表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/126

内輪の大連合対策会議

 昨年結成されたばかりの七村連合だが、イキナリ岐路に立たされている。

 今、生まれようとしている更に巨大な大連合……ワシも七村連合の幹部の一人として真剣に考えねばならない。


 昨年、スミレ坂の婿探しを切っ掛けに七村連合は成立した。今では、七つの村に従属村が二つ、しかも鉄の生産に目処をつけている。参加予定の中では最大の勢力だ。その七村連合の態度が曖昧だと、大連合自体も意味の無いものになる。


 そのため、6月29日の朝から、熊村の分村で七村連合最高幹部会議(仮称)が開かれた。ハテソラ師匠の天測では明後日が夏至だ。これから、熱い夏が始まるのだな。


 七村の村長とワシとイモハミ婆さんが揃った所で、熊村長のブナカゼさんがおもむろに切り出した。


「準備会議まで、後10日余りしかない。色々思うところがあるだろうが、忌憚ない意見を述べてくれ。大連合には参加したくないとか、七村の会議体は不要だとか、そういう根本的な意見でも良い」


 先ずは、熊村のブナカゼ村長が切り出した。


「連合に参加しない利益も、七村から抜け出す利益も無いし、第一道理が通らん。流石にそんな事を考える村はないだろ?」


 狼村のヤクモ村長だ。周りを見渡しても、皆『当たり前だろ』という顔をしている。


「では、準備会議では同一歩調を取るという方針で良いな。結構、ぶっちゃけた話もしなければならないだろうから、今後はお互いの信頼が非常に重要になる」


「同一歩調って言うが、具体的には、どんな議題を想定しているのじゃ? はっきり言ってジジには予想が付かんのだが」


 クジラ村のシオフキ村長だ。のんびりした顔で言われると、緊張するのがバカみたいに感じる。


「他にも色々あるかも知れんが、少なくとも次の議題について考えておく必要がある。

 ・連合の加盟の条件

 ・既存の諍いの処理方法

 ・加盟した村の義務

 ・山犬村とムササビ村の位置付け

 タツヤはどう考えている」


 ワシが口火を切って良いのか? まあ、発言権をくれたんだ活用しよう。


「全て、大連合をどう位置付けるかに係ってくると思う。ワシは、シカ村で戦士が欲したのは、『妖魔への復讐のための連合』なんだと思う。だから、まずは妖魔の殲滅戦と大戦を重視して提案した方が良いと思う。

 具体的には、大戦や妖魔の殲滅戦に15名程度の戦士を派遣する意思と実力を加盟条件にする。初期に加盟する村々については、連合結成時点で過去の諍いは水に流すとかはどうだろうか。

 山犬村やムササビ村は、加盟要件は満たさないが、七村の従属村として連合に協力させるという位置付けにする。

 他にも、戦士数が足りないが、協力関係は結びたいという村があったら、加盟する村の友好村とするか、準加盟みたいな関係を作るか個別に考えていくというアイデアだ」


「労力や貝貨の分担とかは、特に考えないのか? 色々物入りがありそうだが」


 タコ村のキバヤリ村長だ。連合の財政問題か……ワシには全然イメージが持てないな。


「戦の費用は、殲滅戦や大戦の勝利で直接の利益を受ける村々の負担で良いだろ? 遠い村が貝貨を持参して援軍を送るなんて、余りにも馬鹿げた話ではないか?」


 ヤクモさんだ。そういえば今回は、どのように処理したんだろうか。


「今回は、シカ村の戦いにおける食料と褒賞はシカ村負担、経路の村での滞在費は経路の村負担、避難民の滞在費も避難先の負担となっていたが、連合の規模が大きくなると、不公平感から不満が出る可能性がある。

 ついでに言うと、体力があるシカ村で戦にも圧勝したから、褒賞まで出せたんだ。普通の大戦だと、戦場になった村は壊滅状態で、逆に援助が必要な状況になる。

 費用の問題を村々の厚意に依存すると、何れ崩壊しかねんとオレは思うんだ」


 キバヤリさんだ。


「他にも、会議費の問題がある。何十もの村を集めての会議は、宿も食料も大量に必要だ。甘く見ると正月のタコ村以上の酷い状況になるだろう。今回は、3村に無理を言って、熊村の村人を疎開させて対応するが、継続するとうちの村人の不満が爆発する可能性がある」


 ブナカゼさんだ。連合の本部を熊村にする以上、こんな問題も発生するよな。


「会場の方は、次の正月までにデカいのを作る予定じゃろ? 食料は、うちの村から米を輸送する。後は、その費用を誰が分担するかじゃな」


 クマオリ村長だ。そういえば、村長宅での夕食でそんな話をしていたな。


「しかし、現実的に言って、複雑すぎて誰も処理できない。清算する手段が無い。そこは厚意を期待する以外にどうしょうも無い問題だろうて」


 ヤクモさんだ、気分的には賛同したくなるけど、それでは最悪のケースが発生しえるな。


「会議費は、各村に貝貨を持参してもらえば解決しそうだけど、大戦の費用の方は、よく考える必要がある。人数が人数だから、十分な食料が無くて、集まった戦士が飢えるという馬鹿げた事態が起こりえる。大戦の費用については、複雑だけど事前に計画を立てる必要があるよ。

 例え、基本は直近の村々の負担にするにせよ。他の村が立て替えるとかも必要になるよ。戦士が飢えたり、褒賞がなかったりしたら、次の大戦での士気に影響が出てしまうから」


「そんな、複雑な事を覚えきれる者がいる訳はなか……必ずしも覚える必要はないのか⁈」


 ヤクモさんが、勝手に自己解決してしまった。頭が固いのか回転が速いのか、この人は今一掴み辛いんだよな。


「費用分担は、延々と揉めるだろうから、共同で解決する課題と認識してもらうだけにしよう。具体的な枚数が判らねば、議論が空転するだろう。それより、費用分担以外のタツヤの提案に賛成とか反対とかはあるか?」


「「「問題なし」」」


「では、費用分担よりよほど重要な、大連合としての作戦方針についての提案なのだが……」


 こうやって、七村連合内での根回しが進んでいった。


主人公は、根回しに飛び回ります。



 なお、前作を読んで居ない方の為に、七村連合の村々の設定です。


トンビ村:主人公が住む村、大戦の戦場であったシカ村からは、東約24㎞

熊村:七村連合の最大の村、ごく近くに分村もある、トンビ村から南約13㎞

タコ村:大きな湾に面した海沿いの村、貝貨を発行している、トンビ村から北西約15㎞

クラゲ村:タコ村と同じ湾に面した村、トンビ村から北北西約21㎞

クジラ村:タコ村と同じ湾に面した村、トンビ村から西北西約20㎞

狼村:トンビ村から南南西約17㎞

山猫村:トンビ村から南南東約18㎞

山犬村:従属村、トンビ村から南南西約24㎞

ムササビ村:従属村、鉄鉱がある、トンビ村から南約33㎞


H30.5.13補足説明を後書きに移動

R04.11.12;夏至の日付を修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ