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マワリ川村〜旅のもう一つの目的〜

「それでは、秘儀の話が終わったと、村長らを呼びに行こう」


 そういって、アジサイさんは、席を立った。直ぐに、村長が3人の戦士を連れて戻って来て、お互いの村の様子を紹介して親睦を深めた。


 面白い事に、此処では地形を上手く利用した、魚類型魔獣の狩りが行われる。ワタリ村から南東に少し行った所に浅い海峡が存在する。川と見間違えるぐらいの浅い海峡だ。

 そこに、魚類型魔獣を誘い込んで狩る。不安定な船の上から狙うよりは、遥かに安全だ。時によっては、勢い余って魔獣が陸に打ち上げられ、そのままタコ殴りになるような場合すらある。

 そんな便利な地形があるため、海峡沿いにワタリ村を含め3つ村があり、盛んに交流しているそうだ。その中でも、ワタリ村が一番繁栄していて立場も上だ。


 海峡沿いが一番繁栄して、戦士の数が多い。そのため、島の妖魔の分布としては、東西端に弓持等の厄介な繁殖地があるようだ。


「一度、明日の午前中に偵察してみます。それと、午後から一度、戦士達と狩りをしてみたいのだが、検討してはくれないだろうか」


「その〜?? 狩りとは何ですか?」


「???妖魔を狩るに決まっていると思いますが、他により脅威になる魔獣でも居るのですか? 可能なら、近くの繁殖地を叩き潰したいが、戦士達が十分集まるかは……なければ何人か出してもらってハグレ妖魔狩りでも構いませんよ」


「それは、何と言うか……一度実力を見せて頂かないと、何とも言いようがありません」


 確かに、そうだな。


「それなら、まだ日も高いので、自己紹介がてら、ワシの技を披露しましょう。武技は、話だけでなく、魅せ合った方が親睦も深まるでしょう」


 そして、それから3日の間に、ワシは近くの二つの繁殖地の殲滅を実施した。試しに、アジサイさんにも参加してもらった。ついでに、島の端の方に居たボス大鬼を二匹ほど狩っておいた。


 ワタリ村でも、絵を描いてもらったが、妖魔の死体の山を踏みにじる恐ろしげな絵と、踊りながら女性の尻に視線を飛ばすスケベそうな絵になってしまった……傷心だが、客観的にはそういうイメージなんだろうな(T_T)


 まあでも、歌や踊りで歓待されるだけなら害は……余り出ないと良いな。


 ◇


 次は、此処から東北東約50㎞のマワリ川村だ。ヒノカワ様によるとこの村は、二つの川の合流点近くにあり、上手く川を防衛線に使えるそうだ。そのため、付近では格段に豊で人口も多く、付近の村々から盟主として敬われているそうだ。

 また、南東の無人地帯との最前線の村々に、盟主として戦士を送るような活動もしているそうだ。豊かさ、人口、戦士の技量、3拍子そろった有力村である。


「ここの魔術士は、老女のミドリさんと、まだ若い女性のヒカリさんと男性のタイラさんなんだ。婿養子? というのかな、ミドリさんが、養子にしたタイラさんと娘のヒカリさんを娶せたんだ。

 で、タイラさんは魔闘術が使えて大鬼程度なら平気で撃破する」


「それなら、独自に繁殖地の殲滅戦とかもしているのですか?」


「うーん、あんまり聞かないね。というか、そんな事を積極的にやるのは、君だけだよ」


 飛びながらそんな話をしている内に、マワリ川村に到達した。7月23日のまだかなり昼前だ。


「半信半疑だったが、タツヤ殿の魔力の大きさを見ると信じたくなる。いやいや、兎に角、大戦の勝利と北部大連合の成立を歓迎させてくれ。明日にでも、周りの村の代表を集めて歓迎の宴を開く。

 本来、使者を送って慶賀すべき所だが、遠すぎてどうにもならない。今回の宴で慶賀の使者に代えさせて欲しい」


 タイラさんだ。ワシらは到着後、シカ村の大戦や北部大連合準備会議の様子などを説明していた。特に、無人地帯の奪還に驚いた様子だった。


「確かに、遠いが……何時かは、頻繁に使者を送り合えるような関係になりたいものだ。

 話は変わるが、明日少し、南東の無人地帯の偵察飛行をしようと思うのだが、どのような妖魔が居るか何か情報はないだろうか?」


「うん? 僕に聞けば良いんじゃない? そもそも、僕が居るから偵察する必要なんか無い。此処には、妻と呼べる女は居ないから、タツヤ君を放置したりしないよ」


 ヒノカワ様だ。そうなんだが、この旅で試したい事があるんだ。


「魔術に関係することで、此処では詳しく説明できないが、この旅の間に、全ての無人地帯を見て回りたいと考えている。少し、時間を割いてくれないだろうか」


「別に、構わないけど……何を考えているか興味あるなw 魔術士以外の人は席を外して貰おうかなw」


 ヒノカワ様の呟きに、村長を含め何人かの者が急ぎ出ていった。あれ? あれれれれ?


「ヒノカワ様の地域情報把握。若しかしたら、島中で魔物を見た事が、取得する条件では無いかと。ワシの憶測だが」



「う〜ん。判らないやw

 何処かで大戦が起きていないか、島中を捜し廻っていた時期に取得したけど、何故取得出来たのか? なんて、考えた事ないw

 タツヤ君は変わった事を考えるんだね。

 まあ、試してみたら。偵察だけなら、半日程度で廻れるでしょ。ポイントは、先に僕やタイラさんがレクチャーするさ」



 そして、歓迎の宴や偵察をこなして、二日後にマワリ川村から次の目的地に向かった。


次で、この旅は終わりです。


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