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前線基地建設

 今年の大戦への対応も急務だ。事前に21の繁殖地を各個撃破しておき、完勝を確実にしたい。とは言っても厄介な繁殖地が多い。中には、名前付きボス大鬼が居る繁殖地もある。去年11月の殲滅戦で倒した奴の名前を引き継いだボス大鬼がいる。

 大戦を有利にする為でも、多数の戦死者を出したら意味が無い。各個撃破における損害を減らすため、高揚は全員に掛ける。それもあって作戦は数日に1回の予定だ。


 ワシの地域情報把握で分析して、比較的戦力が低い場所から殲滅する。21の繁殖地の内、6つは弓持ちも魔術持ちもボス大鬼も居ない繁殖地だ。当然、これらが最初の標的だ。


 作戦開始の2月1日は、まだ一年で一番寒い時期だ。作戦を行うのは寒すぎて危険だと指摘したが、戦士を出す村々に『天気の良い日を選べば何とかなる』と押し切られてしまった。


 ワシは、二つの作戦を並行して進める。一つは、無人地帯南側の戦士を集めての殲滅戦だ、寒くて、身体が硬くなり、怪我をしやすい。作戦は、3日に一回以下、天気が良い日だけの方針だ。


 もう一つは、女狐村と白ヘビ村に無人地帯北側の男手を集めて、前線基地建設作戦を進める。最初は、予定地点の伐採だ。夜明けと同時に、人手を予定地点に派遣して、ワシが魔力の限りドンドン木を切り倒す。そして、日沈前に撤収する。


 ワシは、全く休日が無い状態になるが、まあその分ワシだけ特別に良い寝床と良い飯を当てがってくれる。不平を言うべきでは無い。


 そして、この作業には、特別製の鉄の斧を投入した。

 ムササビ村で鉄の武器・鉄の道具を作ってはいるが、鉄の生産量はまだまだだ。そのため、前世のイメージとは若干異なる作りとなっている。斧で鉄になっているのは刃先だけだ。硬い木で作った斧腹に鉄の刃先を嵌め込んで、斧刃としている。

 勿論、斧刃全てを鉄とした方が頑丈なのは判っている。だが、同じ量の鉄でもう一本か二本作れると思うと……このやり方になる。


 他の武器・道具も全て同様な対応となっているなか、今回ワシが使う斧だけは前世と同様に斧刃全てが鉄だ。


 カシイワ師匠が、『タツヤの場合、斧が頑丈であれば頑丈である程、激しく効率的な筈だ』と強く主張したためだ。半年ほど前、ムツゴロウ村周りで石斧に魔力を込めて伐採している姿を師匠は見ている。あの時は、石斧を壊さないように手加減していたが、それを見抜かれていたのだろう。


 特別な斧のお陰で、幹の太さが一抱え程度の木なら、10分も掛からず切り倒せている。


 前線基地は、元々繁殖地があった場所を利用して造る。そこは、二つの谷川の合流点で、幅が数百mの平地になっている。矢の打ち合いを考えて、近くの尾根に基地を作る事も検討されたが、二つの理由で却下された。

 一つは、水を確保する事が難しい。二つ目は、近くの尾根から基地内に弓を飛ばせる鬼が居るとは考え辛いため、平地でもそれ程不利では無い。

 今日──2月17日──は、見晴らしを確保する為に、周りの木を伐採している。殲滅戦の方も順調で、昨日5つ目の繁殖地を殲滅したところだ。

 そうやって、木を切り倒していると、女狐村のクロキ村長がやって来た。クロキ村長は、息子に村を任せて、この前線基地建設の調整に専念してくれている。


「タツヤ様、お疲れ様です。凄まじい勢いで伐採を進めて貰っているお陰で、縄張り案がまとまりました。一度、此方に来てください」


「確か、川の合流点を利用して堀を作る事を考えていたよね。実現できそう?」


「合流点よりは、その上流の湾曲部を利用した方が、良さそうです。堀を深くできそうだし、周りの尾根から遠い。何より、縄張りを小さく出来て、労力が減ります」


「とすると、アッチの方か。確かに、川岸の崖の高さは合流点よりは高そうだね。水の確保は出来そう?」


「大丈夫でした。既に井戸が確保出来ました。防壁の中に水を引き込まなくても短期間なら大丈夫です」


「それなら、一緒に見て歩こう。土操作や土壁をどう使うかも重要だから」


 ほんの数十m先の候補地に移動し、縄張り案を細かく説明して貰った。川が蛇行し『く』の字になっている場所に50m四方程度の基地を作る案だ。

 ワシには特に異存は無い。このまま進めて貰おう。


「特に、問題無さそうだね。それなら、次は仮設小屋造りだね。土操作で根を処理していくから、人を集めて下さい」


 土操作がレベル3になって操作の柔軟性が上がった。木の根の大部分を露出させてしまえる。斧で根を切っていくのも手間は手間だが、掘り起こすよりは遥かにましだ。

 魔力が必要なので、対応するのは太い切り株だけだが、お陰で整地がドンドン進んでいく。天気が良ければ、明日から仮設小屋の建設に移れるだろう。


「先ず、仮設小屋を5つ整備する計画だよね」


「はい、タツヤ様。出来たところから、宿営させます。そうすれば、日の出から日の入りまで作業が出来るようになって、建設が捗るようになります。5つ作ってしまえば、当座の建設要員には十分です。

 食料の輸送とマキの搬出を兼ねて、男手を交代させて長期戦の体制を構築します。柵、堀、防壁と整備を進め、最終的には完勝出来る基地にします。

 タツヤ様には、大変な負担を掛けますが、宜しくお願いします」


「皆にも、頑張って貰わないとね。では、どんどん作業を進めよう」


 明日からの仮設小屋造りだが、改善が一つある。前に作った小屋は、壁厚が薄すぎだ。


 冷静に考えると、防壁の20㎝──これは表面の厚さで中に土が確り詰まっている──は、まだしも小屋の10㎝厚は、薄すぎた。非常に頼りない。

 その為、今回は壁厚を増やすと共に、骨材を使う事にした。鉄筋は調達できないから、代替として木筋にする。物資が少ない時代には、木筋コンクリートとか竹筋コンクリートとかあったからそれほど変じゃないだろう?

 土壁と木が馴染むか? 中で木が腐らないか心配だが、石に近く曲げ強度が低い土壁のみとするよりはマシな筈じゃ。


 骨材の木は、周りの切り倒した木から幾らでも手に入る。本来、数ヶ月の乾燥期間が必要だが、乾燥の魔術で処理することも出来る。


 そうやって、2月21日には、小屋5つの建設が終わった。無論、柵も作ってある。


次は、呪術士見習いの娘達の話です

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