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殺人事件

しばらく、犯罪とその処理を扱います。

ムカつくようなロクデナシが出てきます。

 第二段作戦が終了した今日──11月1日──の祝勝会は大いに盛り上がった。若く美しい娘が何人も心を込めた舞を披露してくれ、ワシも大満足だった。


 そして、祝勝会も終わり殆どの者が寝静まった深夜、ワシは突然目が覚めた。


 この感覚は、直感だな。何が起きたんだろう? 警報には反応ないから、敵という訳では無さそうだ。兎に角、何人か起こして人手確保だ。『変事に一人で対応』それは禁忌だと強く言われておる。


 直感は、自分を中心にした警戒・監視魔法だ。感知できるのは術者自身のみで、範囲も警報よりは狭い。但し、結界を張る等の手間は不要だ。


 一方、警報は、結界を張る手間はあるが、より広範囲に効果を及ぼせる。

 また、警報に何が掛かると怪しい光が飛ぶため、術者が寝ている間も、監視が出来る。


 そして、直感もレベル3になると、熟睡中でも何かあれば目が覚める様になる。さっきのは、そういう現象だ。


 戦士を二人一組で探索に走らせ、ワシは遠視で上空から探索している。警報には、何も掛かって居ないから、敵が来たとは思えんが……一体何だろう。


 10分程もしただろうか、『大変だ‼︎』という叫び声が聞こえた。すぐに、遠視の視点を飛ばすと、暗がりの中に、人が横たわっている。死んでいるように見えるのは気のせいか?


「全員直ぐに起きろ‼︎ 村周辺の見張りを増やせ‼︎ 決して一人で行動するな‼︎ 敵に潜入された‼︎」


 ワシの命令で一気に村は騒がしくなった。


 護衛と共に、現場に到着した。若い娘が死んでいる。名前は判らないが、舞を披露した姿を思い出す。撲殺なのか? 絞殺なのか? 服が矢鱈(やたら)と痛んでいるが?


「カズナ‼︎」


 母親だろうか?40前ぐらいの女性が飛び込んできた。村長夫婦も一緒だ。


 母親が泣き叫んでいる。村長は慌ててワシに問いかけて来た。


「何が、起きたのでしょうか?」


 こういう場合は、簡潔に断言するのが肝要だ。


「警報の魔術と見張りを掻い潜って敵に潜入された。直感の魔術で気付いて対応したが、手遅れだった。


 警戒を強めているが、この暗さだ。まだ、敵を発見していない。悪いが村人を全て起こして、安全を確認して欲しい。特に、女子供が心配だ。広場に集めて、多数の戦士で守る体制を作ってくれ。

 夜が明けたら、本格的な探索を開始する。


 それと、他の村から来ている者も、村単位で行方不明が無いか確認しワシに報告してくれ」


 指示を与えられて、村全体が動き出した。夜中に妖魔が近づいて来る事は、それなりの頻度である。皆、『敵』という前提で動き回っている。


 この暗がりは危険だ。山椒村の男達が、泣き叫ぶ家族をあやしながら、被害者の死体をより目が届く場所に運んでいった。


 だが、誰も言わないが、他の可能性もある。まあ、現場保存の問題を除けば対応は同じなんだか。


 どんどん確認の報告が来ている。そして、オオカゼさんが近寄ってきて告げた。


「まだ、コオロギ村とシカ村、スナメリ村の各一人、合計三人が確認出来て居ないが、村人を含め他は健在が確認出来た」


 あれ?


「コオロギ村とシカ村の若衆をさっき広場で見たぞ? えーと。ほら、あそこで山椒村の娘に話しかけているだろ?」


「あ、あの馬鹿野郎共が!」


 オオカゼさんが怒り狂って走り出した。うーむ。緊急招集訓練は、していないからなぁ。次の作戦までにはやらねばならんな。


 更に、10分もしただろうか、スナメリ村のタカトビは、やはり行方不明のままだった。


「生きている事を信じて、危険かも知れんが、探知を行う。救援隊の準備は良いか?」


「大丈夫だ。山椒村各2名を含む5名の班を4つ編成済みだ。ほら、そこに控えている」


 敵だとすると戦闘中の可能性がある。見つけたら直ぐに応援を送らねば死んでしまう。他の可能性の場合も、タカトビの身柄を確保する必要があるのは変わらない。


「祖霊よ神々よ我に隠れ去った戦士タカトビの居所を指し示したまえ」


 闘っている様子じゃないな。


「あっちだ。川の下流の方、1000歩はあるな。もう谷の出口の半分ぐらいまで下っているな。追われているのかも知れない。急いで追いかけてくれ。敵を倒す事より、タカトビの救出の方が優先だ。大きな音を立てて、大勢が居るように見せかけてくれ。

 それと、まだ暗い。敵の数も不明だ。救援隊以外の者も気を引き締めて、奇襲などされぬよう注意してくれ」


 救援隊が走り出した。それを見送ってから、ワシは魔術に関係する話があると言って、呪術士見習いを率いるシカハミさんの所に向かった。


 現状の警戒態勢を考えると、秘儀の話といっても、隠れる訳には行かない。ワシは、シカハミさんと山椒村の呪術士ミカさんの三人で小声で話す事にした。


「シカハミさん。小声で失礼します。非常に嫌な仕事をお願いしたいのです」


「行方不明者が大怪我とかしているのかい? 酷い大怪我とかは慣れているから安心して任せてくれれば良いよ」


「スナメリ村のタカトビの方ではありません。死亡した、山椒村のカズナさんの方です。これは、殺人事件の可能性があります。死体を確認して、暴行されていないか、確認して下さい」


「そういう話なら、私が対応した方が自然だわ。死体を清める時に、この村の呪術士として調べてみるわ。口の堅い女性を何人か助手にする事も出来る」


 ミカさんだ。言われてみればそうだな。遺族にも不審を持たれることは無いな。


「お願いします。それでは、ワシは下流の白ヘビ村の虹さんに、警戒してもらうよう言霊を送ります。」


 山椒村のミカさんも白ヘビ村の虹さんも、勿論イモハミ婆さんの弟子だ。どちらも3、4年位前に開眼したばかりで、治癒術はまだ使えないが、頼もしい姉弟子だ。


 そして、夜明け直前に、引き摺られるように、スナメリ村のタカトビが戻って来た。


次は、人殺しの処遇です。

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