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ハテソラ暦元年の北部大連合の活動方針

「今年も、闘い続きの年になるのだな」


 北部大連合の活動方針を議論し合う中で、誰ともなく(こぼ)れた言葉が印象的だった。


 突然の話で、揉めるか懸念したオカカワ村連合への対応については、すんなり決着がついた。

 本質的に、これまでの参加村と同様に対応すればよい。連合の参加予定村への打通作戦は、既に実績がある。

 特に、リュウエンさんなどは積極的で、『どんどん加盟する村を増やしてどんどん打通しよう。それが、この連合の存在意義だ』などと持論を吐いていた。

 北部連合内の話し合いの結果として、オカカワ村のホムロさんに、今後の協力だけ約しあった。その上で、北部大連合への加盟は、お互いにもっと良く知り合ってから、次の総会での決議事項にすることで話はついた。窓口については、新規加盟だがその方面で最も力がある貝貨発行村のムツゴロウ村が引き受けてくれた。


 会議で一番時間が掛かったのは、今年の作戦方針の策定だった。

 結成の時に宣言したように、3種類の作戦を実施する。

 一つは、ワシが率いる大戦対策作戦だ。

 もう一つは、リュウエンさんが率いる打通作戦だ。

 最後は、若衆を鍛える作戦だが、趣旨を変えて魔術士無しでの殲滅作戦だ。


 ワシが率いる大戦対策作戦は、2種類の作戦を並行して行う。

 一つは、妖魔王に誘引されるだろう21の繁殖地の磨り潰しだ。鉄の武器や防具の生産予定、若衆の練度向上等考えて、弱い繁殖地から順次処理する。

 この作戦には、時期により150人から350人の戦士が参加する。


 それと並行して、大戦予定地である前線基地を建設する。

 ここも、妖魔の繁殖地単位での襲撃に対抗できる戦力が必要で、最低でも100名以上の男手を動員する。



 リュウエンさんの打通作戦は、彼方此方転戦する。そのため、その場その場で150人程度の体制を組む方針だ。

 年明け最初は、熊村から南西約29㎞のフクロウ村を起点に西の新規加盟2村を打通する。ここが優先されるのは、海に近い平地で比較的暖かいからだ。

 それから、シカ村による無人地帯の大掃除に参加する。

 次は、東のサバ村付近まで行って、去年出来なかった二つの打通戦を行う。


 その後、準備状況によるため順番は未定だが次の2つの作戦を行う。

 ・西の作戦の続きとして山岳地帯の新規加盟2村の打通と猪村連合との連絡強化

 ・熊村から北東約54㎞にあるフグ村に行き、海岸沿いに南下して新規加盟2村の打通とハモ村連合との連絡強化


 もし、余力があるなら、オカカワ村連合についても作戦対象に加える。リュウエンさんも休みなしだ。


 最後に、魔術士無しでの殲滅戦を確立する為の作戦だ。まずは、テン村を起点に、繁殖地を徐々に削っていく作戦を行う。


 北部大連合に参加する村は既に67村あるが、それでも凄まじい大動員だ。村々がどれ程疲弊するか気になってしまう。

 人口数千人の連合で常時数百人の戦士を動かすことになる。前世の日本の人口比例で考えると1000万の自衛隊員が代わる代わる作戦行動をしているようなものだ。戦の匂いが社会に充満してしまうだろう。最初の言葉ももっともな話だ。


「確かに、戦続きだが、意味のある戦だ。それに、村々の事情に合わせて緩急を付ける事に嫌は無い。闘えば、闘うほど豊かに安全になれる事を考えると、嘆くような事では無いと思うが」


 そういう意見が大勢だったが、不満の兆候については意識しておく必要がある。


「因みに、若長隊はどの作戦に参加させる事になるのだろうか? いや、村長候補が最も勇猛果敢であるべきという理屈は判るが、何分私の息子はまだ経験が浅い。少し不安になってしまうんだ」


 ある村長が、そんな呟きを零した。自分の子供の事だ。心配になるのは当然だが、何処にも過保護な親は居るものだ。

 すると、若長隊を提案したテンヤ村長が考えを述べた。


「一口に、若長といっても色々あり、一まとめの部隊とするのは無理があります。そして、一番重要なのは、経験を積ませる事です。練度と実績を加味してクラス分けが必要でしょう。

 こういうのはどうでしょうか?

 先ずは、13歳を目途に安全圏の巡邏隊に参加させる。そこで、魔獣をある程度倒し実績を示したら、各部隊に参加させる。その後、中核部隊に参加できるかは本人の努力次第です。

 若長隊というのは、部隊というよりは、称号のような物でしょう。誰よりも多くの闘いを経験すべき村の若衆の長という意味です」


「それなら、私の息子は、比較的安全な、巡邏隊に参加するのか、いやいや安心した。是非、そういう制度にしよう」


 何故か? 周りから失笑が聞こえる? 確か……あの村長の一人息子は、19歳にもなって一度も連合の作戦に参加していなかったはずだな。まあ、そういう事なのだろう。それでも、参加してくれるだけマシだと考えよう。


 戦闘面以外での北部大連合の方針として、去年から引き続きの活動の強化に加え、二ヶ月に1回熊村で市を開く事が決まった。今後、市を開く準備が整った村が増えた場合は、持ち回りにする事も決まった。


 さて、会議が長引いて既に1月10日だが、作戦が再開できるまで暫くある。作戦以外の仕事を進める事にしよう。



次は、転生チート回、布作りを取り上げます。


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