表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あべこべ世界も大変です  作者: 川木
恋人編
73/149

神社1

 と言う訳で、神社にやってきた。やってきてから思ったけど、神社とお寺の違いってなんだろ? ここは神社だよね。鳥居あるし。

まぁどうでもいいけど。しかし、初詣には屋台も出てかなりにぎわっている神社だけど、夏休みと言っても平日の昼間だと、全然人がいないなぁ。


 大きな鳥居をお辞儀しながらくぐって参道をすすむ。途中で掃き掃除をしている宮司?さんがいて会釈しつつも歩き、階段を上がるとすぐに本宮が見えてきた。


「そう言えばたくちゃん、これ、手を洗うのもマナーがあるんだってね。知ってた?」

「聞いたことはあるよ。確か、左手右手で洗って、左手で口をすすいで、もっかい左手を洗って、たてて柄杓を洗うんだっけ?」

「え? ちょっとよくわかんないんだけど」

「説明難しいから、やるから見ててよ」


 やって見せてみると、かなちゃんもあーと納得してくれた。たぶん合ってたはず。えーっと一応ググってみよう。

 かなちゃんが手を清めている間にこそっと検索。ちゃおず、と。ん? あれ、でてこない。え? これ手水って書いてちゃおずじゃなかったっけ? ……あ、ちょうずだった。よかったー。実際に声にださないで。うろ覚えだから単語避けてよかったー。やり方はあってる。よかった。どや顔してから間違ってたら恥ずかしいもんね。


「さて、じゃあおまいりしよっか」

「うん。これは知ってるよ。二礼二拍手一礼でしょ」

「そんな感じだね」


 なんか二回ようしてたのは覚えてる。お参りをする。誰もいないのでゆっくりと参る。お金を出していれて、鈴をならして、お辞儀をしてから拍手をうつ。それにしても、これが正しいのだと思っても、なんとなく二回連続でお辞儀をするのって、なんとなく変な感じがする。

 人もいないので恥ずかしがる要素はゼロのはずなんだけど、慣れないことをするって言うだけで、やっぱりちょっと恥ずかしい感じだ。


 拍手をしたら、目を閉じる。えーっと、神様。何を言おう。神様か。と言うか、考えてみたら僕のこの状態って、そういう超次元的な力が働いて起こったことなのかな。考えてみたらそういう事なのかも知れないけど、考えたことなかった。どうしてこうなったかなんて、考えるより日常に慣れるのが先行して、すっかり忘れていた。

 そういう事なら、改めて挨拶しておこう。


 神様、どうして僕がこうなったのかはわからないけど、ありがとうございます。こっちの僕一人なら、きっといつまでも前に進むことはできなかっただろうし、向こうの僕もあのまま死んでしまったら、未練たらたらで死んでも死にきれないと思います。僕らは二人として一人になって、ようやく一人前になれました。

 これからも、ちゃんと、もっと一人前になれるよう頑張ります。だからこれからもそっと見守ってくれると嬉しいです。どっちの僕も、今一人になった僕も、結局大好きだったかなちゃんと一緒になりました。これからは二人で一緒に生きていきます。と。


 ……恥ずかしい! うう。これ、僕の頭の中をのぞけるサトリがいたらめっちゃ恥ずかしい。本気で神様に頭の中だけど語りかけてしまった。うーん。いや、いいんだけど。神様の実在とかは居るよりで信じたいし、否定しない。居るなら何となく心強い気がするし、是非見守ってほしいのが本音だけど、なんか恥ずかしい。


 とにかく報告も終わったので、そっとお辞儀をして、手を離す。ふと隣を見ると、とても真剣な顔のかなちゃんがいた。声には出していないけど、口元がわずかに動いている。

 うわ、めっちゃくちゃ本気で神様に語り掛けてる。半分引きつつ、でもそれだけ真面目に僕のこと込みで言ってくれてるんだろうなって思うと、ちょっと嬉しい。


「ふぅ、って、わ!」


 そしてようやく終えたかなちゃんは、お辞儀をしてから晴れやかな笑顔で目を開け、覗き込んでいる僕の存在に半身になって驚いた。そんな驚く?


「び、ビックリした」

「かなり集中してたみたいだね」

「あ、まあ。と言うか、もしかして長かった?」

「そうでもないよ、僕もさっき終わったとこだし」

「そっか。よかった。……えへへ。さ、そろそろ帰ろっか」


 照れ笑いしたかなちゃんは、さっきまで手を合わせていた真剣な顔とのギャップに、可愛いなと素直にきゅんとした。

 って、駄目駄目。普通に帰るとこだった。違う。いや確かに、神様に報告とかするのも大事っちゃ大事だけどね。でも最初の目的は2人きりになったうえでかなちゃんを焦らして、主導権を握ることだ


 ちょっと街中から離れてると言っても、普通に一歩神社から出れば人通りはある。いい雰囲気をつくるのには不適格だ。幸いこの神社は広い。まだ裏にも小さな社があったりしたはずだし、回りながら改めて、かなちゃんをその気にさせよう。


「かなちゃん、裏も回ろうよ」

「あ、そう? うん。わかった」


 本宮の裏手に続く道は、途中で青々とした大きな木がある。確か桜だったはず。春には結構にぎわっていたような。今はいないから、何よりだ。


「あ、どうも」

「! ど、どうもー」


 と思っていたらかなちゃんが左手側に挨拶してびくっとした。慌ててそっちを見ると、本宮に通じる渡り廊下の向こうの襖が開いていて、中の巫女さん?が見えてた。何とか僕も挨拶すると、巫女さんも会釈してくれて、何とか通過する。


「はぁ、びびったー」

「そんなにびっくりしなくても。悪いことしてるわけじゃないんだから」

「そうだけどさぁ」


 別に悪いことはしてないし、するつもりはないけど、最終的には何にもしないけど多少かなちゃんを誘惑するつもりなので、人影にはびびる。もちろん言えるわけないけど。


「でも、だって、かなちゃんと二人きりだと思ってたわけだし、ビックリするのもしょうがないでしょ」

「……そ、それはその、まぁ、この神社が無人ってことはないしね」


 たぶん深夜でも、とか言われた。それはそうだろうけども。そういう事じゃないんだなぁ。気持ちの問題、なんだけど。でもそういう事言うってことは、かなちゃんの中では完全に外と中で区別ついてるのかな? だとしたらこの場ではどれだけそれっぽいこと言っても、その気にはならないのかな?

 うーん。どうしよっかなぁ。それなら誘惑するだけ馬鹿みたいだし、やめとこうかな。


 と考えながらも裏手についた。ここなら、本宮の建物が背後にあるはあるけど、完全に壁だから実は人がいるってことはない。念のため頭を上げて見上げてみたけど、窓もない。よしよし。とりあえずシチュエーションはOKだ。

 裏手には三つの神様が並んでいる。右から家庭円満、交通安全、商売繁盛。と言う、もうだいたい揃っちゃてるなーって感じのラインナップだ。


 右からお参りしていく。さっきは真面目にしたけど、ここはかなちゃんの様子を伺ってみる。寄る気はなかったくせに、また真面目にお祈りし始めた。うーん、ほんとに真面目だ。そういう馬鹿真面目なとこ、ほんと好き。

 さて、でもこれで時間はできた。いったいどうやってそれとなく、僕はその気がないとしつつも誘惑できるか。


 ……言葉でとかは恥ずかしい。脳内だからいいけど、誘惑って言葉すら、実際には出すの恥ずかしいし。そう言うのはよくない。男の子としてはよくないよね。

 じゃあ行動でするしかない。……自分では、見られたら恥ずかしいとはいえ、どこが魅力があるのか全く分からないけど、男の子の胸と言うのは女の子にとって魅力的らしい。なら、あててみるか。


「かなちゃん、小銭まだある?」


 三つ目の神様を前にして、僕とは反対側のかなちゃんの肩にかけている鞄を探る振りをして、さりげなく軽く抱き着くような体勢になってみる。


「わっ、た、たくちゃん!?」

「動かないでよ。探りにくいじゃん」

「ちょ、だ、出すから! すぐ出すから!」


 かなちゃんは慌てて僕の右肩を掴んで離させて、財布を取り出して、勢いよく僕にお金を突き出すように渡してくる。


「か、かなちゃん。動揺しすぎだよ」


 千円札は多いでしょ。さっきの本宮で奮発だとか言って500円入れた癖に、テンパり過ぎ。


「ど、動揺とかしてないけど?」

「千円とか多過ぎでしょ」

「いやむしろ少ないくらいだよ!?」

「なんで!?」


 どうなってるの? 動揺しすぎでしょ。ちょっと声も高いし。あー、可愛い。前の世界で小悪魔的女子って何が目的なのかと思ってたけど、気持ちわかるー。って、今はもしや僕がそのポジションなのか!?


「と、とにかく、小銭もらってもいい?」

「う、うん」


 五円玉と交換してもらって、お参りする。うーん。効果は抜群だったみたいだけど、抜群過ぎて、そういう雰囲気通り越したかも。やり過ぎた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ