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リュウエンさんの目標

 来年三十路になるリュウエンさんは、火弾と高揚が使える連合の重要な戦力だ。連合成立以降の貢献も大きい。休まず、村々の打通作戦を続けてくれている。

 彼とは、総会より先に直接会って相談しなければならない事がある。必要なら、これまでの計画をひっくり返すのも考慮しなければならない程、重要な事だ。


 今日は、12月11日と、新年の儀までにまだ一ヶ月程ある。冬至の3日前まで作戦を続けていた昨年に比べると、早めに作戦を切り上げた形だ。だが、暇な訳では無い。これから、連合の総会に向けた各種の根回しをする必要がある。


 今回、特にワシが重視している調整事項は、貝貨だ。

 戦士達の褒賞の基準変更に貝貨の貸与、どちらも出来るだけ多くの村に話を通す必要がある。まずは、5日後目処に戦士長等が熊村に集まって褒賞について議論する事とした。


 それまでの間に、リュウエンさんに会う必要がある。大連合が出来てから、休まず連合内の村々の打通作戦を続けているリュウエンさん。そのリュウエンさんは、褒賞の基準変更で大きく褒賞額が減る立場だからだ。


 マワリ川村を出てから、ムササビ村、熊村、トンビ村、タコ村、クラゲ村と寄り道をしながら、夕方に東のサバ村に着いた。

 実は、連合内にサバ村は二つある。区別する場合は、東西を付けるのが一般的だ。


 ワシがサバ村に着いて、直ぐリュウエンさんがやって来た。


「やあ、タツヤ君。久しぶりだね〜。そちらの作戦は順調? 大変な事が幾つか起こったそうで心配していたよ」


「ああ、幾つかあったが、何とか乗り越える事が出来た。マワリ川村への打通もでき、年内の作戦は終了した所だ。リュウエンさんの方はどうだ?」


「何人か尊い犠牲を出してしまったけど、作戦自体は順調だ。今年は、あと一つ繁殖地を潰して、作戦を終了させるよ。欲を言えば、あと二つ経路を打通したいけど、山道だから今は出来ない。春以降の宿題だね」


「勇敢に闘った勇者の霊を慰める為にも、少しでも村々を良くしていく必要があるな。来年もお互い奮闘しよう。

 それはそうと、二人で話したいことがあるのだが良いだろうか?」


「勿論だよ。離れの小屋を空けるからそこに行こう」


 小屋に着いて、ワシはリュウエンさんに要件を伝えた。


「聞いているとは、思うが、新年の総会で、褒賞の見直しを議論するつもりだ。リュウエンさんは、大きく割を食う方になる。だから、何か条件とか意見を聞きたいんだ」


「何だ、そういう話かw 何の話かと緊張して損したよ。オオカゼさんからの伝令で、改革案については聞いているし、此方の副隊長や付近の村の戦士長から、意見はオオカゼさんに伝えている。細部は、面と向かった議論が必要と思うけど、賛成だよ。

 そうだね、意見としては、変更する基準の適用条件かな?

 圧倒的な数の優位を前提にした作戦には適していると思うけど、普段の狩りや大規模襲撃に対する村単位の迎撃戦なら、今までの基準が適切だと思う。

 僕の褒賞が減る事は、どうでも良いよ。ハッキリ言って使いきれない量になっているし、現物が無くて実際には殆ど貰っていない。妻子の生活費は、シカ村が確り保障してくれている」


 大きな異論は無いだろうと予想していたが、面と向かって確認出来て安心する。


 そして、二人だけで情報交換している中で、リュウエンさんが相談事を持ち掛けた。


「タツヤ君の超遠距離攻撃の秘訣を教えて欲しい。もっともっと強くなる為には必要なんだ」


「教えても良いが、覚悟が必要だ。簡単な話では無いから」


「何でも言ってくれ。どんな厳しい修行でも構わない」


「超遠距離攻撃の為には、二つの魔術の同時操作が必要だ。リュウエンさんは、魔力操作のレベルが不足している。だから、難しい。

 習得するには、魔力の扱いに熟達したいとのみ願いながら、闘い続ける必要がある。そうすれば、何時かは可能になる筈だ。

 普通の魔術の10個分程度で、魔力操作がL2になり疲労は酷いが2つの魔術の同時発動が出来るようになる。

 さらに、20個分程度で、魔力操作がL2からL3になり、軽々と同時発動が出来るようになる」


「願えば良い。そういう風に聞こえる。特に、覚悟なんか要らないような気がするけど???」


「今の話は、魔術士の間でも秘密の話だ。リュウセツさんやタツハナさんにも、正確な所が判明するまでは秘密にして貰えないか? 漏れると、魔術士の修行への悪影響が予想されるんだ」


「勿論だよ。秘儀の話なら、お母さまやお婆様へも秘密にするよ」


「リュウエンさん。『願えば良い』正しくその通りだ。だが、リュウエンさんの立場で『願い続ける』事は難しいと予想している。

 レベル上げをしている途中で、他の魔術や技量──弓や忍び足も──習得した場合は、その分魔力操作の習得が遅れるだろう。

 魔術は一つ一つ身に着けるたびに、なにがしら戦闘を有利にする。攻撃手段が増えたり、不利な局面に応用できたりする。その事に目もくれず、魔力操作のレベル上げのみを専一に望み続ける必要がある。

 そういう、自分でも制御しずらい心の中の問題が絡んでいるんだ」


「……確かに難しそうだ。様々な誘惑があるだろう。

 教えてくれてありがとう。

 でも、なぜ秘密なの?」


「魔術の取得は、『本人の望みに依存している』

 それが、誤って伝わると、修行をサボる者が出兼ねない。この懸念が厳秘とする理由だ。

 修行中の者にも悪影響が無いように、正確な事が解るまで──永遠に解らないかも知れないが──秘密にする。それが、ワシとイモハミ婆さんの共通の決断だ」


「そして、僕はそれを知らないと、弊害があるから教えてくれるという事だね。そういうの他にもある?」


「余り無いなぁ……強いて挙げるなら、飛行の魔術の失敗は致命的なので、先に落下制御に熟達──無意識でも使えるぐらい──にしておく必要があることか。

 でも、此方は機密では無いなぁ」


 そして、しばらく二人きりで魔術談義をして過ごした。


書き溜めが無くなったので、投稿ペースをダウンします。

明日は、投稿し、その後は毎週金曜日の午後10時投稿を予定しています。

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