日食
翌3月16日の朝、日食が始まった。こんな場合は、慶事だと断言するのが重要だ。丁度良いネタもある。
実は、日食や月食を警戒して、新月の日中と満月の夜は、前線基地ではなく部隊に同行する事にしている。日食に気付いて直ぐに、戦士達を広場に集めた。
「この戦いを神々も慶賀している。昨年の月食と同じだ。ワシらは必ず大勝利を収める。
丁度、連合外から有力な援軍が来たその日に日食が起きた。我らの闘いに連合外からも多くの援軍が来ると、神々が教えてくれているんだ!
妖魔は皆皆々殺しだ!」
「「……「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」……」」、「「……「「妖魔は皆皆々殺しだ!」」……」」
「神々の期待に応える実力がある事を示すため、今日は武技を神々に奉納する日とする。我こそはと思う者は、どんどん武道大会に参加して欲しい」
昂った興奮を何処かで発散させてやらないと、実戦で無謀な事をする奴が出る。技量が未熟な者は、ベテランに叩きのめさせて、もっともっと修練が必要な事を自覚させねばならん。
ライゾウさんが、戸惑った顔をしているので、近寄って何か言いたいことは無いか聞いた。折角の来客だ。注目を浴びる機会を提供した方が良いだろう。
「私が?」
「ええ。無理にとは言いません。ただ、何か一言でも頂けると、今回の闘いにも、お互いの関係にもプラスになると思います」
「……判った」
そして、ライゾウさんが、広場の真ん中に移動して演説してくれた。有難い事だ。
「我らは、ハモ村連合だ。友たる北部大連合殿の闘いに参加する為に、やって来た。皆々の勢いは非常に頼もしい。だが、我らも負けてはいられない。今日の武道大会では、我らの勇猛さを披露しよう。
妖魔は、皆皆々殺しだ!」
「「……「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」……」」、「「……「「妖魔は皆皆々殺しだ!」」……」」
そうか、こんな大勢の前で、友と明言してくれるか、内心は色々ありそうだけど、大人の対応で本当に有難い。
皆、テキパキ段取って、武道大会はすぐに始まった。演舞や技比べ力比べ、そして模擬戦がある。
神々に御照覧されていると思うと誇らしいのだろう。参加者は凄く嬉しそうだ。この世界の住人は、皆信心深い。
ワシも弓の競技には参加した。公平にするため、魔術無しでだ。魔闘術まで切ると、流石に体格と経験の差が出る。まだまだ、ベテラン達には及ばない。
ライゾウさんが自慢するだけはある。ハモ村から連れてきた先鋭は、大会で結構上位に食い込んだ。ライゾウさんも満更でも無さそうだ。
今日は、武道大会後に、宴会をするつもりだ。明日、早朝に出陣なので、早めに始めて早めに寝る。その前に、ライゾウさんと話し合う必要がある。ワシは、副隊長3人とライゾウさんに話しかけた。
「ハモ村連合殿の勇者達を何処に配置すべきか、相談させて欲しい。何か、希望とかお考えとかはあるだろうか?」
ライゾウさんが何故か? 目をパチクリさせている。どうしたのだろう?
「配置? 何のことだ? 妖魔を殺すのは競争だろ? 我らは誰よりも早く駆け抜けるつもりだ。我らの勇気が見て判らんのか?」
そ、そうだった。此処の戦闘で、布陣は非常に曖昧だったな。
「無論、勇気は理解している。ただ、此方の人数が多すぎて、ハモ村殿の布陣位置によって、闘い方が微妙に異なってくるんだ。例えば、敵を正面から受け止める役、左右から包囲する役、後方から弓矢を射かける役と色々ある。
さらに、今回は、飛妖と投石や弓矢で撃ち合う役目の者も居たりする。
どれも、重要な役目だ。ハモ村連合殿に、どの役目を受け持って貰うか考えているんだ」
「……言っている事が良く判らんが、一番武勇が必要なのはどの役目だ。ワシ等の武勇を示すには、一番激しい戦いを受け持つ必要がある」
メンツもあるのかな? 有難い話だが、連携が取れないから、正面制圧を行う打撃部隊の中には入れたくないんだよな。
「経験から言って、敵の内、矢持小鬼と飛妖による損害が最も大きいと思う。この二つの制圧が一番重要だ。
ライゾウ殿が居ないと出来ない役目だが、矢持小鬼に対する火炎攻撃か飛妖への対応かどちらかを受け持ってくれると嬉しい。ワシ一人では、片方づつしか処理できない。その間に、結構な損害が出ると考えていた。それを防げれば感謝に堪えない」
「確かに、どちらも重要だな。それで、タツヤ殿はどちらを重視しているのだ?」
「今回は、弓持小鬼を先に倒す方針だ。飛妖の方が倒しにくいが、結局は一匹、放置した場合の損害は、弓持小鬼の方が大きいだろう」
「ふふふふ、では弓持小鬼を殺らせて貰おうか」
ライゾウさんが、非常に積極的で本当に助かる。
「有難う。それではお願いします。大盾も十分な数があるので、ハモ村の勇者達と伴に一番使いやすい物を選んでください」
??? また、ライゾウさんが目をパチクリさせている。何か誤解とかあるのかな?
「役目上、弓矢の集中攻撃を受ける可能性があるので、小盾ではなく大盾があった方が良いんだ。
ああ、勿論細かい配置とか段取りとかは、明日夜明け前の軍議で最終確認するので、安心して下さい」
「……大盾すら予備があるのかと少し驚いただけだ。
我らは何度も大戦を経験している。闘い方は、タツヤ殿よりは詳しい。余計な心配などする必要は無い」
ああ、そういう事か。確かに少し吃驚させたかも知れないな。
次話は、飛妖戦です。




