんとか浅い呼吸をとりもどし成功したかに見える。彼女の護衛も心配だが、急いで王宮の教会へと馬車を走らせる。
結果としては彼女は助かったが、見立て通り領主の娘らしくどうやら俺は挨拶すらまだしていないようだ、正確なところはキヨが駆け付けるまでわからない、なんか学校でやらかして親の到着を待ってる気分だ。もちろん気分的にはもっと重たい、代わりに謝ってくれる人はいない。……責任……。
そんなキヨの到着を待つ間に、彼女はあっさりと目をさます。見立てでは数日かかるとの事だったので一安心。面会の許可も出て部屋に入ると、彼女はすでに着替えて立ち上がっており、長い名前を名乗り綺麗なお辞儀をする。高位なのは服だけだで実はそんなでもない、そんなオチを期待していたがこの姫の動きはそれを完全否定する。自分では貴族の完璧な挨拶などほど遠いが、連日見ているので最近はその差がわかるようになってきた、とくに女性はお辞儀一つでかなりの差がでる。
「高名なフィール候とお話できるのであれば、このような傷一つではみあいませんね。」
そういって完璧な笑顔を返す、昨晩キヨに大層な事を言っておいてなんだが自信なくなってきた。本来手がとどかない高貴な女性が俺のファンとか! 向こうにいた時ファンに手を出す芸能人って無いわーなどと思ったりしたが、いまならわかる! 思い出したけど、俺は誘惑に弱い。
いや冷静になろう、別に俺のファンではない社交辞令だし、笑顔だって営業スマイルだ、いやそのはず。
などと思っていのだが、なんか流れで二人で王宮内で食事する事に、そして食後にお酒をとなる頃には気をきかせて二人っきりに……まずい、昼間に心臓の場所を確かめる為とはいえ胸に直に手を……緊急だったのでやましい事を考えたりはしなかったのだが、柔らかかったとかいまさら思い出してしまう。一度そんな事考えると簡単には切り替わらない。
気をそらそうと、狩りの話などをしているとあっさりと口を滑らす。
「今……カルと、どなたか大事な人と間違われましたか?」
「いや……申し訳ありません。」
女の子の名前はあんまり呼ばないほうがいい間違えると大変だから! とくにベッドの上では! そんな話をモテそうな美少年だと思っていたカルに話したからだろうか、目の前にいる女性の名前がわからずお酒もはいり思考が止まりそうになる。
「その方のお話をお聞きしてもよろしいですか?」
だめだ、追撃がかわせない。
「……確かに、大事な人です。でも裏切ってしまって、殺したいほど恨まれているでしょうから、もう会ってはくれないと思います。剣の腕は一流で、頭の回転がはやくて、気が利いて、皆に好かれて、今思えば彼女といる時が一番安心出来た気がします。最近は毎日のように考えてしまいます、元気かどうかとか、何をしているか、危ない目にあっていないだろうか、会ってもらえないって思うからか、よけいに会いたいと思ってしまいます。」
油断して、つい本音をこぼした。彼女をみると、今迄の笑顔と変わって、目をそらして悲しそう……。それは、なんども見た仕草。傷のあるほほを隠す癖は、忘れようがない。
「カル……。」
その言葉に応えるように、彼女の目から涙がこぼれた。
「……絶対に隠せると思ったのに……。褒めて、会いたいなんて、ずるいよ。」
「なんで?」
「いつから気付いてたの?」
「いや、なんとなく、無意識にかな……。傷を隠す癖残ってるんだな、もう跡もないのに。」
「……わかってたのに! やらないように意識してたのに!」
「しかし、随分変わったな……背もだいぶ伸びたな。」
「最後の解除後いっきに成長するんだって……。」
「……あの時、俺が村を離れるって、やっぱり気付いてた?」
「わかってた……養女の話も知ってたし、他にも仕事みんなに振り分けて、こっそり旅道具そろえたりして。隠すの下手すぎ……。」
「そっか……でも怒ってるわけ?」
「それでも、もしかしたら思いとどまってくれるかもって、ずっと一緒にいてくれるかもって……思いたかったの。付いていきたかった、ずっと捨てられたんだと思ってた、ヒロの重荷になってたんだって。」
「ごめん、あの頃はもう、カルが無事に生きていけそうな道が出来て、俺が近くにいるほうが危険ならいないほうがいいと……。」
「なんとなくわかってた、ちゃんと聞こうって何度も考えたのに、怖くて聞けなかった……。」
「ごめんな。」
そう言って頭をなでると、涙目で睨みつける。
「もう子供じゃないんだから、気軽に頭なでるな。」
「まだまだ子供っぽいけどな。」
「……なんて! 気が付くまでやる気だったくせに。」
「まぁ、見た目はなぁ……。」
「外見以外気にしないでしょうが!」
「そんな事あるか! 中身は息子同然なのにそんな気になるわけないやろ!」
「せめて娘でしょうが!」
「これでも、娘とか言う?」
やった事ないからわからないが、娘と父親の喧嘩は普通はどうなのだろう? 最初に格闘戦となり、痛めた左肩を容赦なく攻められ綺麗な関節技で左腕が使えなくなり、剣を渡されたがあっさりと取り上げられる。床に倒され首筋に左右から剣が当てられており、わかってはいたが完敗。
「約束覚えてる?」
「ん~なんだろう、新しいおもちゃ……ごめん!」
剣が首に食い込み、カルの目も冗談が通じそうもないので降伏する。
「全部解除したら、抱いてくれるって言ったよね!」
いまだかつて、こんな魅力のない誘われ方があったろうか、恐怖しか感じない……。
「それって、たぶん軽いハグ程度って意味……。」
片方の剣先がピントが合わないほど右目に接近した状態で止まる、カルに限らず手練れは脅しもうまい。
「そもそも、カルだって俺に対してそんな気にはならないだろう?」
「……。」
「まじか……、モテない背景キャラの自覚はあったけどここまでされてその反応はちょっとへこむ。」
「……改めて考えると私も兄弟とか父親的な家族愛的な感じかなって、キスしてみる?」
「なんでそんな確認方法になるんだよ!」
「異性というか性の対象と見てないか、どうか?」
「いやでも……なにも感じないってどうやって確かめるん?」
「私はわかるよ、男の人のあれがあれした音聞き分けられるし。」
「まぁ、耳がいいのは知ってるけど、それって……。」
「ぼ……。」
「やめろ!」
「表現しにくいねんけど、やらかい肉の間に……。」
「詳細はいらん。」
「わかってると思うけど、口にだからね。……自分の事を本気で殺そうとした相手の表情を読み間違うと思う?」
「根にもつなぁ……。」
逃げないようにと椅子に縛り付けられる、もう色々と歪みすぎてて思考が混乱する。
「本当にするのか? ……なんか男同士でするようで、ゲテモノ食う感じだな。」
「山逃げ回って、虫でも魔物でもなんでも食べてたんでしょ、そんなのより私の唇が気持ち悪いっての?」
「……なぁこれって、俺はどうやって確認するの?」
「それ必要?」
「いるだろ!」
「じゃあ指で。」
「はい?」
「ぬ……。」
「やめろ! あぁ、なんなんだよその顔とスタイルでエロ親父みたいな事言うな。」
「知ってたけど、受けにまわるとほんと弱いよね。」
「受けとかいうな!」
「そろそろいくよー。」
「逃げないでよ。」
そう言うと、いつの間に用意したのかナイフを足の付け根に押し当てる。もう冗談でおでこにキスなんてすると大惨事になりかねない。
諦めてそのまま受け入れるが、カルはなにか不思議そうな顔をする。
「なにも感じない……。ヒロそこそこな顔だと思うんだけどな。」
なんのフォローにもなってない。
「確認できたなら、ほどいてくれよ、肩いたい。」
「あー、そうだね……。」
と、ほどこうとしてくれたように見えたが手がとまる。
「もっかいしてみよう。」
「なぜ?」
そういって、しばりつけたままシャツを脱がして頭をなで俺の膝にまたがって座る。不思議だ、こんな事女性にされたら間違いなくわかりやすく反応してしまう、カルの見た目は普通なんてレベルではないのに、さっぱり。
そして二度目の実験を開始すると、走ってくる足音が。一瞬なんだろうとぼんやりした思考に流れそうだったが、急いで来るようキヨに使いを頼んだのは俺自身だ。急いで口を離そうとしたが、カルは頭を抑える。
キヨが入ってきて、真横からその光景が見える位置に立つ、驚きから怒りへと表情が変わる。キヨが剣を掴むと、カルは膝から降りて後ろに回り、片手で俺の口をふさぎ、もう片方の手でナイフを首筋に当てる。
「ララ様、我が領主に対してこのような行為、冗談ではすまされません。」
どうやら何度かは会っている? そしてカルは、姉となったララのふりをしているらしい、そして……何がしたいのか……。
「キヨ様、どうぞ冷静に、すこし遊んでいただけですわ。」
キヨの表情はさらに怒りに満ちていく、もう俺が見た事のある表情ではない。
「……領主間の戦争……。黒の魔力……ララ様ではないですね……何者です!」
警戒が頂点に達したのか、キヨは剣をぬいて構える。
「あぁ、急いでたから指輪を忘れてましたわ。……身分不明、黒の魔力……このナイフを引くと……。」
「なにが目的です! 王宮ですよ、直ぐに兵がかけつけます。」
「でも、声をだして助けを呼べば、ざっくり……。大好きなご主人様をとられて手も足もでませんよね? とりあえず剣を置いていただいてよろしいかしら?」
キヨはあっさりと剣を置く、カルはすこしうれしそうに俺に目くばせするが意味がわからない。
「キヨ様がいけないんですわ、なかなかヒロ様と合わせてくださらないから。……キヨ様に見られながらというのもまた一興ですが、かわいらしいキヨ様との様子をヒロ様に見て頂くのもまた、おもしろうございます。キヨ様どちらがお望みでしょうか?」
「……我が主から刃物を離してください。」
「それでは、そのお召し物を……。」
キヨは、素直にコートから脱いでいく……。なんとなくカルの目くばせの意味がわかった、可愛い子をいじめられるし信用できるかどうか、カルなりに測っているのだろう。
カルが足が見たい……スカートをなんて言い出してさすがにキヨも手を止める。俺も見た事ないし、正直見たいが首を振って口を押えていた手を振り払う。
「カル、いいかげんにしろ。」
キヨは驚きの表情から、嬉しそうにカルを見る。
「……あなたがカル様なのですか?」
「あーあ、もうすこしだまっててもよかったのに。」
「カル様、お捜しておりました!」
キヨがなんかすごく尊い物を見る様な目で、てか手が拝むポーズに! いったいどんな情報がを仕入れてるかしらんが、カルはそんな奴ではないぞ……。
「キヨ冷静になれ……こいつは中身はどす黒い……。」
「だまれ! 奴隷には手を出さないとかいいながら、思いっきり準備万端じゃねーか!」
「そ、そんなわけないだろうが!」
「私の耳は聞き分けられるって言ったろうが! ヒロ……なんなら全裸にしてやろうか!」
「……す、すいません。」
「よーし、じゃすこしだまってろ、私はキヨちゃんと大事な話がある。」
「はい……。」
反抗期を通り超して反逆者となったカルは俺に猿ぐつわをはめると、キヨと後ろに回る。
「キヨちゃん、まず私も参謀に加えてくれないかな?」
「はい、もちろん! あ、主様がもちろんよろしけれですが。」
「そこは、心配しなくていい。キヨちゃんの魔力読みも、私の家族愛と体目当ての変質的な愛情の区別はつかないってわかったでしょう、そもそも仕事させすぎなのよ。それ以外にもあるし、私達に逆らったりしないから。」
もう、領地経営に俺いらないよね?
「カル様、そもそもかなりの傭兵を斡旋いただいてますし、資金的な援助も……。」
「それはまぁ……お父様とかヒロを援助したいって奴は結構いるから、私通してなら政治的なあれはつっぱねられる、そこはこれから要調整で……。」
なんだか、いきなりきな臭い。キヨも政治の為なら、怪しい手を使うが、カルは俺でもちょっと引くような手段も使いかねない。傭兵村のボロ宿に俺を狙った暗殺者の遺体が吊るされた事もあったし……金に関しては怪しいがめんどくさかったので深堀していなかった……。
「そんな事より、キヨちゃん。私って可愛い女の子も好きなんだぁ~、そこの変態に男の子と間違われて女の子の扱いもたたき込まれたからさぁ~。」
いや、ちょっとまて、酒に酔ってなんか調子にのってしゃべったかもしれないが、それは嘘半分ってやつで、いや9割ぐらい。首を勢いよくふってみるが、反応はない。キヨがダメとか、あまーい声を響かせているがなにが行われているか見えない……のでめっちゃ興奮する……。
「首筋が弱いんだぁ~。……きよちゃん、今ならヒロ逃げれないよ……どうする?」
カルが怪しげな言葉をつぶやくと、少し目がうつろい気味なキヨがゆっくりと俺の正面に表れる。やばいぞこれは、こっちに来てから同じような状況は何度かあった、そして結果はいつも一緒だ……意思がよわいのだ。
しかし、キヨはゆっくりと猿ぐつわを外す。
「そんな顔しないでください、私はヒロ様の望まない事はしません……。」
「うん……手を解くのは、もう少し後にしてくれるかな……。」
「わ、わかりました。」
「なにいちゃついてるんだよ、ヘタレが。」そう言ってカルは勢いよくナイフで紐を切っていく。
「おまえは。……そんで、さっきの傭兵って村のやつらをララのふりしてフィールに送り込んでたのか?」
「そだよー、そもそも傭兵村はもうないよ。」
「なんで!」
「山城も完全に破壊して、魔物のでる森側には堀と壁作ったし、なによりあれ以降国境がきっちりと決まって、お隣の中立歌ってる国も圧に負けてかなり従順になってね、亡命だの密入国だの傭兵頼みの仕事が無くなったんだよ。」
「そっか、平和になったのはいいけど職にあぶれると……。」
「昔の馴染みがいたほうが安心だろ?」
「いや、だれも見てないぞ。」
「五郎さんに情報流してもらってるから、ヒロとの鉢合わせは無いように調整してた。向こうのメンバーはドクター含めほぼフィールにいるよ。」
「まじか! ……それでも解除は難しいか、それでなんで今日になって現れた?」
「何時間も店からでてこないから……。」
「はぁ? おまえ毎日つけてたのか?」
「ヒロが危ない動きするからだろうが! 今日は、たまたま王都にいたし、領主がこもってる店の中確認するにはララの身分が必要だったんだよ!」
「ってことは、いつもカル以外の誰かが俺の事付けてたってこと?」
「そうだよ! ちょっと綺麗な女に誘われたりすると、五郎さんまいて殺されかけるだろうが何度も!!」
何も言わないが、キヨの目がいつも以上に細く冷たくなり、眉間にしわが……。
「キヨちゃん、もっかい縛ったげようか?」
「……ヒロ様の体調が万全の時にお願いします。」キヨの声は怒りを隠そうとはしない。
「お、俺はキヨの事は信じてるぞ……。」
「おい、私もいるんだぞ。」
「カル、お前を……信じてる?」
「なんで疑問系! てか信じてないだろ、鼓動でわかるんだよ!」そうだった、実はキヨよりやっかい。
「カル様に、お聞きしたいことがあります!」
カルは、すこし焦り顔……なるほど、キヨはざっくりとは言えカルの嘘は見破る。
「キヨ、ぐいぐいやってしまえ。」
「……いえやっぱり二人の時に……。ヒロ様お聞きしたい真偽不明な事があれば……。」
「そうだな……カル、俺の口に直接毒を押し込んだ暗殺者……殺したのか?」
「知らない。」
キヨは顔を少し横にふる。
「残念だったなぁカル、本当はどうした?」
「ん~……意外と口が固くて……ヒロもかなりの重症って聞いて、ちょっと手加減を間違えて……。」
「おまえなぁ、村にいた時もまず連れてこいっていったろうが!」
「そんな余裕なかったんだよ! 貴族連中が怪しい動きしだすし、信用できる傭兵も少ないし、あいつら市民つかって一気にひっくり返すつもりで……。広場の仕掛けも気づくの遅れて、ごめん……、向こうの仕込み潰して回るの精一杯で、あの子を救えなかった。」
「カル、お前がそこまで引き受ける事ないだろう……。」
「ヒロ! そうやって、全部抱え込んで、悪い事は全部自分の責任って、そんなわけ無いだろう! 私は、全部ヒロに捧げるって決めたんだ、ヒロを守るの! ヒロの大事な者も全て守る。」
「……わかった。……キヨ大事なんで、手ださないでくれる?」
「それは、キヨちゃんが拒むなら何もしない。」
「が、がまんします……。」そう言ってキヨは顔を赤くする。
「カル……ちょっとでいいから、その指のスキル的なやつ教えてくれない?」
「ゲスいな……こんどキヨちゃんでいいなら教えようか。」
「……ヒロ様、断ってくださいよ!」
「そ、そうだな」
とりあえず頼もしい味方を得たが、使い方を間違えば大変事になる。しばらくは、俺とキヨ以外には伏せる事にする。解決しなければいけない事は、まだまだ沢山ある。




