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オカカワ村からの使者

 北部大連合の新年の儀、大きな会議小屋を造った効果は高い。様々な議論が進んで行く感じがする。

 懸案だった貝貨の貸付の議論もすんなり通った。自由商人と御用商人の制度も通った。暦についても異議は出なかった。

 そして、ワシの意を汲んだ、謀議メンバーが、二つの布石を置いてくれた。


 一つは、遠方の村からの義援金──大戦で多額の費用負担が出る村への援助──の申し出だ。何れ、強制的な税に発展させる為の布石だ。

 人の世には、見栄と嫉妬がある。他の村が義援金を出しているのに、自分の村がゼロだと外聞が悪い。少なくしか出さない村への圧力も当然出てくる。

 今後、うまく世論を誘導して、『全村共通の公平な基準』を採用させれば良い。用途が限定されるだけで実質的には税だ。


 もう一つは、連合直営部隊として、新たに若長(わかおさ)隊を編成する事だ。『次期村長を目指すような者は、誰よりも勇猛果敢であるべきだ』という理屈で、村長レースに参加予定の若衆のみが参加出来る。


 建国後の安定を考えると、無能だったり危険だったりする村長は排除せざる得ない。

 そう、前世の総選挙で女性党首がつまづいた『排除』だ。どれだけ強固な反感を買うか想像も付かない。

 しかも、村長自身だけでなく可愛い子供の一生も掛かっている。それだけに、既得権益を持つ村長達の反発は、根深く根源的になるだろう。

 幾ら口先で宥めても、幾ら綺麗な言葉にしても全く不十分だろう。


 簡単に出来るような事では無い。別の方向性を模索すべきだ。

 例えば、息子が有能なら、村長を隠居させるのは比較的楽だろう。息子に継がせれば良い。

 あるいは、村々に響くダメ息子なら、排除する理由が付けやすい。


 幸いに、この社会には、有能な者を次期村長に指名すべきという良識はある。実際、兄弟間の競争もある。娘婿を次期村長にするケースも散見される。


 なら、村長の息子達を鍛える機会を増やせば良い。同時に、客観的に評価されるようにすれば良い。


 この社会の男性の評価基準は、何より闘いの上手い下手だ。鍛えるにも評価するにも実際に闘わせるのが早道だ。その為の若長隊だ。

 参加したがらない者もいるかも知れないが、その時点で村長候補としての評価は最悪だ。ワシは何も困らない。戦以外の才能がある者なら、村長以外で遇する道を考えれば良いだけだ。


 前世なら、教育機会の不平等と叩かれる所だが、そんな事は100年後に対応すれば良い。




 外交面でも順調だ。隣接する村々はこぞって使者を派遣してきた。勿論、猪村、ハモ村、マワリ川村は、複数の村の代表としてやって来た。北部大連合の会議が、遠方の村々の交流の場としても機能している。有難いことだ。


 そこに一つ予想外の一行が居た。オカカワ村だ。


 熊村から東南東に約92kmの距離にあるオカカワ村は、魔術士が二人いて、比較的力のある村だ。

 そのオカカワ村のホムロ村長──魔術士でもある──が、オカカワ村連合の代表として、1月4日にやって来た。そして、連合単位で北部大連合に参加したいと、言い出したのだ。


「突然の話で驚いている。まずは、詳しくそちらの望みを説明してくれないだろうか。

 余りに重大な話で、此方も慎重にならざる得ない。思い違いがあって、お互いに不幸になるような事は避けたい」


 議長代理でもあるブナカゼさんが咄嗟に、それだけを絞り出すように、ホムロさんに言った。


「突然の話、確かにそう見えるだろう。僕らも急激な変化に戸惑っている。

 半年前、そこにおられるタツヤ殿が挨拶に来られた時は、遠く関係ない話と思っていた。大魔術士であるタツヤ殿との誼さえ結べば良いと、そう思っていた。

 しかし、気付いたら交流があるドジョウ村やムツゴロウ村まで、北部大連合に参加するという話になっている。余りにも変化が早い。

 マワリ川村のタイラ殿やハモ村のライゾウ殿は、独自に経路確保を進め体面を維持するらしいが……僕らには無理な話だ。なら、いっそのこと北部大連合に此方から押しかけて加盟すれば良いのでは? そういう話だ。

 此処に来るまでに、何村も廻って話を聞いた。北部大連合が要求するのは、妖魔との闘いの為に戦士を出せとか物資を用意しろとか、当たり前な要求だけだと聞く。

 遠方の村の為に、援助金を出せとか、村長の息子を遠い村での戦いに出せとの要求も追加されるようだが、お互い様なら納得できる話だ。

 連合に参加すれば、今年は無理でも数年以内に打通戦の対象にして貰えるだろう。8村もの戦士が確保できるなら、北部大連合にとっても悪い話では無い筈だ。

 七村連合と同様に、連合単位での参加を認めて欲しい。条件は、他の村々と全く同じで構わない」


「……特に、嫌を言うような話では無いが、今回加盟する村も何ヶ月も話をすり合わせて決めたものだ。突然、申し出られて即決出来ないのは、ホムロ殿も理解して欲しい。暫く、北部大連合内だけで議論させて欲しい」


「唐突な話になったのは、僕も理解している。何、今回の総会で無くても良い。次回まで掛かるのは、仕方が無い。ただ、此処は余りにも遠い。何処かオカカワ村の近くに、交渉窓口となる村を指名しておいて欲しい」


「その点を含めて、北部大連合内で議論する。決して悪いようにはしないので暫く時間を頂きたい」


 流石のブナカゼさんも、時間稼ぎをするのがやっとだった。


次で、正月の会議は終了です。

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