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野営中の襲撃

 次は、一週間後の5月24日(金)、午後10時の投稿の予定です。

 何だと‼︎ あれは、ボス大鬼か! 急がんと犠牲者が出る!

 日の出と同時に兎村から建築現場に向かったワシは、設営班が妖魔に襲撃されている現場に出くわした。しかも、隊列も何も無い乱戦状態だ。急いで加勢しないと、設営班が壊走しかねない。

 ワシは、急ぎ風の繭を纏い、上空からの援護射撃を開始した。

 不安定な飛行中に、乱戦中の敵のみを狙撃するのは、吐き気がする程に神経を擦り減らす。だが、やり遂げねば。戦死者を出したくは無い。


              ◇


 上空からの狙撃で大鬼全てと魔術小鬼、弓持ちを倒した頃には、設営班は態勢を盛り返し、残った敵の掃討に移っていた。しかしながら、多数の重傷者が居る。ワシは、慌てて瀕死者の治療の為に地上に降りた。


「追撃する必要はない! それより、重傷者への対応を優先してくれ! それと、見えない場所で倒れている者も居るだろう。捜索してくれ!」


「兎村先行駐留隊の者は、周辺警戒を優先しろ! それ以外の者は、タツヤ様の言う通り重傷者の捜索と対応だ! 特に、瀕死の者を発見した場合は、周りにも声を掛けて人手を集めろ!」


 設営班で最も地位が高いマエユキさんが、全体に声を掛けた。次々と復唱の声が上がり、指示が徹底されていく。

 瀕死者の治癒を進めていくが、数が多いし、状態も悪い。特に、ボス大鬼に襲われた者は、目を背けたくなる有様だ。前世の医療技術でも、とても救えない者が何人も居る。ただ、朝一だったため、ワシの魔力量はそれなりにあった。何とか、魔力切れ無しで、瀕死の者の対応を終えた。だが……


「ソウマさんとアユムさんを喪ってしまった。二人とも素晴らしい戦士だったのに」


 亡くなったのは、二人とも猪村の戦士だ。ベテランの戦士で、率先して難敵に挑む姿が思い出される。


「全く、悔しい事です。もう少しうまく対応出来ればと悔やまれてなりません。まさか、妖魔が夜明けと同時に奇襲してくるなんて」


 話を聞くと、夜明け少し前に、何十匹もの妖魔が、浅い川を一気に走り抜けて攻めて来たそうだ。無論、歩哨が先に発見したが、気づいた時には、500歩程度の距離に接近されていた。夜が明け、飯を作ろうとするもの、水を汲もうとするもの、各自がてんでバラバラに動いていた時に、まとまった敵が攻めてきて、迎撃態勢を整える間も無く乱戦になったという。中には、武器を持たずに闘った者すらいたと。


「柵さえあれば、よりマシな対応が出来たかも知れんのか……

 だが、落ち込んでいても何も生まない。敵の巣の残敵掃討と、負傷者の後送をせねばならぬ。

 マエユキさん、闘える者の割り振りと、敵の拠点への偵察をお願いできないだろうか」


「敵が来た方向から考えて、巣の位置は絞られます。足の速い者なら、確認して昼前に戻ってこれるでしょう。それと、既に足の速い者を3名ほど兎村への伝令として走らせました。今日の交代要員は、キット急ぎ駆けてくる来るでしょうから。残敵掃討は、交代要員が来てから行った方が良いでしょう。

 負傷者の後送も準備しています。全く自走不可能な者は、11名だけです。それ以外の者は、支え合いながらなら歩ける。負傷者と護衛で60名の部隊を作って、直ぐに発たせます。

 雑事は、私の方で全て対応します。だから、タツヤ様は、体を休め魔力の回復を優先して下さい」


 そうだな。急変した者への対応、大鬼の撃破、ワシの魔力が足りないと支障が出る事ばかりだ。

 ワシは、落ち葉で作った寝床で、魔力回復の為の仮眠を取る事にした。


             ◇


 しばらくして、魔力回復の眠りから起き上がった。周りが騒がしい。交代が来たようだな。

 今日は、建設開始からまだ3日目の8月16日。小屋や柵どころか、整地された場所すらまだ無い。人手がまだまだ必要だ。

 しかし、今回の襲撃で出た多くの負傷者で、人手は、更に逼迫するだろう……。イカンイカン、クドクド後ろ向きに考え過ぎだ。一歩でも半歩でも、前進するしかないじゃないか。


 それから、敵の巣の焼き払い。簡易的な柵の設置と急を要する作業をしている内に、夕暮れになってしまった。


「何時また襲撃があるか判らない。だから、何があっても大丈夫な万全な体制をとろう。今日は、ワシもここで野営する」


 明らかに、それが最善手の筈だ。戦死者が出る可能性は少しでも減らさねばならぬ。


「お言葉ですが、タツヤ様。

 タツヤ様は、兎村に戻って休息を取って下さい。

 私たちにも、体面もプライドもあります。二度同じ失敗を繰り返す事はありません。もし、夜襲されても、今後は、完璧な勝利を納めてみせます。だから、タツヤ様はゆっくり休める兎村に戻って下さい」


 少し驚いたが、マエユキさんがワシの言葉に言い返した。


「その通りだ。タツヤ。替えが居ないタツヤが体を壊せば、作戦はモットモット遅れを取る。それに、兎村には多数の重傷者が居る。ハヤドリ女史だけでは、急変者が出た時に後れを取るかも知れん。

 少なくとも、今日は兎村に帰るべきだ」


 オオカゼさんも、言葉を添えた。実は、マエユキさんもオオカゼさんも、これから小屋がある程度出来るまでは、野宿し続ける予定だ。それに比べて、ワシだけ暖かい小屋で寝るなどと。

 そう思って、暫く食い下がったが、相手にはどんどん援軍が増える。あっさりに押し返されてしまい、ワシは兎村に戻る事になった。


 兎村に戻ったが、驚いた事にヒノカワ様が居て、重傷者への対応をしていた。そのため、殆ど何もする事が無く、その日は暖かい小屋で寝る事になった。ワシだけ、こんな特別扱いで良いのだろうか……


 次は、聖戦の秋、色々あっても、タツヤは(主人公なので)ドンドン成果を積み上げます。


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