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鉄造りの村の開発計画

タイトルは、鉄造りですが、中身はその前段階の木こりになってしまいました。

 7月3日の昼過ぎにワシはムササビ村に到着した。準備会議は、次の満月──7月11日──なので、暫くは作業が出来る。なお、アマカゼにはワシが居ない間に文字の合宿を行うことを頼んである。やる気は無いが、浮気のチャンスだw


「タツヤくん。よく来てくれた。助かるよ。村人は協力的ではあるんだが、何しろ作業が膨大で、気が遠くなっていたんだ」


 ミナミカゼさんだ。隣にトリハミさんも控えている。二人は、ムササビ村長夫婦で、ほんの数ヶ月前にトンビ村から派遣された。ミナミカゼさんはトンビ村長の息子、トリハミさんはハテソラ師匠の姉で数ヶ月前に開眼し魔術士になっている。


「食糧事情とか妖魔の脅威とかは大丈夫ですか、兎に角何でも言ってください。鉄造りは、大連合の将来にとって死活的に重要なので」


「妖魔の脅威は、周りの村が巡邏をしてくれているから問題ないけど、食料というか貝貨が減っていく速度が多少問題かも知れない。此処は、七村連合から遠いので、食料を輸送するより、貝貨で対応した方が効率的なんだが、その分減っていってしまうんだ」


「そちらの方は、後でアマカゼを呼んで、ワシの個人褒賞の付け替えを行いましょう。100枚分が10あれば、今年は乗り切れますか? それでよければ、準備会議の間に話を通しておきます。ただ……周りの村の食糧備蓄が減っていく可能性もあるので、輸送についても考えておいて下さい。

 では、ワシの魔法で穴掘りを進めましょう。小屋用の竪穴と堀とどっちが優先ですか?」


「いや、最優先は窯だ。早く、鉄造りを始めて目に見える成果を挙げれば、他の問題の解決策が増える。狭くとも寝る場所はあるんだ。妻子を呼び寄せるのは、後回しで良い」


 ワシに道具造りを教えてくれたカシイワ師匠だ。周りで何人もが頷いている。


「とりあえず20個位掘れば良いかな? その程度なら、明日には掘れると思うよ。それと、鉱脈の破砕を進めておくよ。他には何かないかな?」


「木の伐採だろうな。とはいえ、タツヤにやらせる事じゃないかも知れんな…」


「石斧に魔力を込めて試してみるよ。余り、効率が上がらないようなら、少しでも周りの討伐を進めるとか、何か考えるさw」


 フブキ文書には、念動力や振動といった力場を操る魔術があったな。次の機会までに覚えよう。ただ、魔力を込める物の強度が高くないと無意味だし、むしろ危険と書いてあったな。まあ、何れにしろ将来の課題だ。


 窯用の穴を掘り終えて、木の伐採に移ったが、案外効率的に作業が進む。村に近接していて、それなりに利用され、太い木が少ないからだろう。

 そう油断していたら、倒す方向を間違えてかかり木になってしまった。


「タツヤ様! 危険なので触らないで下さい。下手な事をすると思わぬ事が起きて怪我をします」


 伐採に付き合ってくれている二人が慌てて近寄ってきた。


「判ったよ。でも、これどう処理すれば良いんだろう」


「無理は禁物なので、下から順に処理していきましょう。ただ、枝の絡み方が酷いし、引っ掛かっている木も細いからいやな感じですね」


「そうだ。上から覗いたらどうだろう。幾つか枝をへし折れば上手く行くかも知れないよ」


「???上から???倒れた方向から見ても枝が邪魔で何も解りませんよ」


「イヤイヤ、こうやって上空から見るんだよ」


「「………」」


「二三箇所吹き飛ばせば何とかなりそうだね。破片が飛ぶと怖いので、少し距離をとって」


「……あ、はい。ただいま」


 かかっていた枝を魔力弾でへし折ったら、上手く倒れたけど、魔力が勿体無いかな。

 木を切り倒すにも色々注意が必要だなぁ。


 幹の太さが一抱えを越えるような、大きな木は後回しにしている事もあり、慣れてくると、数分で切り倒せるようになる。魔闘術による石斧の強化は結構有効だ。


「思ったより早いな。後始末も結構大変だぞ」


「周りの村に呼び掛けて、枝の処理とかは手伝って貰いましょう。ある程度をマキとして持ち帰れるなら、人手を出して貰えるでしょう」


 見に来たカシイワ師匠とミナミカゼ村長が、半ば呆れた声で相談を始めた。


「そこまで考えていなかったな……切った木の処理を優先した方が良いかな?」


「いえ、ドンドン切り倒して、分村周りの見通しを良くする事を優先して下さい。その方が、どの施設を何処に造るか、検討し易くなって全体的な効率が良くなります。特に、小川との上下関係は、堀を考えるにも、タツヤさんが言った、水車でしたっけ?を考えるにも重要だと思います」


 ムササビ村は東西に流れる小川を利用して、水堀を作っている。その上流側の軽斜面に分村を作る予定だったが、300本も倒すと、結構色々判ってくる。


「この谷間を利用すれば、人の身長位の深さがあるため池を作れるんじゃないかな?」


「堤防が必要だが、地形的にはそう見えるな。ただ、タツヤ。物事は一つ一つ段階を経て行うべきだ。先ずは、上の窪みを利用して浅いため池を作ってみよう。そもそも、そこまで多くの水を必要としていないだろう」


「そうだね、ムササビ村の本村も川に近くて、水にはあまり困っていないか。ワシは、慌て過ぎだなw」


 そして、会議の二日前までに、最初の窯が出来て木炭と耐火煉瓦の製造が始まった。木も大量に切り倒したので暫くは木材に困る事は無いだろう。

 まだまだ、テコ入れは必要だが、身体を二つに分ける訳にはいかない。鉄造りはミカミカゼさんらに任せるしかないか。上手くいって欲しい。


次は、準備会合の話で、「大連合結成に向けての最終根回し」です。

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