表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/126

聖戦への大会合

 その日も、毎度毎度の宴会だった。毎日毎日、宴会なんて前世の政治家にでもなった気分だ。だが、飲みながら話してみると、外見はあれでも、妖精も人も中身に変わりが無い。それを理解するキッカケになるならノミニュケーションも少しは意味があるのだろう。

 飲みながら妖精達と聖戦について話したが、少し後ろ向きだった。近くの無人地帯に対して、戦士や物資を送ることに嫌は無い。ただ、遠くまで戦士を送って多くの死者を出したり、毛色の違った者として見られたり、そういう点を気にしていた。

 まあ、出生率が小さ過ぎて、戦死者を出す事に忌避感があるのだろう。それに、人と妖精間で差別心とかは当然出てくるだろう。懸念を持つのはもっともな話だ。

 さらに、よくよく話を聞いていると、人の村で産まれた妖精を里子に出したり、逆に妖精の里で産まれた人を養子に出したり、そういう交流を持っている村は一定数ある。もっとも、誤解を避けるために、喧伝される事は無い。交流のある村でも、知っているのは、村長と当事者──妖精の里に里子に出した生みの親や妖精の里出身者を養子にした養い親──しか居ないのが普通だ。だが、それでも妖精の存在を知っている者は、北部大連合内にも何人も居るそうだ。

 どうして、ワシに紹介してくれないのだろうと思ったが、彼ら妖精を知る人皆が皆、意図的に隠したようだ。泉守さんによると、複数人からワシからは隠れておけと言われたそうだ。なんでも全員が同じ事を言ったそうだ。


『タツヤ様には絶対気付かれるな。敵対するのは更にとんでもない。

 妖精の里には魔術士が何十人も居て、強力なのは知っている。だが、タツヤ様には絶対勝てない。戦力差など無意味だ。タツヤ様が本気になれば何か奇想天外な手を編み出して、あっさり戦力差を覆す。そして、皆殺しにする』


 うぅ、ワシ、凄く誤解されている。問答無用で攻撃する暴れん坊と思われている。


 その後、妖精の隠れ里での有意義な話を終え、ヒノカワ様との旅を再開する事にした。まず、アサヒ村の南西の無人地帯に居る名前付きを狩った。その後、アサヒ村に聖戦の説明をして泊まった。

 後は、会議をする熊村に行くだけだ。だが、アサヒ村から、熊村までは北北西に184㎞もある。一気に飛ぶのは辛い。ヒノカワ様からも『君は何故、そんなに生き急ぐのだい?』と苦言が刺された。

 そのため、途中のオカカワ村に寄って、一晩泊めて貰った。オカカワ村では、南東方向の村の情報を聞いたが、北部大連合外の村でも今回の会議に感心を持っている村が相当数あるのが判った。熊村への使者が既に何組か通過していったそうだ。

 結局、熊村に着いたのは、6月28日の昼少し前だった。もう、会議まで時間が無い。根回しとかする余裕がなさそうだ。


        ◇


 熊村の会議場は、前回の総会時より、小屋が何軒も増えていた。巨大な小屋を増やす為だろう。新しい縄張りもある。

 人も多い。ワシとヒノカワ様が着いた時、200人近い人々の出迎えを受けた。それも、殆どは、会議参加村の顔役以上だ。

 その後、ブナカゼ村長とクマオリ村長に引き回されながら、七村連合最高幹部会議と有識者会議に参加した。

 有識者会議とは、北部大連合内の有力村が集まっての会議だ。まだ、公式のものではないが、公然と行っており、結果は全ての村に伝達する事になっている。

 ワシが、此処に着くまでに、何人もの協力者が精力的に根回しを進めてくれていた。その結果、兎村の聖戦については、戦力と物資の分担について、十分に理解が進んだようだ。


 だが、北部大連合内でも、一部、強固な異論がある。それも、根本に関わるような話だ。


 北部大連合の北東側にある村が唱えている。『北東の無人地帯の制圧を優先すべき』という意見だ。

 『連合外より連合内が優先』という理屈は、一理あるが……それほど多くの村が賛同する訳は無い。


 ヒノカワ様の30年に渡る献身が無ければ、自分の村も滅びていた。それはどの村も、実感している。その命の恩人が、恩返しを望んでいる。この社会の人情だと、それは最優先事項だ。


 また、村人の負担を少しでも減らしたいとの想いもある。北部大連合成立からの1年、類のない忙しさに皆が辟易(へきえき)しているのは事実だ。並行して二つの聖戦を行うのは無理がある。兎村の聖戦の次に対応すると根回しして、会議に臨む事にした。



 そして、予定通り6月30日から会議が始まった。


 兎村の聖戦に向けて、基地建設を含めた作戦の進行、兵力と労力の分担、物資と費用の分担、輸送と貯蔵、更にそれらを誰が『指揮』するか。それら作戦の大綱は、協力的な村々のお陰で順調に決まって行った。将来の発言権確保の為に、実績を積み上げたいとの思惑があるのだろう。

 だが、他の余分な議論で時間が取られてしまった。北東の村々だ。議題のたびに、北東の村──特にフグ村──から北東の無人地帯への対応が必要と蒸し返しがあった。余りにも斜め上で、ワシはウンザリしてしまった。

 いや、怒声を上げた者も、何人かいる。この社会では、大会議を運営する経験が足りない。落ち着いて、礼儀正しくなどと、教育されていない。会議を上手く運営するに、何か手を打たねばならぬが、ワシがカッカして良い事があるとは思えない。

 どうしたものだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ