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タミサキ村〜四つ目の貝貨発行村〜

 6月30日までに、島を一巡りしたい。そのため強行軍であるが、兎村の前にヨイヒト村とタミサキ村を廻る事にした。

 来年の聖戦を考えた場合、この二つの村はギリギリ参加可能かも知れない。リュウエンさんが担当する島の縦貫構想の進捗次第だが、あと40~60㎞の距離、1年後なら打通に成功している可能性がある。


 猪村からヨイヒト村は、南東に約126㎞、ヨイヒト村からタミサキ村は東北東に約86㎞、タミサキ村から兎村は西北西に約155㎞だ。長距離ではあったが、なんとか飛び切る事が出来た。


 先に、言霊を入れたとはいっても、突然の訪問に唐突な要件だった筈だ。それでも十分な時間を割いて真剣に対応してくれたのは有難かった。

 特に、タミサキ村は、村長、戦士長、魔術士、貝貨の責任者と、最初から村の顔役を揃えて対応してくれた。まとめて話せるのは正直助かる。


 一通りの説明をして、タミサキ村の対応に謝意を告げた時、九頭(くとう)さん──年嵩の魔術士──が、返礼を述べた。


「イヤイヤ、此方こそわざわざ来て頂いて恐縮です。この1年、北の方で何か巨大な変化が起きている噂があったが、詳細も真偽もサッパリで、我ら困っていました。

 当事者であるタツヤ殿に説明頂き、大変助かりました」


「そう言って頂けると助かります。

 それと、早ければ今年中に、島の縦貫構想についての援軍要請の使者を派遣します。その時までに、ジックリと検討して頂けると助かります。

 出来るだけ広い範囲の村々で協力し合えるようにする事は、この島の未来にとって重要と信じています」


「それは、どちらかと云うと、此方から是非にでもとお願いする話です。詳しい話が出来るよう使者を早急に派遣します。

 危なげなく村々を渡れる者……ミツヤリ。行ってくれるか?」


 九頭さんが、次男のミツヤリ戦士長に話を振った。この村では、九頭さんの長男のニオさんが村長、次男のミツヤリさんが戦士長をしており、顔役は殆どが、九頭さんの家族だ。

 実は、村長のニオさんとその妻のミケさんは、魔術士でもある。そして、九頭さんの長女のミハナさんは、貝貨の責任者だ。


「父上、勿論だとも、村を動けぬ兄者の代わりに行くのは当然だ。なに、オカカワ村までは何回かいった事がある。今日の話だと、オカカワ村以降は殆ど危険が無いそうだし、何も心配する必要が無い。

 一度、周りの村の意見も聞く必要はあるが、5日以内には出発できるだろう?

 兄者どうだろうか?」


「ああ、タツヤ殿からの言霊が来て直ぐ、周りの村に使者を出したから、早い所では今日中、遅い所でも2,3日中には人が集まるだろう。何処からどう見ても良い話。全面協力する事に嫌がある村があるとは思えん。

 まあ、戦力が足りなさ過ぎるという村はあるが、取りまとめればそれなりの人数と量になる。この付近の盟主として、堂々と話が出来る筈だ。

 急いで、北部大連合殿まで行って欲しい。可能なら、熊村に集まっている村々の代表が散るまでにと思うが……無理は言わんさ」


「無駄遣いして貰っては困るが、旅費の貝貨なら十分な量がある。心配しなくて良いよ。今回ばかりは、渋ったりしないよ」


「……貝貨を山と溜め込むのが生き甲斐のミハナ姉さんが? これは、何かが起きる前触れなのか?」


 貝貨の責任者も九頭さんの長女のミハナさんだ。殆ど、家族会議に(まぎ)れている感じだなぁ〜


「はぁ〜。何度も言ったけど、貝貨を大量に保管しているのは、混乱を避ける為だ。ケチな訳じゃない。

 最近、貝貨の相場は上昇している。それが不思議だった。反動で良からぬ事が起きないかと、強く危惧していた。だが、今日のタツヤ殿の話で、その裏の事情が見えてきた。貝貨の責任者として、最優先に対応するのは当たり前の話だ。

 貝貨が上手く廻るようになれば、タミサキ村はより豊かになる」


「打通を成功させる事が先ですか、貝貨の安定の為にも協力関係の拡大が必要です。実は、連合内のタコ村とムツゴロウ村、ヒノカワ様の猪村の三村で貝貨の安定の為の会議をしています。何時か他の四村とも話し合えるようにしたい。

 そうなる為にも、使者の方が早めに来て頂けると助かります」


 そうやって、タミサキ村では非常に有意義に話は進んでいった。無論、ヨイヒト村も同様だ。


 それぞれの村から使者が北部大連合に来て、話を聞いてくれるだけでも、情報収集に力を注いでくれるだけでも、一歩前進だ。ワシらは、満足行く話を村々に提示出来る筈だし、するつもりだ。きっと、良好な協力関係を結べるだろう。


 二つの村の訪問を終え、6月18日の昼かなり前に兎村についた。着いて直ぐ、真剣な目をした猪村のセンカワ村長に引っ張られて、旅人小屋に向かった。何か密談があるようだ。


「全く、話になりません。兎村は全く当てになりません。それどころか聖戦の最大の障害になる可能性がある。猪村連合内の話なので、ヒノカワ様とよく相談して我々の責任で対応しますが、タツヤ様もある程度、覚悟して下さい」


 何か、良からぬ事があったようだ。戦力や物資の確保で済むような話であれば良いのだが……


 次は、前後編で兎村の粛清です。


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