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石灰岩〜大きな可能性のある素材〜

 翌朝、タコ村からツバメ村に飛び立った。会議のハシゴになるがリュウエン隊の意気に応える為だ。頑張ろう。


 そう気合を入れて、会議に出たが、ヒノカワ様の猪村への打通作戦については、あっさり了解が得られた。まあ、嫌味を言うような村もあったが、ホシカミ婆さんとツバメ村のハヤグロ村長の強力な援護に蹴散らされていた。


 ツバメ村では、ついでに石灰岩を見せてもらうつもりだ。石灰岩は、多様な利用法がある。チャンスを見つけて一つ一つ開発していきたい。ツバメ村付近にある石灰岩の露頭がどのような状態で、どの程度の生産量が見込めるのか、先ずは調べたい。それと、この世界で知られている用途も確認して、上手く需要を増加させる方策を検討したい。


 石灰岩の話は、ツバメ村の村益に係わる為、多くの村が居るときにはしたくない。そのため、その日の午後は、付近の村々の代表の話を聞くことに専念した。そして、翌9月24日一杯と25日の午前中を石灰岩に使う事にした。


 炭酸カルシウムが主成分の石灰岩は、加熱すると二酸化炭素と酸化カルシウムに分解して白い粉末──生石灰──になる。さらに水を加えると水酸化カルシウム──消石灰──になる。これらは、漆喰なりの建材の材料、さらには石鹸やガラス製造、製鉄、製紙といった方面にも用途がある。


 非常に複雑な工程を必要とするが、進めば進む程、新しい可能性が広がる夢の材料だ。


 この前来た時に、頼んでおいた為、会議後直ぐ、案内してくれた。村の南西方向の丘陵を暫く歩いた所で、案内の者が立ち止まって説明してくれた。


「ここらですな。ゴツゴツした岩が多いし、まれに落とし穴がある場合がある。注意して歩いてください」


 前世で見たカルスト地形そのものだな。明るい色の岩が点々と転がっていた。結構広い範囲で木々もまばらになっていた。


「結構広いね。これなら石灰岩を幾らでも取れそうだね」


「取るだけなら、それほど難しくは無いが、案外危険だ。油断すると転んで、打撲したり擦り傷を作ったり、碌なことはない。まあ、どの岩場でも同じことだがな」


「どの位の勢いで、採取しているの?」


「石器には向かない石だからな。見向きもしない者が多い。

 だが、不思議な事に、欲しがる者は、ポツポツといる。そういう者が時々取りに来る程度で、どの程度採取しているかは、良く判らん。

 最近は、トンビ村が定期的に欲しがるようだが、何時でも言ってくれれば取って持っていく。勿論、有料だがな」


 そして、暫く、この岩場を案内してもらった。落とし穴どころか洞窟まである。もっとも、そんな場所に行く者は居ないと言われたけど。感覚的には、1㎞四方程度の広さだろうか。堀尽くすことは考えなくて良さそうだな。


 そして、幾つかの岩を破砕して、持ち帰る事にした。さて、ハヤグロ村長と交渉をするか。


「石灰岩を沢山欲しいような事を言っていたが、もう一度詳しく話してはくれないか」


「石灰岩も欲しいんだけど、それより石灰岩の加工に専念してくれる人が欲しいんだ。火傷するような、危ない作業もあるけど、上手く開発に成功すれば、欲しがる人はどんどん増えるはずなんだ。

 まず、考えているのは、この隙間の多い小屋の壁を改良する漆喰(しっくい)なんだ。石灰岩を火で熱して粉にする。これが生石灰。さらに、水に付けて変化させる。そして出来た消石灰を細かい石や繊維、さらに水に混ぜて粘土状の物にする。

 それを壁に塗り込んで放置すれば固くなるはずなので、壁がより頑丈で隙間が少ない物になるはずなんだ。


 ただ、火も使うし、消石灰を作る時にかなりの熱が出る。また、素手で触ると皮膚が痛むし、目に入れたり飲み込んだりしたら、酷い事になるかも知れない。

 多量に、川に流したりしたら、魚が死ぬかも知れない。案外、扱いが難しいはずなんだ。

 ただ、冬の寒さを和らげる手段と考えると、欲しがる人は多量に出てくると思う」


「扱いが難しいなら、既に窯の技術があるトンビ村で開発すれば良いのではないか?」


「此方は、岩だけ掘るって事だよね。一時的な話なら、それでも良いと思う。だけど、長期的には、ツバメ村の利益が低すぎて、何れ上手くいかなくなると思うんだ。

 それに、正直言うとトンビ村の人手が足りない。特産にする焼き物すら、他村からの移住者が居ないと回らなくなっている。石灰までトンビ村の特産にするのは、人材面で無理があると思うんだ」


「しかし、窯の技術を簡単に教える気は無いだろ? 此方で勝手に新作焼き物を作られたら、トンビ村は怒り狂わんか?」


「そうなんだよね。だから、一度お互いの村長も交えて、真剣に話し合う必要がある。だけど、そもそも石灰岩が十分に取れないようなら、話し合う意味も無い。だから、確認しに来たんだ。

 一度、真剣に考えて貰えないかな?」


「考えるのは良いのだか……単に有望そうな若者を二、三人選べば良いだけだからな。

 でも、タツヤ殿の方こそ、七村連合外に儲け話を持ってきて、大丈夫なのか?」


「そこは、キチンと相談しているよw 原材料が七村連合内に無い以上、それは了解して貰っている。

 最も、交渉はトンビ村長がするから、タツヤは勝手に決めるなと釘を刺されているけどね」


「そうか、とはいえ、トンビ村は稲刈りに忙しいだろうし、此方もリュウエン隊の西方作戦の準備で忙しい。

 だから、リュウエン隊の作戦が開始された後で、一度トンビ村まで話に行こう。それまでに、此方の考えを整理しておけば良いのかな?」


「そうして貰えると有難い。それなら、明日マムシ村に行く前にトンビ村によって伝言しておくよ」


 余り、拗れるとは思って居なかったが、ハヤグロさんがすんなり理解してくれて良かった。これで、ワシも南方作戦の第二段階に専念できる。結構、充実した休暇? だったな。


 内政チートネタを見つけようと、「この世界が消えた後の科学文明の作り方」(ルイス ダートネル他)を読んでみましたが、石灰岩はやたら色々な使い道があるようです。

 じっくりと色々なネタに消化して行きたいですね。


 次は、第二段作戦です。

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