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包囲環作戦

 細かく、村の位置を書いていますが、通過するだけの村が多いので気にしないで下さい。

 普通なら、唐突に明日出陣と言っても対応出来る訳は無い。そこには裏がある。


 実は、旅の間に段取りの検討が進められており、後はワシの承認のみになっていた。

 南東の無人地帯に面する村々の連合への期待は高く、こぞって連合へ参加した。そして、作戦に必要な情報の整理や物資や宿の確保、連合部隊共通のサインの確認、そういった問題に猛烈な勢いで対応したようだ。

 少し遠いが、北東の無人地帯に面する村々も同様で、人々が連合に期待する事は何なのか…… 疑問の余地が無い。



 今回は、白ヘビ村を起点に時計回りで作戦を進める予定だ。具体的には、次の18の繁殖地を叩き潰す。


 ・白ヘビ村から東北東約9kmの山椒村、繁殖地2

 ・山椒村から南東約12kmのムギツク村、繁殖地2

 ・ムギツク村から南東約10kmのコイ村、繁殖地2

 ・コイ村から南南西約8kmのゴリ村、繁殖地1

 ・ゴリ村から西南西約12kmのヤマメ村、繁殖地2

 ・ヤマメ村から南約10㎞のトンボ村、繁殖地2

 ・トンボ村から西約10㎞のコオロギ村、繁殖地2

 ・コオロギ村から西約8㎞のバッタ村、繁殖地2

 ・バッタ村から北北西約14㎞のマムシ村までの繁殖地3

 ・マムシ村から女狐村の経路を短縮する為の繁殖地1


 白ヘビ村で丸一日訓練した後で可能なら毎日繁殖地を潰す勢いで進めたい。

 状況によっては、一度中断して、女狐村から反時計回りで進める事も考えられる。


 また、ワシと共にする打撃部隊の編成についても大きな変更があった。打撃部隊だけでなく偵察隊や近隣村からの参加者を含めて、タツヤ大隊という名称が与えられ、ワシが総隊長という事になった。


 ワシを補佐する為の副隊長が三人、1人はオオカゼさん、もう一人はテン村のヤスカワさん、残り1人は近隣村からの推薦だ。いずれも、次期村長レース参加者で武技だけでなく調整力も高い逸材だ。

 更に、打撃部隊の戦士も七村連合のみの構成から、他村のメンバーへ入れ替えが始まっている。一人ずつ実績を見て入れ替えていくが、競争率は激しく高い。交代枠は、13〜15だが、直ぐに埋まりそうだ。


 そんな感じて、打通作戦は進んでいった。ただ、ワシにとっては初めていく場所が多い。更に、この辺りは山地で経路の確認は、非常に重要だ。ムギツク村からコイ村への作戦中に一度事故が起きてしまった。


 繁殖地を一つ殲滅してムギツク村に戻って、夕飯を食っていたワシの元に、オオカゼさんが慌てた様子でやって来た。


「タツヤ総隊長、悪い知らせだ。偵察隊 1班 2名が戻ってきていない。行方不明になった」


「どの班だ?」


「南側の繁殖地の警戒を担当した班だ。日没に間に合うように撤収する予定だった」


 実は、偵察隊は幾つもの役目に分かれており、目的ごとに動きが異なる。


 一つ目は、主力部隊の周辺警戒班で、部隊とは笛の音が届く範囲におり、部隊に準じた動きをする。

 二つ目は、逃走阻止/情報封鎖班で、標的の繁殖地を取り囲むように配置され、殲滅後本体に合流する。

 三つ目は、遠距離警戒班で、標的以外の繁殖地等を見張る班である。このタイプの班は本体と連絡の取り様が無いので、独自の判断で動く事になる。


 どの班でも同じだが、少人数での野営は危険なので、基本避ける方針としている。


「確か、ヤマメ村のアカタカさんと白ヘビ村のヤキオノさんだったな。迷った可能性もあるか……状況を整理したい。二人や地形に詳しい者を集めてくれ」


 そして、小屋を出て焚き火に向かうと、既に数人が集まって真剣に話あっていた。ワシもその輪に参加して、状況の整理を行なった。


「他の班と別れた状況から考えて、南側に向かったのは確実か。二人共腕利きだから、奇襲を受けて倒されたと考えるより、道に迷ったと考えた方が良さそうだな。

 若しかしたらコイ村側に辿り着いている可能性もあるが、確認出来ん。空が明らみ始めたら捜索隊を繰り出せるよう準備を始めよう」


「明日の作戦はどうするつもりだ?」


 気になるのだろう。コイ村からの参加者が──確かワラビ谷さんか──判り切った事を質問してきた。


「明日の作戦は明後日以降に延期だ。こんな事で、戦士を喪いたくない」


「見つからなければ、延々と延期するつもりか⁉︎」


 確かに、気になるだろうな。


「地形に詳しいコイ村とムギツク村の戦士を総動員すれば、捜索隊を10班以上編成できる。2人も熟達の戦士だ。迷ったなりの動きをするから、見つけ易いだろう。ワシも空から捜索する。

 だから、明日中にケリが付くだろう。それでは、マズイか?」


「タツヤ総隊長殿。此奴は、妖魔に兄が殺られている。だから、気が急いているだけだ。決して、仲間を見捨てようと言っている訳じゃない。そんなに叱らないでやってくれ」


 副隊長をしているムギツク村の戦士長が仲裁に入った。ワシ、そんなに厳しい事……言ったか?


「何度も言ったが、総隊長は、大戦への完勝を本気で目指している。妖魔を皆皆々殺しにした上で、此方の犠牲者はゼロにする。

 だから、戦死前提の意見は不満なだけだ。別に含むような事はない。基本は優しい子なので、心配無用だ」


 オオカゼさんまでワシを悪者にする。酷いよ〜


「キツク言い過ぎた。だが、目算があっての事だ。新しく身に付けた魔術に使えそうな物がある。良い機会だ。コイ村のワラビ谷さんだったな、魔術の試験に協力してくれ。

 何処か見つけ難い場所に隠れて欲しい。ワシが此処に居ながら見つけ出す」


「え? オレ? 何処に隠れれば……」


「何処でも。ただ暗くなっているので、危険が無いように村の周辺にしてくれ」


「おい。スギカワ。この村で一番、見つかり難い場所に案内しろ」


 ムギツク村の戦士長が村の者に指示を出した。いざとなれば、茶番をするつもりだろう。心配を掛けて申し訳ない。

 そして、捜索隊の段取りについて話を続けた。2重遭難は絶対に避けなければならない。探索経路の正確な設定に、案内できる者の選定、発見した場合の連絡手段、考えねばならない問題は多岐に渡る。明日、早い事を考えると、少しの時間も無駄に出来ない。


 次は、遭難者救助作戦です。

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