有力村への根回し~大連合に向けて~
大戦に参加したのは、シカ村と七村連合だけではない。遥かに多くの村々が参加している。余りにも多くて、全部は回れないが、有力村だけでも根回しをしたい。
ワシには、便利な飛行の魔術がある。ワシ自身が有力村を廻る事にした、
先ずは、カラス村の呪術士のホシカミ婆さんだ。七村から見て東側の4つの村に強い影響力を持つ大実力者だ。
七村連合最高幹部会議(仮称)の翌日の6月30日、ワシは、早速、カラス村に行った。直ぐに、ホシカミ婆さんが席を設けて、ワシの話を聞いてくれた。
「特に、異存ない話だね。七村は、もっと欲張ってくると予想していたんだが、拍子抜けしたね。うちも周りの繁殖地を掃除したいので、いの一番に手が挙げられるように、色々検討しておくよ」
「こちらは、ツバメ、カラス、スズメ、ハヤブサの4村がまとまっていると考えてよいですか」
「少し微妙だね。大連合が出来たら、別に三村連合とか四村連合とか拘らなくても良いんじゃないか? そういう意見が出始めているからね。でも、準加盟というのは良いアイデアだね。白ネズミと大リス村は、飛びつくかも知れないよ。
無理すれば、15人程度なら出せるんだけど、負担が大きくて戦々恐々としていた。戦士を割り引いて貰う代わりに、多少下に見られる事は、あの二つの村にとって許容範囲だよ」
「こちらの山犬村やムササビ村とも少し状況が違うようですね。準加盟の条件に付いては、一度そちらでアイデア出しをしてもらえませんか?」
「あと、北東方向の村の中には、打通してくれれば参加してやってよいという感じの村があるが、それらの勧誘はどうするつもりだい」
「まずは、今回の大戦に参加してくれた村々が納得のいくようにする事が先だと思います。納得して参加してくれる村は歓迎ですが、思ったほど条件が良くないので参加を見送るというケースはある程度は出てくると思う。
だから、一村でも多くと欲張らずに、ゆっくりで良いので村々の信頼関係を醸成する事を重視して下さい。
まあ、準備会議は、特に参加資格を設けていないので、『興味があるなら話だけでも聞きに来れば?』という態度で良いんじゃないかな。それとも、今からでも参加資格を作った方が良いのかな?」
「大連合への参加資格を決める会議なんだから、参加資格は不要の方が良かろうw 無理に勧誘する必要がなければ、うちらも気が楽になるよw」
ワシは、一度トンビ村に戻って、翌朝シカ村に向かった。シカ村とはリュウエンさんの処遇について、よく話し合っておく必要がある。
リュウエンさんは、火弾の魔術が使え、大鬼を一撃で倒す事が出来る。多数の戦士を動員する必要はあるが、妖魔の繁殖地を磨り潰す事が出来る魔術士だ。ワシが次の大戦に向けての作戦に集中している間に、リュウエンさんに他の方面での殲滅戦をしてもらい大連合の利を分かりやすく示せればと目論んでいる。
「今回助けて貰ったワシらは、恩返しをする立場だ。何ら異存はない。あと、作って貰った3つの基地は、暫くの間はシカ村の分村の扱いにしてくれると嬉しい。リュウエンは、今の提案について、何か言いたいことはないか」
シカ村長に話を振られたリュウエンさんが応えた。
「大歓迎だよ。僕は、無休で闘い続ける覚悟を持っている。
大連合中を駆け回って、妖魔の巣を一つ一つ踏み潰していく。そういう役目を僕は欲していたんだ。
大連合成立前でも闘う口実が無いか、実は、うずうずしているんだ」
「血気盛んな事だwww それなら、大戦の礼も兼ねて、三村連合さん当たりに早期の殲滅戦を提案してみるか、大連合の成否に係わらず、返礼という事なら、十分に理由になる。タツヤ殿はどう思われます?」
「ホシカミ婆さんは、早めに殲滅戦を要請できるよう検討を進めておくと話していました。それに、妖魔を出来るだけ多く倒す事が皆の願いだ。独自に動いてくれると有難い」
シカ村での話が早めに終わったので、ワシはその足?……翼か?……でテン村に向かった。テン村のテンヤ村長は、西側から大戦に参加した村のとりまとめをした、非常に優秀な人だ。
「概ね、此方で根回しを進めてきた条件に近いですね。違いは、打撃部隊か遊撃隊に常時1名以上を派遣するという条件です。七村連合さんやシカ村さんに甘えるのは、此方の村々にとっては忸怩たる面があります」
テンヤ村長だ。そうだな、皆独自に根回しをしているよな。
「他の村にある程度分担して貰えると嬉しいは嬉しいが、押し付けられて参加するような者が混じりるのは避けたいんだ。士気が低いものが混じると戦死者が増えかねん」
「志願者が居ない村は、少ないでしょうが、懸念は理解できます。打撃部隊の戦士の採否が、縛られる事は確かに避けた方が無難でしょう。
う~ん、では、大連合の作戦に参加する戦士の表彰制度を作るというのはどうでしょうか。七村さんのスミレ坂争奪戦は、若衆の士気を上げるのに効果があったとお聞きしています。誉を欲するのが男の本能です。そして、誉を欲するのは、実は村々も同様です。
このような制度を作っておけば、他村に甘えて大戦以外はサボる村が出る事を防げるでしょう。技量が低い者を出す場合は、それなりの部隊を作れば良いのです」
「大賛成です。大連合の村々の結びつきを深める効果もあるかも知れません。他にも色々企画した方が良いかも知れませんね。道具作りの技を競い合うとか、布の美しさを競い合うとか、いや色々応用が利きそうなアイデアですね」
「そうそう、それと文字を広める為の機会についても考えておいてください。出来れば、また合宿にお伺いしたいと娘も申しておりました」
その翌日、今後は南側の有力村である狐村にも行き、根回しを進めた。そこでは、七村連合から南東にある無人地帯の議論がメインになった。この無人地帯で来年にも大戦が始まり、狐村周りが戦場になるのではと、強く懸念されている。
『大連合が大戦に対応してくれるのなら』細かい条件は、どれほど不利でも構わない。狐村は、そんな感じだった。
そして、一度熊村で七村の村長達と意見交換を行った後、ワシはムササビ村に向かった。七村連合の大事業として、ムササビ村で鉄造りを計画している。そのために、ミナミカゼさんやカシイワ師匠はムササビ村に移住した。苦労していないだろうか。
次は、古代物の内政チートの定番の鉄造りです。
前作を読んで居ない方の為に、ここで出て来た村々の設定です。
トンビ村:主人公が住んでいる村
熊村:七村連合の最大の村、ごく近くに分村もある、トンビ村から南約13㎞
三村連合:カラス村のホシカミ婆さんが約20年前に成立させた連合、次の3村からなる
カラス村:三村連合で最も力ある村、トンビ村から北東約21㎞
スズメ村:トンビ村から東北東約16㎞
ハヤブサ村:トンビ村から北東約13㎞
ツバメ村:比較的有力な村、トンビ村から東北東約23㎞
白ネズミ村:大戦に参加した村の一つ、トンビ村から東約31㎞
大リス村:大戦に参加した村の一つ、トンビ村から東北東約30㎞
シカ村:大戦の戦場になった村、付近で最大の人口を持つ、トンビ村から西約24㎞
テン村:比較的有力な村、トンビ村から西南西約50㎞
狐村:比較的有力な村、トンビ村から南約34㎞
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