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ライゾウさんの訪問

 大戦の準備を進めるワシの元に、意外な人が訪ねてきた。ハモ村のライゾウさんだ。有力な魔術士で、ハモ村連合の実質的盟主でもある。


 殲滅対象のうち残っている15の繁殖地は、脅威度別に次のように分類出来る。

 名前付きボス大鬼繁殖地×1

 ボス大鬼、矢、魔術有繁殖地×3

 ボス大鬼、猿妖、魔術有繁殖地×1

 ボス大鬼、飛妖、矢持有繁殖地×1

 ボス大鬼有×3

 魔術有繁殖地×3

 矢有繁殖地×3


 このうち4つについては、今作っている前線基地を起点に攻撃する予定だ。

 他は、ムギツク村、マムシ村、ヤマメ村の三つの村を起点に潰す計画で、3月6日に作戦を再開した。


 基地の建設も順調で、初春の大攻勢を終えたシカ村からリュウセツさん達もやって来た。土操作の魔術が使えるリュウセツさんが来てくれるのは嬉しい。だが、イモハミ婆さんと同年代。無理はさせられない。その為、専用に普通の竪穴式住居も作った。ついでに、シカ村からの応援用に、7つ目の仮設小屋も作った。


 そんな中、3月15日の夕方、作戦起点であるムギツク村にハモ村のライゾウさんがやってきた。

 ハモ村からムギツク村は、西南西に約45kmもある。行き帰りで何日も村を空けて大丈夫なのだろうか?


「確かに、心配だが、北部大連合の闘いを直接観ることの方が重要だ。ドンドンと状況が変わって行く。

 先日、北部大連合から、ハモ村連合の北側への打通について援軍要請の打診があった。確かに、新年の儀で話があったようだが、『北部大連合は、夢想家が多い』ぐらいに考えていた。そこに、非常に真剣で具体的な、援軍要請の使者だ。


 北部大連合の勢いは余りにも激しすぎる。


 どのような闘いをするのか確認する必要がある。一度、戦闘に参加させて貰おう。先鋭も10人程同行させている」


 明後日は、4つ目の繁殖地の殲滅戦だ。本当なら有難い話だ。だが……


「非常に有難い申し出で、感謝の言葉も無い。だが、今回は飛妖という厄介な敵が居る。かなり苦しい戦いになると思う。その点も考慮して参加の有無を決めて欲しい」


 飛妖には、翼があり、短時間ながら空を飛ぶ。経験者によると上空から弓矢で攻撃してくる。酷い損害が出るそうだ。

 ワシには、魔闘術と風の壁さらに護衛の盾と万全の防御手段がある。だが、防御手段が十分でないライゾウさんを危険に晒して良いかは悩むところだ。


「飛妖か……何度か闘った事がある。確かに厄介な相手だが、戦に危険は付きものだ。連れて来た先鋭に怯えるような者はいない。

 流石に、盾は持ってきていないが、先鋭が10名も居れば十分対抗できる」


「盾か、盾なら量産しているから10名分位なら予備がある筈だ。簡単な物なら、明日頼んで作らせる事も出来る。ライゾウ殿と勇者達が参加してくれるなら、必要な物は出来るだけ手配しよう」


「???盾を明日作る? だと?? 一日で作れるような生易しい物ではないだろ? 何を言っているんだ?」


「ああ、ワシらが今使っている盾は、非常に簡単な物だ。ハモ村で使っている物に比べると見劣りがあるかも知れない。ハッキリ言って、矢で貫通される。威力を落とす意味しかない。

 矢を完全に止められる大盾もあるにはあるが、こっちは重すぎて動きが完全に制限される。と、言葉だけでは判らんか。ほら、あそこにいる者たちが持っている物だ。

 おーい。ハモ村の衆に盾を説明したい。悪いが、小盾と大盾を持ってきてはくれないか」


 量産して配備した小盾は、60cm程度の方形盾だ。厚さも1㎝程度しかない。矢が普通に貫通してくるし、直ぐに壊れて使い物にならなくなる。だが、それでも即死者を減らす効果はある。

 本当は、もっと頑丈な物が欲しい。だが、小盾でも重さが2㎏程度はある。これ以上、重くして良いかは、経験を積まなければ判らない。


 小盾とは別に、ワシの護衛が持つ大盾がある。ワシの体を隠せる程の大きさがあり、厚さも5㎝程度ある。十分な強度で、矢も貫通出来ない。だが、重さは20㎏以上はある。


 ある意味、どちらも単なる『板』だ。だが、これまではその『板』を作るのに酷く手間が掛かっていた。そのため、ムササビ村に鉄の楔(くさび)と手斧(ちょうな)を作って貰った。予想した通り、板を作る効率が格段に上がった。

 前線基地周りに切り倒した木は多数ある。頑丈な鉄の楔で縦方向に割いて、表面を手斧で整えて板にする。そうして造った大量の板を、盾や鎧といった防具に利用している。

 連合で闘いを重ねる毎に、防具の必要性も浸透してきた。今では、破損した分を補充する為に、戦闘の合間に熱心に防具を作っている。


 無論、鎧は木だけではない。ワシなどは狼村産の革鎧を使っている。単に木の板を括りつけた鎧よりは、動きやすいし隙間も少ない。ただ、革鎧は作るのに時間が掛かるし、値段も高い。そのため、大半の戦士は、木で作った防具を利用している。


 そんな事を考えている内に、戦士が盾の現物を持って来てくれたようだ。ライゾウさん達が熱心に調べている。


「我らが使っている物と遜色ない。

 こ、この盾の予備が本当に10も有るのか? これは、本当に気安く貸せるような物なのか?」


「問題ない。ムササビ村に頼んで、板を作るための鉄の道具を作って貰った。板を沢山作る体制は既に整っている。

 無論、手間は手間だが、共に闘ってくれる仲間なら、快く提供出来る類のものだ。若し、手直しとかが必要なら遠慮なく言って欲しい」


「……北部大連合は、信じれんような事をする。大量の鉄の武器があるとは聞いていたが、他にも幾らでも隠し玉があるようだ。今度の闘いで、余すことなく見せて貰おう。そうしないと、気付かない内に、とてつもない差を空けられそうだ」


次話は日食です。

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